監督が安田顕に決めた理由は“気持ち悪さ”!?『愛しのアイリーン』インタビュー

2018年9月21日


撮影=キム アルム

監督が安田顕に決めた理由は“気持ち悪さ”!?『愛しのアイリーン』インタビュー

90年代に発表された時、衝撃作として注目された漫画『愛しのアイリーン』。閉ざされた地方都市で、老いた父母と同居している四十歳過ぎた男・岩男がフィリピンで嫁アイリーンをもらったことから怒涛のごとく人生が転がりだす。一瞬に燃え盛った愛と生を描いた傑作漫画が吉田恵輔監督によって映画化されるにあたり、主演の岩男役には安田顕に白羽の矢が立った。

「マネージャーさんが企画書を読んだ時、“まっさらだった”という印象を受けたそうです。“まっさら”というのは第二第三候補ではなく、真っ先に僕のところに企画が来たということです。それに作者の新井英樹さんはカリスマ的な漫画家で、彼の作品に影響を受けた人がたくさんいる。人間の本性が顕になる過激な作品だけに、主演することがプラスになるかマイナスになるかわからないけれど挑戦してみようじゃないかという判断だったみたいです」

ほんとに僕でいいのか?


撮影=キム アルム

安田自身はマネージャーのやる気を聞いてまず原作を読み、主人公の迎える結末に瞠目した。

「なんだこれは!? すげえ作品だなあ! とぶるっと震えました。涙なしでは読めないほどで、とりわけ最後の場面は演じてみたいと強く思いました。ただやっぱりあまりに岩男と僕には見た目のギャップがあるから、ほんとに僕でいいのか? と監督に直接確認したかったし、真っ先に自分に話をもってきてくれた理由を知りたいと思いました」

安田顕は主演映画『俳優 亀岡拓次』(2016年)をはじめとして『みんな!エスパーだよ!』(2015年)や『銀魂』(2017年)などクセの強い役を演じることが多い。妻に翻弄される夫を演じた『家に帰ると必ず妻が死んだふりをしています。』(2018年)も一見しゅっとしたサラリーマンが追い詰められていく表情が尋常じゃなく可笑しい。とはいえ、今回の岩男はガタイのいいむくつけき人物で、端正な顔立ちで中肉中背の安田とはまるで違う。衣裳合わせの前日、安田は吉田監督と話をした。

監督の作品に対する熱量に打たれた

 

(C)2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ

「監督の作品に対する熱量に打たれて、これはもうきっちりやらせていただかないといけないなと思いました。監督が僕に決めてくださったわけは、“内面”と、あとは『褒め言葉として、ちょっと気持ち悪いじゃないですか、安田さんって』と言われました(笑)。現場でもしょっちゅう『いまの気持ち悪かったですねー』と喜んでくれてのせてくれましたよ(笑)」

吉田監督の眼力は確かで、映画の中の安田顕は岩男だ。不器用で鬱屈していて、でもある瞬間に溜まりに溜まった内的エネルギーを激しく爆発させる、そのパワーとその後に残る深い叙情ではないだろうか。

『キネマ旬報』10月上旬号では、『愛しのアイリーン』の特集を行った。安田顕のインタビューの続きをはじめ、作品評なども掲載している。(敬称略)
※吉田監督の「吉」は「土よし」

取材・文=木俣冬/制作:キネマ旬報社

安田顕インタビューの続きや『キネマ旬報』10月上旬号の『愛しのアイリーン』特集の詳細はこちらから↓