【ファッショニスタ必見!】有名テーラーが語る『キングスマン』にみる、英国ファッションの美学

2018年1月4日



隅々まで追求された英国紳士らしさ
スマートなスーツに身を包んだ英国紳士たちがみせる華麗なアクションが魅力の「キングスマン」。シリーズ第2作の「ゴールデン・サークル」ではアメリカ側のスパイ組織も加わり、両者のお里丸出しのファッション対決も見ものだ。そこで、有名セレクトショップの名物セールスパーソンにして大の映画マニアでもある森山真司に、本作の衣裳プロダクトのこだわりについてうかがった。

――「スター・ウォーズ」を筆頭にSF映画ファンのイメージが強い森山さんですが、「キングスマン」シリーズもお好きでしょうか?

森山 初めてマシュー・ヴォーン監督の作品を観たのは「キック・アス」(10)なんですけど、独特のヴィジュアルとアクションのセンスに強く惹かれましたね。一本目の「キングスマン」(14)は、日本公開前にSNSで予告篇を見て驚いた記憶があります。英国紳士の格好でキメたコリン・ファースが、パブの扉に鍵を掛けて“Manners maketh man.(マナーが人をつくる)”と言い放って絡んできた連中を倒していく映像を見て、「なんだ、これは?」と。高級テーラーを表の顔にしたスパイ組織という設定も、洋服屋としてすごく面白かったですね。

―― 英国紳士の服装に関するディティールについては?

森山 ネクタイの結び方ひとつを取っても、こだわりを感じました。ウインザーノットという結び方がありますよね。イギリス特有のワイドカラーに対して、その面積を埋めるように結び目をおにぎりくらいにでっかくする。これがイギリスの伝統的な結び方として世界的に誤って認識されてますけど、ウインザー公はそんな結び目にしてネクタイを締めていないんです。ほとんどシングルノットです。映画ではちゃんとシングルノットになっていて、さすがだと思いましたね。それだけでなく、靴はストレートチップ。オックスフォードとも呼ばれる内羽根式で、モーニングに合わせて履くこともできるフォーマルな靴です。ブローグとも呼ばれる外羽根式のウィングチップは、狩猟用のカントリー・シューズが起源なので、カントリーに対してのシティ=街中ではまず履かれないんです。そこもちゃんと押さえていますね。


―― そうなってくると、小物も抜かりがなさそうですね。

森山 眼鏡に関しては、スパイ映画「国際諜報局」(64)で主人公ハリー・パーマーに扮したマイケル・ケインが掛けていたものを意識していますよね。実際、前作に彼が出ていたり、コリン・ファースの役名がハリーだったりするので間違いない。ただ、『ハリー・パーマー』シリーズで使われていた眼鏡はオリバー・ゴールドスミスのものだったのですが、キングスマンの面々が掛けているのはカトラー アンド グロスのものなんですね。でも、そこも80年代に英国王室御用達の証明であるロイヤル・ワラントをもらっている立派なブランドです。僕らも店で何度か紹介させてもらったこともありますし、私自身も着用したことがあります。紋章の入ったリングも、貴族が蠟封する際に紋章の刻印入れるのに使っていたシグネット・リングが起源なんです。

―― 実際にイギリスでは、ああした格好の人は多いのでしょうか。

森山 サヴィル・ロウの仕立て屋さんや、上流階級の人たちはしているかも知れませんが、ほとんどのイギリス人はもっと合理的な格好をしています。笑い話に「イギリスの紳士は傘を持っていても差さない」というのがありますけど、ちょっとした雨くらい濡れてもいいような服装なので、今は傘自体を持たない(笑)。昔は傘を細く巻く専門の職人さんがいて、彼らに巻いてもらったものをステッキのように持ち歩くのが一流だったらしいですけど。そう考えると、キングスマンが傘を物騒な武器にしているのは皮肉が利いてますよね。

映画でファッションを学ぶなら


――「キングスマン」でファッションを学ぶとしたら、どういった部分をチェックすべきでしょうか?

森山 何よりサイジングです。特にパンツの丈や袖口からカフスをどれくらい出しているかを見てほしい。これはスーツだけでなく、すべての洋服に言えますね。ジーンズひとつ取っても、ウェスタンブーツがキレイに収まるように、しっかり計算した丈になっているんです。なにを着るかではなく、どう着るかにこだわっているので、そこをぜひとも観ていただきたいかなと。


森山真司(もりやま・しんじ)/ファッションの街、原宿キャットストリートにある「District UNITED ARROWS」の名物セールスパーソン。ショッププレスとホームページ管理も兼任。ブログ『蛍雪ジェダイ』(http://moriyama.blog.houyhnhnm.jp/)では服飾アイテムの紹介とともに、「スター・ウォーズ」関連グッズに耽溺する姿が日々綴られている


キングスマン ゴールデン・サークル
Kingsman: The Golden Circle
2017年・イギリス・2時間20分 監督:マシュー・ヴォーン 原作:マーク・ミラー、デイヴ・ギボンズ 脚本:ジェーン・ゴールドマン、マシュー・ヴォーン 出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、タロン・エガートン、マーク・ストロング、ハリー・ベリー、エルトン・ジョン、チャニング・テイタム、ジェフ・ブリッジス、ソフィー・クックソン、ペドロ・パスカル、エドワード・ホルクロフト 配給:20世紀フォックス映画 ◎2018年1月5日より全国にて ©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation


取材・文=平田裕介
製作: キネマ旬報社


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