篠原涼子が人生の究極の選択?狂ってでも守るものとは…?

2018年11月13日

撮影=岡本武志

篠原涼子が人生の究極の選択?狂ってでも守るものとは…?

映画とテレビの両方で長年にわたって活躍できる女優はそう多くはない。篠原涼子はドラマ「アンフェア」シリーズが大ヒットとなり、映画もシリーズ化されて3作品が作られ、どちらのファンからも愛されてきた。そんな篠原にとって、今年は飛躍の年といえるだろう。東宝の『SUNNY 強い気持ち・強い愛』と松竹の『人魚の眠る家』の2作品に主演。その2本は奇しくも母という役だが、まったく違う顔をしている。

共通点を挙げれば、人生の究極の選択を迫られ、難しい決断をすることになるところ。東野圭吾のベストセラー小説を堤幸彦監督が映画化した最新作『人魚の眠る家』は、「ヒューマン・ミステリー」と銘うたれている。被害者と加害者がいるというような図式のミステリーではなく、篠原が演じたヒロイン薫子の心を覗き込むようなミステリーなのだ。この難役に篠原涼子はどのように挑んだのか。

原作との運命的な出会い

(C)2018「人魚の眠る家」製作委員会

東野圭吾が作家デビュー30周年を記念して書いた小説「人魚の眠る家」と篠原涼子の出会いは、初版本が店頭に並ぶ2015年のことだった。

「東野さんに本の帯を書いて欲しいと頼まれていましたので、最初に読んで書かせていただきました。母と子どもの話なので、子どもがいる私としては他人事ではないという感じでした」

篠原が書いた帯は「〈この世には狂ってでも守らないといけないものがある〉薫子の言葉に衝撃と賛同をおぼえました。人として、家族として、母としてなにが出来てどのように決断するのか。薫子のような強さを私も持ちたいと思いました」というもの。実生活での母親という立場が反映されている。

映画の話がくると思っていなかった

(C)2018「人魚の眠る家」製作委員会

『人魚の眠る家』で篠原が演じた播磨薫子は、IT機器メーカー社長の夫・和昌と、娘が小学校に入ったら離婚する約束をしている。その娘がプールで溺れて意識を失ったまま、回復の見込みがないという。だが夫の部下の星野が開発した機器で娘は延命できるとわかり、薫子はなんとしても娘に生きていてほしいという思いに囚われていく…。生命をどう受けとめるか、最後を誰が決めるのか、臓器移植をどう考えるか、といった難しい宿題が見る者に手渡される。

帯を書き、映画で薫子を演じたのは必然ではと投げかけると、「映画のお話をいただくとは思っていなかったので、びっくりしました」と答えた。篠﨑絵里子の脚本を読んだ第一印象はどうだったのか。

「小説とはちょっと雰囲気が変わっていました。たとえば夫の部下と薫子の恋愛的なくだりや、結末もちょっと違う。脚本はテンポがよくて、次はどうなるんだろうとページを繰るうちに読み尽くしました」

不安定さを見せたい

(C)2018「人魚の眠る家」製作委員会

監督は堤幸彦で東野作品の映画化は『天空の蜂』に続いて2作目だが、篠原と組むのは初めて。堤は彼女に「薫子は強い女性」と伝えていて、ふたりは「薫子の不安定さを見せたい」という点で一致していた。

「薫子は娘が生きていてほしいと必死で、自分が冷静なのかどうかもよくわからない。第三者から見れば、彼女は何を考えているんだろう、冷静なのか、それとも一部狂っているのか。見てくださる方に、そのへんがわからないようにと思って演じました」

機械によってでも娘が生き続けてほしいという母親・薫子の気持ちには共感できるものの、周りの人たちの声に耳を貸さず、のめり込むように暴走していくのが怖い。

「機械とつながることで人が動くというのはミステリーですよね。娘は意識がないけど心臓は動いているから、機械に反応して手がビクッとすると、薫子が『あっ、動いたよ』『このまま生かしておこう』と喜んで、どんどん機械に頼るようになっていく。人生では何が起こるかわからないから、自分が薫子の立場になったらどうするだろうと思いました。ただ、そんな状態を続けるのかやめるのかという決断は、それぞれの考えでいいと私は思います。決まりはないし、答えもない。決め付けることはいけないと思います」

このインタビューの続きは『キネマ旬報』11月下旬号に掲載。今号ではミステリー小説の映画化に焦点をあて「ミステリーと映画の蜜月」という特集をおこなった。『人魚の眠る家』より、篠原涼子、堤幸彦監督インタビュー、『銃』より中村文則×村上虹郎の対談、武正晴監督インタビューなどを掲載。(敬称略)

取材・文=おかむら良/制作:キネマ旬報社


 

『キネマ旬報』11月下旬号の特集「ミステリーと映画の蜜月」の詳細はこちらから↓