本家「ブレイキング・バッド」をも凌ぐ完璧なスピンオフ

本家「ブレイキング・バッド」をも凌ぐ完璧なスピンオフ

配信ムービー・ピックアップ・レビューその3
「ベター・コール・ソウル」


Netflixオリジナルシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~5独占配信中 

数ある配信ムービーのなかから、選りすぐりの作品のレビューをお届け。映画・音楽ジャーナリスト、宇野維正氏によるオススメは史上最高のテレビシリーズと誉も高いこの作品から!

本家「ブレイキング・バッド」をも凌ぐ完璧なスピンオフ

2015年、『ブレイキング・バッド』の前日譚にして、同作のサブキャラクターにすぎなかった弁護士ソウル・グッドマンを主人公とするテレビシリーズ『ベター・コール・ソウル』が始まった頃、自分も含め多くの人は本作を『ブレイキング・バッド』の「スピンオフ作品としてはすごく面白い」程度の作品だと見なしていた。ところが、シーズンを追うごとに本作の野心が明らかになっていく。オバマケアを背景に、ただ人間的な生活を送りたかっただけなのに、違法行為に手を染めることになる(=ブレイキング・バッド)化学教師を主人公とする『ブレイキング・バッド』と、実は本作のテーマは同じ。ニューメキシコ州アルバカーキを舞台に、のちに悪徳弁護士「ソウル・グッドマン」として名を馳せることになるジミー・マッギルと彼の周辺のキャラクターたちが、それぞれ道を踏み外していく過程が じっくりと描かれる。そして、本作の野心とは、「史上最高のテレビシリーズ」としての評価を確立した『ブレイキング・バッド』を、演出の細かいニュアンスにおいても、脚本の精密さにおいても、撮影や照明の美しさにおいても、プロダクション・デザインの完璧主義においても、あらゆる点で超えようとしているところ。結論を言うと、ここまでそれを完全に実現している。 

現在はシーズン5の佳境(ネットフリックスで、 北米のケーブル局AMCでの放送と同日に最新エピソードを配信中)。テレビシリーズというと「人気があるうちはダラダラ続けて人気がなくなった途端に打ち切られる」というイメージがあるかもしれないが、『ブレイキング・バッ ド』の時と同様に本作も人気のピークが来る前にシリーズ終了のタイミングを公表。次のシーズン6エピソード13がファイナルになることが予告されている。ちなみにそこまでの合計エピソード数は63。つまり、人気絶頂期に62のエピソードでファイナルを迎えた『ブレイキング・バッド』を1エピソードだ け「超える」ことになる。

  映画の配信作品が話題の中心となる今回の特集で、何よりも真っ先にテレビシーズの『ベター・コール・ソウル』を推したいのは、洗練されたストーリーテリングから計算し尽くされた画面構成にいたるまで、あらゆる「映画的」な美点において、ここ数年作られてきたすべての映像作品の中で本作が一つも二つも頭抜けていると強く確信しているからだ。未見の方はエピソード数の多さに尻込みするかもしれないが、それだけの価値は保証します。 

文・宇野維正

『ベター・コール・ソウル』
2015年製作・アメリカ・テレビシリーズ(シーズン1~5)
製作総指揮:ヴィンス・ギリガン、ピーター・グールド
出演:ボブ・オデン カーク、ジョナサン・バンクス、マイケル・マッキーン、レイ・シーホーン、パトリック・ファビアン、マイケル・マンド
◎Netflixにて配信中 

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