プリシラ(2023)の映画専門家レビュー一覧

プリシラ(2023)

ソフィア・コッポラが、エルヴィス・プレスリーの元妻プリシラ・プレスリーの回想録を映画化。世界のスーパースター、エルヴィス・プレスリーと夢のような恋に落ちた14歳のプリシラは、両親の反対を押し切り、大邸宅でエルヴィスと暮らし始めるが……。主演のケイリー・スピーニー(「パシフィック・リム:アップライジング」)は、本作でヴェネチア国際映画祭女優賞を受賞。共演は「Saltburn」のジェイコブ・エロルディ。
  • 俳優

    小川あん

    エルヴィス・プレスリーと初妻プリシラの出会い・結婚・離別までを描く。時系列どおりのノーマルな物語構成。特筆すべきシーンはないのだが、S・コッポラの得意なガールズ・ムービーとしての画作りは深まっている。プリシラの少女性と同時にエルヴィスの少年性が見えたのは新たな発見だった。二人の恋路を眺めていると、エルヴィスに恋をしたような気持ちにさせてくれる。ただ、個人的にバズ・ラーマン監督作「エルヴィス」が前に出てしまったので、本作の印象が少し薄くなってしまった。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    少女プリシラが飛びこむ状況の異様さは傍から見れば一目瞭然。最初は夢見心地でも、王子様だったエルヴィスはやがて精神的な不安定さゆえに支配欲をむき出しに。女性の自立や尊厳がまだほとんど問題にすらされていなかった時代、彼女はファーストショットで示されたように、自分の足でしっかりと歩けるようになるのだろうか?という話に着地するはずだと思うのだが、最終的にふわっとしてしまうのは、まあソフィアのよさでもあるのだろう。プレスリーの曲がほぼ流れないのも興味深い。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    エルヴィス・プレスリーの元妻プリシラのエルヴィスとの日々を彼女の回顧録をもとにソフィア・コッポラが映画化。保守的な家庭で育った少女プリシラが偶然エルヴィスと出会い、求愛を受けて結婚しスーパースターの華美な館で「籠の中の鳥」のような日々を送る。映画はプリシラの視点で作られ、彼女の「物質的に満たされた空虚さ」を執拗なディテール描写で描く。ソフィア十八番の「お姫様の憂鬱」話だが、もうソフィアの憂鬱ゴッコにうんざり。この空虚さから脱しないと映画作家としてヤバいのでは。

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