キラキラ映画の今後はいかに

2018年8月20日

(C)2018映画「覚悟はいいかそこの女子。」製作委員会 (C)椎葉ナナ/集英社

キラキラ映画の今後はいかに

少女漫画やライトノベル等の原作を、女子高生(ヒロイン)目線で描いた学園ラブもの即ちキラキラ映画が、今年伸び悩んでいる。

2014年の『ホットロード』以降『ヒロイン失格』(2015年)、『ストロボ・エッジ』(2015年)は興収20億円超え、2016年は『orange ―オレンジ―』を筆頭に6本が10億円超えと躍進を続けてきたが、2017年は『君の膵臓をたべたい』以外は20億円の壁を突破できず、ジャンル内で共食い状態に。今年はまだ10億円を超えた作品はなく『未成年だけどコドモじゃない』以下『となりの怪物くん』『坂道のアポロン』『ママレード・ボーイ』は横並びだ。

目の肥えた観客が増えた!?

不振の理由のひとつには、作品数の多さがある。一般的な映画と比べて、キラキラ映画の製作費は安い。地方の廃校等を使うことで、美術費が低減でき、また短期間で撮り切れるため、人件費も低く抑えられる。主演を務める若い俳優のキャスト費もさほど高くない。そんな製作側の事情もあり、2016年以降量産されてきたが、観客側のニーズが増えているわけではない。むしろ2017年の興収結果を考察すれば、飽和状態の中から観るべき作品をチョイスする、目の肥えた観客が増えたとも言える。

流行に敏感なティーン層に飽きられてしまったのでは? という指摘もある。確かに同じ原作者×監督×俳優で回している感が否めない。廣木隆一監督や三木孝浩監督が重用されるのは、原作以上にリアリティのある作品世界の構築を求められてのことだろうが、どんなに人気のある俳優でも、似たような役が続けば、ファンが食傷するのも無理はない。また、原作の世界観を背負えるだけの力量が求められるため、若手俳優とはいえ、それなりの実力が求められる点も、キャスティングの幅を狭める要因かもしれぬ。一年間かけて役と共に俳優も育てていく『仮面ライダー』のようなキャラクターコンテンツと違い、シビアな世界だ。一方でファンの期待を受けとめ、キラキラ映画をもり立ててきた山﨑賢人や福士蒼汰らは大きな飛躍を遂げた印象がある。

注目は東映作品の動向!?

(C)2018映画「覚悟はいいかそこの女子。」製作委員会 (C)椎葉ナナ/集英社

今後の動向で注目したいのは、東映だ。壁ドンブームの火つけ役となり、キラキラ映画のはしりとも言うべき『L♡DK』(2014年)で山﨑賢人を起用した東映は今年、ジャニーズ事務所から4年ぶりにCDデビューしたアイドルグループKing& Prince 平野紫耀の初主演映画『honey』の公開に続き、同グループの永瀬廉初主演映画『うちの執事が言うことには』(2019年公開)の製作に着手した(神宮寺勇太のスクリーンデビュー作でもある)。永瀬演じる御曹司の相手(執事)役には清原翔を起用。ヒロイン不在、イケメンの揃い踏みで、キラキラ映画とは一線を画するコアなファンを持つ、華麗なる社交界が舞台のミステリーシリーズに挑む。

ヒロインとの恋より、男子同士の愛すべきドラマにウエートを置くのは『覚悟はいいかそこの女子。』(2018年10月12日公開/東映)や『走れ!T校バスケット部』(2018年11月公開/東映)、『春待つ僕ら』(2018年12月公開/ワーナー)も同様。『覚悟はいいかそこの女子。』は現在放送中のドラマ(MBS・TBSは放送終了)と連動し、恋愛経験ゼロのヘタレイケメン(中川大志)が視聴者の母性本能をくすぐってから公開という算段だ(監督は井口昇)。物語の語り手を、ヒロインから男子にスイッチする試みは『あのコの、トリコ。』(2018年10月5日公開/ショウゲート)等でも見られる。

子供からシニア向けまで、幅広いアイドル映画で信頼を築いてきた東映が、低迷するキラキラ映画に風穴を開けられるか? 来年公開が決定した『L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』の玲苑役のキャスト発表も楽しみである。

『キネマ旬報』8月下旬号では、「2018年の日本映画はどうなっているんだ!」と題して上半期決算特集をおこなった。『万引き家族』『カメラを止めるな!』『名探偵コナン ゼロの執行人』『空飛ぶタイヤ』など上半期を賑わせた作品を中心に9本のコラムを掲載。日本映画の現在(いま)をつかまえる。

文=石村加奈/制作:キネマ旬報社

『キネマ旬報』8月下旬号の「2018年の日本映画はどうなっているんだ!」上半期決算特集の詳細はこちらから↓