甲斐みのりのコラム「東京映画散歩」

第10回:雑司が谷

『acteur(アクチュール)』9月号の連載「東京映画散歩」。第10回目に訪れたのは、路面電車が走り、「東京暮色」(57)や「東京兄妹」(95)などの舞台にもなった、懐かしい東京の風景に出合える町、雑司が谷。夏目漱石『こころ』にも登場する「雑司が谷霊園」に数々の文豪や芸術家が眠っていることからも、歴史の重なりを伺えます。本誌では、かつて手塚治虫が暮らした「並木ハウス」、唐十郎主宰の唐組が紅テント劇場で公演をおこなった「鬼子母神堂」、「おもひでぽろぽろ」(91)に登場する店のモデル「上川口屋」、明治40年築の「雑司が谷旧宣教師館」、アニメ「時をかける少女」(06)で主人公がタイムリープする坂のモデルとなった「富士見坂」など紹介しています。本誌もぜひご覧ください。

写真1

キアズマ珈琲

ケヤキ並木の鬼子母神参道沿い、本誌でも紹介している
元手塚治虫邸「並木ハウス」の別館に入る喫茶店。
昭和初期の建物の1・2階をリノベーションし、
ご近所さんも、鬼子母神参拝客も、のどかで和める場に再生。
メニューは自家焙煎の珈琲・紅茶、ケーキに軽食も。
キアズマとは生物学用語で、
山下洋輔トリオのアルバム名に由来する。
豊島区雑司が谷3-19-5 03-3084-2045

写真2

ひぐらし文庫

新刊本、古書、貸本、雑貨など。
大型書店や出版社でも勤務経験のある女性店主の本への愛情や、
人や物への好きという気持ちがぎゅっと詰まったお店。
こぢんまりの店内は、
隅々まで本の背を見て周るのにちょうどいいサイズ。
本について知りたいこと、探しているものがあれば、
ぜひ店主に声をかけてみては。
営業日は、土・日・祝日。
豊島区雑司が谷3-3-14 03-5944-9968

写真3

清月

いなり寿司80円。太巻き60円。細巻55円。
おにぎりは120円からと、どれもがとびきりお手頃価格。
散歩の途中で求めて、近くの公園で味わっても。
数軒先にはラスクが名物の「赤丸ベーカリー」や、
せんべい工場の片隅に販売所がある「小倉屋製菓」、
昔ながらの商店やクリーニング店がなどが点在し、
辺り一帯、昭和の面影が色濃く残る。
豊島区雑司が谷1-7-3 03-3981-5749

写真4

昭和時代に山窩小説と呼ばれるジャンルの流行作家として活躍した三角寛が、
菊池寛の紹介で雑司が谷に邸宅を建てたのは昭和10年。
その築90年の趣をたたえた日本家屋で、
約20年前より、三角の一人娘がはじめた料亭が「寛」。
お部屋は個室6室で完全予約制。
昼は夜の会席コースより手頃に松花堂弁当を味わうことができる。
豊島区雑司が谷1-2-11 03-3590-2911

写真5

此花亭

「雑司が谷霊園」の周囲には、
墓参りに訪れる人のための花屋が数軒、点在している。
中でもひときわ情緒を帯び、
昔の旅館を思わせる日本家屋で営まれているのが「此花亭」。
木造2階建ての建物は、築80年を越えるらしい。
店先には井戸ポンプがあり、現役で活躍中。
店内でお参りのあと、お茶を飲んで寛ぐこともできる。
豊島区雑司が谷4-25-5

甲斐みのり

文筆家。旅や散歩、お菓子や手土産、クラシック建築にホテル、雑貨に暮らしなど、女性が好み憧れるモノやコトを主な題材に、雑誌や書籍に執筆。数校のカルチャースクールで、まち歩き講座の講師をつとめる。著書に『乙女の東京』『お菓子の旅』など。

 バックナンバー

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第18回:高円寺

第17回:築地

第16回:東京駅~丸の内

第15回:浅草

第14回:渋谷

第13回:上野駅

第12回:上野恩賜公園

第11回:人形町

第10回:雑司が谷

第9回:聖蹟桜ヶ丘

第8回:椎名町

第7回:新宿

第6回:阿佐ヶ谷

第5回:東京タワー

第4回:神楽坂

第3回:井の頭公園

第2回:谷根千

第1回:神保町

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