【アカデミー賞有力】“3枚の看板があぶり出す、皮肉と狂気”映画「スリー・ビルボード」の監督に迫る!

2018年1月23日


©2017 Twentieth Century Fox

アメリカ・ミズーリ州のとある田舎の町外れ、道路沿いに突如現れた3枚の巨大な広告(ビルボード)。それは、最愛の娘をレイプされ殺された母親の、町の警察署長に対する怒りの叫びだった。やがて次々と不穏な事件が巻き起こり、母親、警察署長、その部下の巡査という3人の主要人物をめぐる物語は、想像を絶する結末へと突き進んでいく……。

新年早々に発表されたゴールデン・グローブ賞で最多4部門を受賞するなど、早くも今年最大の話題作になりそうな映画「スリー・ビルボード」。その深遠を、英国演劇界の俊英にして昨今映画界でも注目を集めているマーティン・マクドナー監督へインタビュー。

アイルランド系のイギリス人、マーティン・マクドナー監督。ロンドン生まれのロンドン育ちだが、アイルランド人を両親に持ち、幼い頃からアイルランドで多くの時間を過ごした。そのせいだろうか、英国の映劇界で注目され、やがて映画界に進出してからも、彼の作品の根底には常にアイルランド人としてのアイデンティティーがあるように思う。その社会風刺とユーモアのセンスが、非常に絶妙かつ独創的なのだ。

そんな彼の才能がさらに光る最新作「スリー・ビルボード」の物語は、彼がアメリカを旅していたときに遭遇した、ある出来事に触発されて生まれたという。

マーティン・マクドナー(以下、マクドナー) 「20年ほど前、アメリカ南部の州をバスで移動しているときのことだった。窓の外を見ていたら、すごく離れた野原に2つ広告(ビ ルボード)看板が建っていた。 それを読んで“今のは現実だったのか?”って思ったんだ。それは、怒りに燃えた人が発した強烈なメッセージだった。看板を建てた人の痛みや怒りについて忘れることができなかった。それが妙に心に引っかかって、僕の中で次第に大きくなっていったんだ」

怒りに燃える母親の物語

©2017 Twentieth Century Fox

そして、実際の執筆に際しては、ジョエル・コーエン監督の夫人であり、「ファーゴ」(96)のマージ役で強烈な印象を残した女優フランシス・マクドーマンドを、早くから主人公のミルドレッド役に想定していたという。

マクドナー 「脚本を書きながら、彼女の声や顔、スクリーンにおける態度や姿勢を常に念頭においていたんだ。もし彼女にこの脚本を気に入ってもらえなかったらどうしていたかは、まったく分からないよ」

そう振り返りながら、脚本の成りたちについてさらに語ってくれた。

マクドナー 「何より強い女性を主人公にした映画がつくりたかった。だからミルドレッドを母であり、怒りに燃える女性に設定した。最初からはっきりと彼女の人物像が見えていたから、映画の筋書きをあれこれ思案する必要は全くなかったよ。彼女をキャラクターへと具体化させ、架空の町に送り込むだけでよかったんだ。その町の人々は彼女の強さに驚き、挑発される。それに対し彼女も挑発され、物語が展開していく。物語のひねりや驚きは、ミルドレッドの行動によって自然に生じてきたものなんだ」

ミルドレッドが怒りの矛先を向ける警察署長役のウディ・ハレルソンや、ディクソン巡査を演じるサム・ロックウェルも絶妙だ。

マクドナー 「実はサムの役も彼を当てて書いた。『セブン・サイコパス』(12)のときと同じようにね。彼はあの世代で最も優れた俳優の一人だし、僕と年齢が近いから、彼が最終的に役を演じるかどうかは別にしても、身体や声を思い描くことで、人物づくりの助けになるんだ」


「スリー・ビルボード」(原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)
2017年・イギリス=アメリカ・1時間56分 監督・脚本・製作:マーティン・マクドナー 撮影:ベン・デイビス 音楽:カーター・バーウェル 出演:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ、ルーカス・ヘッジズ 配給:20世紀フォックス映画 ◎2月1日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて
©2017 Twentieth Century Fox


取材・文:高野裕子/製作: キネマ旬報社

記事全文は、こちらから↓


http://www.kinejun.com/book/detail/tabid/89/Default.aspx?pdid=kinema_No.1770