映画の核心に迫る“二人の言葉”リリー・フランキー×是枝裕和 特別対談『万引き家族』

2018年6月13日


撮影=興村憲彦

映画の核心に迫る“二人の言葉”リリー・フランキー×是枝裕和 特別対談『万引き家族』

当初は『声に出して呼んで』という仮題であった台本は、最終的には『万引き家族』となった。是枝裕和監督の新作である。プロットの段階から目を通していたキャストの要、リリー・フランキーと是枝監督によるこの対談は、5月に開催された第71回カンヌ国際映画祭の前、いや、4月25日の完成披露試写会よりも早く――つまりは作品が完成してかなり初期段階で行われた。互いに手探りだが、しかし、映画の核心へと迫っていく二人の言葉の数々をお届けしよう。

ドキュメンタリーを観ているようだった


撮影=興村憲彦

リリー・フランキー(以下、リリー) この映画、自分の中でまだ整理ができていないんですよ。

是枝裕和(以下、是枝) 僕もそうです。うまく距離が取れていない。観終わって、とにかく“強いもの”になったなあとは感じました。“強いもの”が画面に写っている、と。

リリー 最初のラッシュを観て、ビックリしたんです。プロットや台本とは全く違うものになっていたので。台本を読んだときは、僕は泣いたんですね。叙情的な描写に胸を突かれて。で、撮影をしているあいだは逆に、コメディではないけれど、もう少しほのぼのとした家族の風景になっていそうな気がした。ところが実際に完成作と対峙してみたら、まるでサバイブする家族の日常のドキュメンタリーを観ているようでした。

是枝 音楽をお願いした細野晴臣さんが、映画をご覧になって「ドキュメンタリーみたいだから余計な音を足さなくてもいいんじゃないですか」とおっしゃって。なるほど、ドキュメンタリーを撮ったつもりはなかったのですが、たしかに作り方はそれに近かった。つ まり撮影や編集をしながら、自分でも気づいていなかったモチーフがすっと浮上してくる瞬間を摑まえ、その都度改稿していったんです。今回は完全なフィクションですけど、そういう僕なりのドキュメンタリー的なアプローチを通して“作品の色合い”が決まっていったのだと思います。

“怒”の詰まった映画


撮影=興村憲彦

すでに死亡した親の年金を不正受給していた実際の家族の詐欺事件。それが“作家”のイマジネーションを刺激した。「死んだと思いたくなかったという家族の言い訳を聞いて、その言葉の背景を想像してみたくなりました」(プレスシートより)。もしかしたら嘘かもしれない。が、是枝監督は考える。そして「犯罪でしかつながれなかった」家族たちの姿を描きだす。映画はまず、リリーさん扮する父・柴田治と息子の祥太(城桧吏)のいつもの共同作業、万引きの現場を見せ、次に冬の帰り道、近隣の高層マンションの谷間で寒さに震えていた幼い少女(佐々木みゆ)を放っておけなかった治が、家へと連れて帰るところから始まる。

プレスで是枝監督は、本作についてこうも語っていた。 「作っている感情の核にあるものが喜怒哀楽の何かと言われると、今回は“怒”だったんだと思います」

リリー 是枝さんって常に何かしらに、怒っていますよね。

是枝 そうなんですよ。意外といろんなことに(笑)。この映画に関しては実は、“喜怒哀楽”で分けられるほどシンプルではないんですけど、強いて言えば“怒り”がベースにあったという感じですかね。もうちょっと補足すると、こういうある種の社会的な事件の上に家族を乗せた場合、対象にべったり寄り添うのではなく、家族のありよう、それが壊れていくプロセスなどを冷静に見つめ、クールなスタンスで綴っていかないといけない。『誰も知らない』(2004年)がそうでしたが、社会への違和感を持ちつつ、そういった目線の持ち方を“怒り”という感情に集約させました。だから作品が“強いもの”になったのでしょう。

インタビューの続きは『キネマ旬報』6月下旬号に掲載。今号では、『万引き家族』の特集をおこなった。リリー・フランキー×是枝裕和の対談ほか、安藤サクラ、樹木希林のインタビュー、作品評を掲載している。(敬称略)

『万引き家族』
2018年・日本・カラー・2時間 監督・脚本・原案・編集:是枝裕和 撮影:近藤龍人 照明:藤井勇 美術:三ツ松けいこ 録音:冨田和彦 音楽:細野晴臣 出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、緒形直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美、柄本明、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林 配給:ギャガ ◎6月8日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて

取材・文=轟夕起夫/制作:キネマ旬報社

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