巨匠・スピルバーグが米国の“今”を撃つ! 最新作インタビュー

2018年3月26日


(C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

現代映画界における最高のヒットメーカー、スティーヴン・スピルバーグが放つ最新作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、実話に基づくジャーナリストの英雄たちの物語。

キャリアを通じて、戦争を背景にアメリカの歴史的変貌の瞬間を描くことに情熱を注ぎ続けてきたスピルバーグ。彼が今回レンズを向けたのは、自身が映画製作者としての名声を確立した1970年代、そしてベトナム戦争の時代だ。国家が危機的状況に瀕したとき、ニュースの現場でなにが起こったのか? そしてその真実の物語は現代のわれわれにどんなメッセージを投げかけるのか? 衰え知らずの“ハリウッドの王”にインタビューを行った。

この物語に心をつかまれた

――他の映画を撮っている最中に本作の製作を決めたそうですが、あなたの情熱に火をつけるような何かがこの物語にあったのでしょうか?

スティーヴン・スピルバーグ(以下、SS) 脚本を読んで受けた印象は、リーダーシップの物語だということだった。リーダーはどう生まれるか? 決断を下すことに二の足を踏む人物を前向きにさせるひらめきは、どういうものなのか? この物語にそんな“変化”を感じ、私は心をつかまれた。もう一つの魅力は、キャサリン・グラハムとベン・ブラッドリーの関係だ。彼は彼女の部下なのに、しばしば彼女の上司のような態度を見せる。メリルとトムがその関係性を見事に表現してくれたよ。

――これまでにトムと一緒にいくつかの映画を作ってきましたが、ベン役がトムにピッタリだと感じた理由は?

SS トムは何でもできるし、どんな役も演じられるんだ。『フォレスト・ガンプ』の役は、当初は意外だと思われたが見事だった。コメディに多く出演していたので『プライベート・ライアン』も難しいだろうと思われたが、完全に部隊を率いるリーダーになりきった。それに偶然だけど、私もトムもベン本人と知り合いだったんだ。

短時間だからこそ生み出せたエネルギー


(C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

――メリル・ストリープも、“なりきれる女優”として知られています。あなたの監督作品に彼女が出演するのは初めてですね。

SS ああ。『A.I.』(2001年)で声優を務めてもらったが、あれはカウントしないよ。たった30分で20ほどセリフを言ってもらっただけだから、本作が初めての出演だ。すごく楽しかったよ。彼女とはずっと前から一緒に仕事をしたかった。『ディア・ハンター』も見ていたし、その前に出演したテレビ作品「ホロコースト/戦争と家族」で演技を初めて見て、とても感動したんだ。彼女は間違いなく、最も優れたアメリカ人女優だよ。

――本作は撮影期間が非常に短かったそうですね。製作をスピーディに進めた理由は何ですか?

SS この物語には現代との共通点がとても多い。映画で描いた1971年当時と今のマスコミの状況は同じだ。マスコミは同様に圧力を受けている。2017年の“17”を逆にすると“71”だ。両者は数字的にいとこのような存在だよ。歴史の振り子が、現代に戻ってきた感じがする。歴史は繰り返すものだが、状況としては今のほうが悪いと思うね。だからすぐに作って公開したかったのさ。それに、こうも思った。全員が全力を出して集中すれば、短時間でも作れるはずだとね。出演者も監督も編集も作曲も美術監督も、全員が絶好調だったよ。短時間だからこそ、撮影と物語に力強いエネルギーを生み出すことができた。最初から最後まで、ムダな部分がない作品だよ。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』 2017年・アメリカ・1時間56分 監督:スティーヴン・スピルバーグ 脚本リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー 撮影:ヤヌス・カミンスキー 美術:リック・カーター 編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー 音楽:ジョン・ウィリアムズ 出演:メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、ボブ・オデンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィットフォード、ブルース・グリーンウッド、マシュー・リス、アリソン・ブリー 配給:東宝東和 ◎3月30日(金)より、TOHOシネマズ 新宿ほか全国にて (C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

構成=編集部/制作:キネマ旬報

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