氷室蓮司の映画専門家レビュー一覧

氷室蓮司

極道界の頂点を目指す男たちを描くVシネマ『日本統一』シリーズ10周年を記念し制作、主人公の一人・氷室蓮司の父親としての側面に焦点を当てた劇場版。椅子に縛り付けられた息子・悠太の写真が送られてきた氷室は、石沢の制止を振り切り一人台湾へ飛び立つ。監督は、『首領の道』などの任侠系Vシネマ作品や「修羅の群れ」などの映画を手がけ、『日本統一』シリーズは27作目以降を担当している辻裕之。主人公である任侠団体・侠和会の氷室蓮司を演じる本宮泰風は、本作でも総合プロデュースを務めている。台湾で本シリーズ初の海外ロケをしており、「野球部に花束を」の黒羽麻璃央が台湾で氷室をフォローする篠原将人を、「幽幻道士」シリーズのヒロイン・テンテン役で知られるシャドウ・リュウが台湾の刑事・楊愛玲を演じる。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    破格の長期シリーズOV「日本統一」のスピンオフ。台湾ロケを敢行し、誘拐と爆弾テロと復讐劇をミックスした欲張りなドラマが展開するが、節約第一のOVテイストは健在。チープでけっこう、でも悪ふざけはしないという独特の美学は、作り手と常連客の信頼関係ありきのものなので、一見客には敷居の高い世界ではある。大陸におもねる経済ヤクザが登場したり、ひまわり学生運動がキーポイントになったり、独立系ならではの踏み込み方が面白い。80年代末の韓国にもこんな映画あった気が。

  • 映画評論家

    北川れい子

    かつて一般向けの日本映画に背を向けるようにして、任?に生きる男たちやヤクザ世界の抗争などを描き、一部ファンに熱く支持されたVシネマ。当時とは世間も状況も激変したが、本作がその路線で踏ん張っていることに少なからず感心する。しかも今回はドラマ化もされている「日本統一」シリーズ10周年記念作品で舞台は台湾、チラッと台湾の歴史に触れたりも。日本統一を目指す侠和会のナンバー2、氷室の捨て身の父性愛で、話はいささか乱暴だが、それもVシネらしい。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    ひたすら本宮泰風を愛でてしまう。低温ながら俊敏な動きが際立ち、スター映画の残り香を漂わせる。「日本統一」シリーズが未見でも問題ない作りになっており、台湾を舞台に父子の物語へと拡張させても大味になることなく、ウエットにもならない。爆弾魔の話でありながら合成丸出しの爆発ばかりなのは不満だが、小気味良いアクションを積み重ねて終盤へなだれ込む手堅い演出は好調。東映系のシネコンチェーンで公開されるので、往年のプログラムピクチャーの味わいを愉しむのも一興。

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