クリント・イーストウッド“無差別テロ”の実話を監督した最新作インタビュー

2018年2月22日

『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』とリアルヒーローの物語を描いてきたクリント・イーストウッド。その監督最新作は、またもや〈実話〉の映画化となった。だが、ただの映画化ではない。

2015年の夏、アムステルダム中央駅、15時17分発パリ行きの高速列車内で起きた、500人を超える乗客をターゲットにした無差別テロ襲撃事件。恐怖と緊張の中、武装した犯人を取り押さえたのは、ヨーロッパをたまたま旅行していた3人のアメリカ人の若者だった。なぜ彼らはあの瞬間、あの場所にいて、そして命を捨てる覚悟で立ち向かえたのか?

映画は、彼ら3人の過去をふり返り、事件の瞬間に至る道程を描いていくが、注目すべきはその3人を事件の当事者、つまり本人が演じているということ。そればかりか、列車の乗客や負傷者までも実際の人々が演じ、事件が起こった場所で撮影に挑むという、驚くべき作品なのだ。

87歳を越えてなお新たな挑戦を続ける男、イーストウッドが見つめる英雄(ヒーロー)のリアリティ。その最新形がここにある――。

 

(C) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC

 

「この映画はごく普通の人々に捧げられた物語だ」と語るイーストウッド。しかし、だからといって、実際の出来事を、それに関わった一般人に演じさせる必要はないはずだ。この一見無謀とも思える野心的な試みはいかにして生まれたのか。我々の疑問に対し、ハリウッドでも最長老クラスである老監督は悠々と、そうすることが当然であるかのように語ってみせる。「だって、その方が面白そうじゃないか?」

 

“ここに映画がある”という確信

 

(C) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC

 

―「15時17分、パリ行き」は、これまでのあなたの中でもっとも実験的な作品かもしれません。本作を作ることになった経緯を教えてください。

クリント・イーストウッド(以下CE):多くの人と同じように、私も2015年の夏に起こったその出来事をニュースで知りました。カリフォルニア州サクラメント出身のごく普通の3人の若者が、ヨーロッパを高速列車で移動中に重武装したひとりのテロリストと鉢合わせする。そして、死を覚悟しながらも、大勢の乗客を救うため、自分たちがなすべきことをした。そのテロリストは自動小銃AK-47とドイツ製のルガーピストル、カッターナイフ、そして270発の弾薬を所持していました。大惨事を未然に防げたのは、多くの“偶然”が重なった結果に過ぎません。

その後、私は“偶然”にも彼らと会う機会があり(イーストウッドは、米TV主催のイベントでその3人――アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーンに“英雄賞”を贈る役目を務めた)、彼らが自らに起きたことを本に書いていると知りました。私は「出版されたら読ませてほしい。何が起こるかわからないからね」とだけ伝えました。

 

 

(C) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC

 

―実際に読まれた感想は?

CE:題材とストーリーの面白さがとても気に入りました。“ここに映画がある”と思いました。

―作られたセットではなく、実際の狭い高速列車の中で撮影されたシークエンスは、理屈抜きの生々しさがあります。

CE:それこそが狙いでした。映画は見せかけです。でも、この映画には嘘が少なく、それが観客をこれまでにない感動に導くと思います。本物のリアリティを求めて、照明も自然以外のものは使っていないのです。

15時17分、パリ行き(原題:THE 15:17 TO PARIS)
2018年・アメリカ・1時間34分 監督・製作:クリント・イーストウッド 脚本:ドロシー・ブリスカル 撮影:トム・スターン 衣装:デボラ・ホッパー 編集:ブルー・マーレイ 美術:ケヴィン・イシオカ 出演:アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーン 配給:ワーナー・ブラザース映画 ◎3月1日より、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国にて (C) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC

構成:編集部/制作:キネマ旬報社

 

インタビュー後半では、実際の人物に演じさせるに至った経緯や今のアメリカに必要なヒーロー像にも迫ります。記事全文は、こちらから↓