甲斐みのりのコラム「東京映画散歩」

第11回:人形町

『acteur(アクチュール)』11月号の連載「東京映画散歩」。第11回目に訪れたのは、成瀬巳喜男監督「流れる」、青柳信雄監督「ただいま診察中」、東野圭吾原作「麒麟の翼~劇場版・新参者~」などの舞台にもなった人形町~水天宮。江戸時代には歌舞伎小屋があり、浄瑠璃や人形芝居が行われていたことから、人形遣いが多く住み、その名がついたといわれています。また、芸妓お置屋やお茶屋が集まり、明治から昭和いかけては花街としても賑わいをみせていました。日本の女優第一号として知られる川上貞奴も、かつてこの街で芸者をしていたことがあります。長きに渡り芸が根付く街には、洋食、和食、菓子、道具、さまざまな老舗が軒を連ねています。そう距離のない範囲内に名店が点在しているので、老舗巡りが好きな方にもうってつけです。

写真1

芳味亭

向田邦子はじめ、明治座で公演をおこなう役者や、
芸妓衆も愛して通った昭和8年創業の店。
2階建ての日本式建築の中で、洋食が味わえる。
初代が修行したのは、日本の洋食の黎明期に礎を築いた
「ホテルニューグランド」。
ビーフシチュー、カニクリームコロッケ、スパゲッティなど、
こっくりと奥深く懐かしい味。ランチは「洋食弁当」を。
中央区日本橋人形町2-9-4 03-3666-5687

写真2

RON

机も椅子も照明も。昭和の時代の香りを残す昭和41年創業の喫茶店。
もとは江戸時代から続く馬具屋だったそう。
コーヒーだけでなく、ナポリタン、カレーライス、しょうが焼きなどの
軽食メニューもふんだん。
小倉餡がのった2枚重ねのホットケーキにキャラメルソースをかけて食べる
「小倉ホットケーキ」目当ての女性客も多い。
中央区日本橋人形町1-19-6 03-3664-0409

写真3

壽堂

店構えからして老舗の風格をたたえた和菓子の店「壽堂」が創業したのは
明治17年。看板商品は、本物の焼き芋と見間違う焼菓子「黄金芋」。
ふたつに割ると黄金色の餡が顔を出し、ニッキの香がプンと漂う。
一段高い座敷から注文を伺う昔ながらの座売り式というのも風情がある。
季節ごとの菓子も美しいものばかりで、人形長みやげの定番。
中央区日本橋人形町2-1-4 03-3666-4804

写真4

凡味

ただならぬ雰囲気の木造建築は、もとは呉服屋だったそう。
今、入口にかかる白い暖簾の向こうは、懐石料理の店。
昭和55年から続いているという。
料理のコースは要予約だけれど、江戸の味を再現した看板料理で、
なめらかな口当たりの「胡麻豆腐」と、
南高梅を甘塩っぱく煮た「太郎梅」は、
お茶とともに喫茶メニューとして味わえる。
中央区日本橋人形町2-32-3 03-3669-4671

写真5

サンドウィッチパーラー まつむら

食パン、サンドイッチ、おかずパン、菓子パン、惣菜が、
ぎっしり並ぶ昔ながらの店の中。
コーヒーとともに、その場でできたてのパンを味わえるイートインコーナーが。
「ちくわドック」や、食パンに小倉餡とピーナツバターをはさんだ
「なかよしパン」など、個性的なパンもあるけれど、
そのどれもがまた食べたくなる親しみの持てる味。
中央区日本橋人形町1-14-4 03-3666-3424

甲斐みのり

文筆家。旅や散歩、お菓子や手土産、クラシック建築にホテル、雑貨に暮らしなど、女性が好み憧れるモノやコトを主な題材に、雑誌や書籍に執筆。数校のカルチャースクールで、まち歩き講座の講師をつとめる。著書に『乙女の東京』『お菓子の旅』など。

 バックナンバー

第19回:向島界隈

第18回:高円寺

第17回:築地

第16回:東京駅~丸の内

第15回:浅草

第14回:渋谷

第13回:上野駅

第12回:上野恩賜公園

第11回:人形町

第10回:雑司が谷

第9回:聖蹟桜ヶ丘

第8回:椎名町

第7回:新宿

第6回:阿佐ヶ谷

第5回:東京タワー

第4回:神楽坂

第3回:井の頭公園

第2回:谷根千

第1回:神保町

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