トム・クルーズのジャッキー・チェン化が止まらない!

2018年8月16日


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

トム・クルーズのジャッキー・チェン化が止まらない!

シリーズを重ねるごとに、その規模や過激さが増している『ミッション:インポッシブル』(以下、『M:i』)のスタント・アクション。実際の現場のプロフェッショナルはそれをどう見るのだろう?  そして、トム・クルーズはなぜそれほどまでに危険なスタントに身を投じるのだろう? ジャッキー・チェンに憧れスタントの道に入り、その後世界を股にかけて活躍する坂本浩一監督に、最新作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』を中心に、その極意をきいた。

坂本浩一監督が語る『ミッション:インポッシブル』スタントの極意

― まずは最新作『フォールアウト』の印象を教えてください。

坂本浩一監督(以下、坂本) なによりノンストップ・アクションだったことに驚きました。『ローグ・ネイション』(2015年)、『ゴースト・プロトコル』(2011年)と、ここ何作かは最初と中盤に派手なアクションがあるものの、最後はどちらかというと渋めのアクションとドラマで見せていました。それが今回は最後の最後まで大きなスタントで通した。しかもトムがますますジャッキー・チェン化している(笑)。より大掛かりなこと、特殊なトレーニングをしなければできないことをやっているので、ある意味、ジャッキーを超えたとも言えますね(笑)。

そもそも第1作『ミッション・インポッシブル』(1996年)はサスペンス劇で、シリーズ化するなら同じスパイものである『007』とどう差別化するのかと思っていました。『007』はオープニングアクションあり、中盤にカーチェイスあり、最後に大きな見せ場ありと、完全にフォーマット化されている。そんななか、ダニエル・クレイグが格闘技やパルクール(障害物を道具を使わずに乗り越える路上スポーツ)をやり始め、どんどんフィジカルになってきた。一方で、『ボーン』シリーズ(2002年~)が生まれ、こちらは実践格闘技で見せる。

それらとの差別化を考えたのか、『M:i』シリーズは独自の大きなスタントをやる方向になっていった。『007』でもスタントはありますが、『M:i』はトム自身がやっている。そこに強いこだわりを見せ、どんどん新しいアイデアを取り入れている。シリーズを通して僕が驚くのはそこですね。

前作を超えたいという想い


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

― 確かに毎回、印象的なシーン、語り継がれるようなスタントがありますね。

坂本 全盛期のジャッキーと一緒で、前作を超えたいという想いがすごく伝わってきますね。毎回あるバイクやカーアクションも、手をかえ品をかえ、面白いシチュエーションを持ってくる。その結果、スタントの難易度は上がるけど、その分経験値が上がっていて、今回はヘリコプターの操縦までトムが自分でやっています。それが彼の作品とファンへの愛&チャレンジ精神というのが、凄いですよね! まさにジャッキー魂!

トムがすごいのは、どう撮ったら自身が実際にスタントしているのを見せられるかを把握していて、しかもそれをお洒落に見せているところですね。たとえばバイクで追っ手を確認するため、一回カメラに振り返ってから車にぶつかっていくなどです。


(C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

― 高所での撮影も毎回あります。

坂本 ビルの上を全速力で走るとか、上空7600mからのヘイロージャンプ、ヘリコプターにつかまり落ちるなど、今回はかなり多いですね。

とくに、ヘイロージャンプはそもそも軍の特殊部隊がやっていることで、通常のスカイダイビングの倍の高さがあるんです。その練習のために、状況をシミュレーションできる巨大施設を建てたとのこと。そこまでするかっ! てね(笑)。しかも日没間近を狙っての撮影だから1日1回しか本番ができない。ひとつのスタントに信じられないような手間と予算がかかっているんです。

これまでスカイダイビングの映画は『ドロップ・ゾーン』や『ターミナル・ベロシティ』(ともに1994年)などありましたが、ダイバーが飛んでいる映像にグリーンバックで撮影した役者のカットを合成したものでした。今回はそんなトリックは一切なし。スカイダイビングのベストシーンになっていると思います。

インタビューの続きは『キネマ旬報』8月下旬号に掲載。今号では、「トム・クルーズ 映画=アクションの極限へ」と題して『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』巻頭特集をおこなった。クリストファー・マッカリー監督のインタビューほか、トム・クルーズ来日記者会見レポート、作品評などを掲載している。(敬称略)


さかもと・こういち/1970年生まれ、東京都出身。ジャッキー・チェンに憧れ16歳で倉田アクションクラブに入門。1989年に渡米し、大学在学中に活動を開始。『パワーレンジャー』シリーズのスタント、アクション監督・本篇監督・脚本に関わり、99年以降は共同プロデューサーを務める。2009年にシリーズ終了後は日本に一時帰国。アクションを得意とする演出家として国内外で幅広く活動している。近年の映画監督作に『赤×ピンク』(2014年)、『破裏拳ポリマー』(2017年)、『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!』(2018年)などがある。

取材・文=岡﨑優子/制作:キネマ旬報社

インタビューの続きや『キネマ旬報』8月下旬号の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』特集の詳細はこちらから↓