渋谷Bunkamura30周年「映画と共に30年、つれづれに」
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映画と共に30年、つれづれに

1989年9月3日、ル・シネマは複合文化施設Bunkamuraの映像部門を担うミニシアターとしてスタートしました。

オープニング作品はクロード・ルルーシュ監督の「遠い日の家族」と怪優クラウス・キンスキー監督・主演の「パガニーニ」。当時はBunkamuraが東京国際映画祭のメイン会場だったため、この2作品は4週間程の限定上映でしたが、朝から満席回の連続でその熱気に圧倒された記憶があります。

10月7日からはグランド・オープニング作品と称し、イザベル・アジャーニ主演の「カミーユ・クローデル」の上映をル・シネマ1&2の2スクリーンで上映、連日の満席と女性客の圧倒的な支持を得てのべ41週のロングラン、興行収入は1億5千万を超えその後の番組編成の指標ともなった作品です。

「キネマ旬報」に掲載されたル・シネマ開館時の広告(1989年9月上旬号)

オープン当初は都内に有数のミニシアターが競っており渋谷は最もその館数が多く、シネマライズ、ユーロスペース等、表情豊かな劇場の宝庫でした。その中にあって後発であるル・シネマの路線はやはり複合文化施設の特徴を活かし音楽・演劇・美術・文学等を上映作品に反映させたセレクションで個性を示す事でした。この姿勢はオープンから30年変わらず今も編成の柱となっています。

80年代後半から90年代はミニシアターのブームでもあり上映作品もエッジの効いたもの、作家性の強いもの、多少難解でも“これは観ておかなければ”というサブカル的なマスト感が先行し動員に繋がったと思います。多分にバブルの名残りもあったでしょうが、昨今のように“共感”重視ではなく“スタイル”や“テイスト”での選択が幅を利かせた時代でした。

映画「トリコロール」当時のパンフレット

「ベルリン・天使の詩」「ニュー・シネマ・パラダイス」「トレインスポッティング」「ブエノスアイレス」など、アート系の歴史に残る作品が続々誕生。ル・シネマでも「インドシナ」「王妃マルゴ」などのフランス映画も大ヒットしましたが、「さらば、わが愛 覇王別姫」「あの子を探して」「初恋のきた道」の中国映画がロングラン。“第五世代”と呼ばれた監督たちの作品が注目を浴び、その流れは台湾、韓国へと続きます。国の壁すら軽々と越えた韓流映画の圧倒的なエネルギーは驚きでした。

映画「さらば、わが愛 覇王別姫」当時のチラシ

そして劇場と監督の結びつきも、また深いものがありました。これは!と信じた作品が花開きロングランへと繋がるのはこの上ない歓びです。邦題から始まって、ポスタービジュアル、キャッチコピーまで、幾度となく議論し、宣伝に時間をかけ、時に監督の来日があり、劇場へも足を伸ばして思いを語ってくれる事も多々ありました。そんな熱い時間を配給会社の方たちと共有する楽しさは昔も今も変わりません。そして、その歓びを共にした監督の新作を同じ劇場で公開するのも、慣わしでした。

映画「髪結いの亭主」当時のパンフレット

ル・シネマで言えば「髪結いの亭主」から始まり、「ぼくの大切なともだち」まで8作品を上映した“常連”のパトリス・ルコント監督は配給会社との絆も深く、新作の度に来日してくれ、漫画家出身のお茶目な素顔を見せてくれました。

お茶目なパトリス・ルコント&ジュディット・ゴドレーシュ、ル・シネマへ来館

「ふたりのベロニカ」や「トリコロール」など、その深淵な美しさに多くのファンが魅せられたクシシュトフ・キェシロフスキ監督はダンテの「神曲」がベースの新作が待たれながら、あまりにも突然に54歳の若さで他界されてしまいました。ちょうどその時期にポーランドへ出張する上司にダメ元でお墓参りを頼んだところ、なんとお墓を探して花を手向けてくれたのです。あまりに嬉しく、涙が溢れた事を今も思い出します。

 

ビノシュ&キェシロフスキ、ル・シネマへ来館

“映画は生きもの”とも“世相を映す鏡”とも言われます。30年、映画と共に歩き、世の中の変化につれて人の気持ちが変わり、そして好まれる映画が変わっていく様を見てきました。30年前には無かった携帯電話が生活必需品となり、映画の伝達手段も大きく様変わりしました。映画館もありながら配信という場も共存する時代です。“第七の芸術”である映画は今後も変化を遂げていくでしょう。

ル・シネマは150席と126席という決して大きくない劇場です。この場所がこれからも、広く、大きく、困難でそして美しい世界を感じていただける“魔法の箱”であれたらと願っています。

 

文:ル・シネマ プログラミングプロデューサー 中村 由紀子

 

キネマ旬報100周年×Bunkamuraル・シネマ開館30周年記念 特別上映『花様年華』 開催決定!

創刊100周年を迎えたキネマ旬報と、開館30周年を迎えたBunkamuraル・シネマ。それぞれのアニバーサリーイヤーを、そしてBunakmura Garalleyでの『キネマ旬報創刊100周年 企画展 表紙で振り返る時代を彩った映画スターたち』の開催を記念して、一夜限りの特別上映を開催いたします。

上映作品はBunkamuraル・シネマにて2001年に公開、同年のキネマ旬報外国映画ベスト・テンランキングで第2位に選ばれた、ウォン・カーウァイ監督不朽の名作『花様年華』。上映前には映画評論家の渡辺祥子さんをお招きしトークイベントも開催いたします。

 


キネマ旬報100周年×Bunkamuraル・シネマ開館30周年記念
特別上映『花様年華

日時:11/29(金) 19:30~
会場:Bunkamuraル・シネマ
料金:特別記念価格 1,000円均一
★上映前に記念トークイベントを開催
<登壇者>
渡辺祥子(映画評論家)
中村由紀子(Bunkamuraル・シネマ プログラミングプロデューサー)
チケットは11/26(火)より、ル・シネマ カウンター、もしくはオンラインサービスMY Bunkamuraにてお求めいただけます。

 

●映画『花様年華

©2000, 2009 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.

2000年/香港/98分/Blu-ray
監督・脚本・製作:ウォン・カーウァイ
撮影:クリストファー・ドイルリー・ピンビン
美術・編集・衣裳:ウィリアム・チャン
出演:トニー・レオンマギー・チャン
配給:アスミック・エース

 

切符がもう一枚取れたら、僕と行かないか──
1962年、香港。新聞社の編集者であるチャウと、商社で秘書として働くチャン。二人は同じアパートに同じ日に引越してきて、隣人になる。やがて二人は、互いの伴侶が不倫関係にあることに気づき、次第に時間を共有するように。誰にも気づかれないよう、慎重に会っていた二人。家庭を持つ貞淑な男と女は戸惑いつつも、強く惹かれ合っていくのだった。誰にも言えない秘密を包み込む紫煙、ナット・キング・コールのバラッド、そしてなんといってもチャイナドレスの美しさ──今作でトニー・レオンが第53回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を、そして撮影と美術/衣裳が評価され高等技術院賞を受賞。本作の一部設定や世界観は『欲望の翼』から引き継がれており、さらに後年の『2046』へと醒めない夢は続く。英BBCが2016年に発表した「21世紀の名作映画トップ100」リストで、あらゆる名作を差し置いてなんと第2位に輝いた、永遠の愛の物語。
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