東出昌大が一人二役演じる!カンヌ出品『寝ても覚めても』現場ルポ

2018年6月4日


(C)2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会 / COMME DES CINÉMAS

東出昌大が一人二役演じる!カンヌ出品『寝ても覚めても』現場ルポ

「東出昌大さんが受けてくれたから、この映画ができると思えたんです」。濱口竜介監督は、そう言い切った。

2017年7月30日。穏やかな日差しの朝。渋谷の美容製品メーカーの会議室が、亮平の勤務する酒造メーカー「紅錦」に飾り付けされている。そこへ濱口監督と亮平役の東出昌大が一緒に入って来た。清潔なスーツに身を包んだ長身の東出。立ち姿が美しい。一方、監督は片脚を引きずっているように見える。二人は前日、撮影の合間にサッカーボールを蹴り合った。そこで監督は肉離れを起こしたのだという。二人の親密さが微笑ましい。

柴崎友香の小説を原作とする映画『寝ても覚めても』。5月に開催された第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されたことでも話題となった本作は、麦(ばく)と亮平、そっくりな顔を持ちながら別々の性格で行動する二人の男(東出昌大二役)と、二人に惹かれる女、朝子(唐田えりか)を描き出す。


(C)2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会 / COMME DES CINÉMAS

濱口監督は15年、『ハッピーアワー』で「即興演技ワークショップ in Kobe」に集まった演技経験のない人びとを、“リアリティ溢れる魅力的な人物たち”としてスクリーンの中に存在させた。カメラとマイクという容赦のない装置の前で演者たちをドラマの登場人物として立たせるための、映画と演技を根底的に考え直しながらの試行錯誤は『カメラの前で演じること』(濱口竜介、野原位、高橋知由共著/左右社刊)という本に纏められた。次なる作品として手がけられたのが、初の商業映画『寝ても覚めても』だ。

本番に入る前の会議室。まず東出が実際の空間の中で動いてみせる。それを見つめ、監督はカメラマンとカット割りを決めてゆく。さて本番に入ろうかという時、東出が聞く。「台詞のニュアンスは?」「なしで。〈本読み〉の通りに」。

〈本読み(脚本読み)〉とは、「ハッピーアワー」の試行錯誤の中で生み出された濱口メソッドの一つだ。まずクランクイン前に作品全体を通した〈本読み〉が行われる。そして各場面の撮影前に、その場面のみの〈本読み〉が行われる。〈本読み〉をしている部屋へは監督と俳優以外誰も入れてもらえないという。


(C)2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会 / COMME DES CINÉMAS

濱口監督は、言う。「ニュアンスを抜いた状態で台詞を読んでから現場に入ってもらう。役や演技に対する先入観から生まれるものを一度なくして、その現場で生まれるニュアンスを大事にしたい。そういうものがカメラに写っている方が、“映画の中で何かが起こっている感じ”が生まれると思うんです」。

一方、東出は言う。「〈本読み〉をしたら、あとは現場で任されました。演者の動きをざっくり決めた後でも、監督は『さっきの動きをなぞらないで、違う動きになってもいいです』とおっしゃって。ここまで任せていただける演出は珍しい」。さらにこう言う。「麦と亮平の喋り方を変えて、演じ分けるのかなと予想していたのですが、そういうお芝居をすると、監督が全然OKを出さない。普段の東出に近い発声と喋り方を監督は求めていました」。

現場ルポの続きは『キネマ旬報NEXT Vol.20』に掲載。今号は『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』で表紙・巻頭特集を行った。山下智久のほか、山下健二郎×岩田剛典、佐野玲於×中川大志×高杉真宙×横浜流星、新田真剣佑、福士蒼汰ら新作公開を控える期待の俳優陣のインタビューを掲載している。(敬称略)

『寝ても覚めても』
監督:濱口竜介 原作:柴崎友香 脚本:田中幸子、濱口竜介 出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子 配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス ◎9月1日よりテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国にて

取材・文:寺岡裕治/制作:キネマ旬報社

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