【前編】こがけん×松崎健夫が語りつくす「死ぬまでにこれは観ろ!2021」

【前編】こがけん×松崎健夫が語りつくす「死ぬまでにこれは観ろ!2021」

【前編】こがけん×松崎健夫が語りつくす「死ぬまでにこれは観ろ!2021」

キングレコードの夏、にっぽんの夏……映画ファンにはお馴染み8年目を迎えたキングレコードのブルーレイ&DVDキャンペーン「死ぬまでにこれは観ろ!」シリーズ。2021年はなんと250本(ブルーレイ127、DVD123タイトル)がラインアップ! 恒例となった「死ぬこれ!」対談は映画評論家の松崎健夫氏と、「ハリウッド映画ものまね」でおなじみ、芸人のこがけん氏が本誌初登場! 3本買うと1本もらえる、2021年の激ヤバ・キャンペーンに沿って、各々4タイトルずつセレクトしてもらった。作品への想いや見どころ、結局ブルーレイとDVDが欲しくなるのはなぜか!? をあますところなく語りつくす。

DVDは「コメンタリーを観ろ!」

松崎 まず、こがけんさんは、どんな映画体験をされてきたんですか。

こがけん R&Bが好きだった12歳上、一番上の姉の影響もあり、2〜3歳の頃から「ブルース・ブラザース」(80)をよく観せられました。暴力シーンもなく、小さい子でも観られる内容でしたから、好きでしたね。映画館デビューは小1だったかな、10歳上の二番目の姉に連れていかれたのが「グーニーズ」(85)。その次が「ラビリンス 魔王の迷宮」(86)、これも音楽が先で、デイヴィッド・ボウイが好きだったから。

松崎 こがけんさんとトークショーをしたのが19年の東京国際映画祭で上映された「サバービコン 仮面を被った街」(17)でした。

こがけん 上映前にしゃべるのは難しかったですよね。

松崎 続いて、今年のアカデミー賞授賞式を生配信で解説したとき。そして今回は8年目を迎える『死ぬまでにこれは観ろ!』シリーズですが、DVDって買われます?

こがけん 買いますよ。ソフトが面白いのはオーディオ・コメンタリーがあること。どんなインタビューよりも凄くないですか?

松崎 長時間で、ノー編集だし。

こがけん ダラダラ喋っているようでいて、相当いい情報が得られる! サブスク(リプション)にはないものだけに、これがある限りDVDの価値は下がらないし、衰えないと思います。例えば「セッション9」(01)のDVDには未公開映像が入っていました。

松崎 ブラッド・アンダーソン監督!

こがけん 本篇に恐ろしいモンスターは出てこないですが、未公開映像にはゾンビみたいなおばあちゃんが出てくる。そこまで収録してくれる心意気が嬉しい。そうした発見は、ソフトを買って見てみないと味わえないです。

松崎 志が高ければ、そこから映画の演出も学べるし。

こがけん そこはサブスクじゃ無理。本当に衝撃的でした。

松崎 特典映像があることによって、何がやりたかったかという、意図もわかる。

こがけん ウェス・アンダーソン監督もソフトへの熱が物凄い。特典映像にする前提で、撮影していると聞きましたよ。

松崎 より映画好きを育てる!

こがけん 実際にそうかもしれないですね。僕は、映画はすべて意図があってできているって思っていて。だからこそ「死ぬまでに特典映像を観てくれ!」と常々思ってます。本篇を観てすぐに棚にしまってる場合じゃないよ! とも。

松崎 僕はまず字幕版を観る。次に吹替版があれば吹替版も。音声解説やコメンタリーがあれば3回は観られる。さらに特典映像を見れば、映画が立体的にわかるようになりますね。

こがけん その作品の構造、骨組みも見えてくる。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(01〜03)のように、画面いっぱいの戦闘シーンがある作品は吹替版で、もう一度映像を取りこぼさず観たい。

松崎 僕はときどき吹替版を観ながら字幕を出します。字幕翻訳家を目指す人たちにとっては、どう縮めるかの勉強にもなる。ところで、こがけんさんの映画ネタは作品を観ながら考えるんですか?

こがけん いえ、映画は集中して観ます。ネタ作りは、基本的に「オーマイガー」と言えるような展開があったかを振り返ります。あとは映画を観ない人にも伝わるか。観なくても、あるある、と思わせるものにします。

松崎 ネタから、作品を知ってもらおう、これは今後のこがけんさんの使命のような気がしています。

こがけん 僕が映画のことを話すときは、コアな映画ファンよりもライトな層や現時点で興味のない層を意識します。彼らを映画の世界に引き込みたいんです。
そう、コメンタリーでいえば、「恋はデジャ・ブ」(93)。永遠に2月2日が繰り返されるという話ですが、DVDの特典映像で、何回ループしているのかという質問に対し、ハロルド・ライミス監督は確か10年と答えている。それは本篇ではわからなくて、それほど長い時を過ごしたんだって話を聞いて改めて感動した。あのコメンタリーは鳥肌でした。

実写は凄い!

こがけん  『死ぬまでにこれは観ろ!2021』のラインアップを見て凄いと思ったのは、「ベン」(72)「バスケットケース」(82)「チャイルド・プレイ」(88)など“小さなもの”が脅威になる作品があること。リアル志向になるほどこうした作品がなくなっていったけど、これらは、予算が抑えられている中で、どうやって怖く見せるかという演出の工夫が感じられるものでした。

松崎 70年代に始まった昆虫パニックものもたくさん作られたけど、動物愛護の観点から作られなくなってしまいましたからね。クモ一匹殺せない。現在ではクモのためのケア・マネジャーも雇わなきゃいけないからほぼCGにしてしまう。実物を使ってるから魅力的なのに、「イルカの日」(73)も今ではありえない。
こがけん 「クジョー」(83)とか怖い犬の作品もありましたね。

松崎  実写じゃないと撮れなかった時代のものを観ることによって、カット割り、撮影や演出も考えるようになると思うんです。今回僕がセレクトした4本のうち、最初に挙げたのは66年の「アルジェの戦い」。これはアルジェ独立までの解放戦線と、当時占領していたフランスとの戦いを描いているんですが、ドキュメンタリー・タッチで、役者も素人の人たちを使っているから凄くリアルに見える。拷問や処刑のシーンなんてどうやって撮っているんだろう、と。テロのシーンも、役者がいるのに平気で爆発する。何よりもアルジェリア独立の実話が、たった4年後に映画になったという驚きもあった。

こがけん まさにできたてですね。

松崎 リアルに見える映像の凄さもそうですが、半世紀以上前の出来事なのに今の時代を描いているように見えるし、ナチスに占領されていたフランスが、戦後は占領する側になったという皮肉も描かれている。モノクロですが、今観ても色褪せない、最近の映画に見えるかもしれない。

こがけん 僕は最近、フィルムに言葉を乗せる活弁の企画ライブに出させてもらっているんですが、フィルムは傷んでいるものが多いんです。だけど、逆に集中して観ようとする。モノクロ映画って色がない分、その世界観にのめり込んじゃうっていうのはありますよね。

松崎 観客の想像力がさらに増すのかも。

こがけん 自分なりの色を投影して観る良さはあるなって凄く思います。僕が挙げた「戦争のはらわた」(77)と「恐怖の報酬」(77)は実はあるテーマを基に選びました。いずれも77年、「スター・ウォーズ」が全米公開された年の作品です。完全に話題は持っていかれたけど、滅茶苦茶面白いんです!
戦争のはらわた」はサム・ペキンパー唯一の戦争映画で、とにかく爆撃が凄い。兵士が闇雲に乱射しているように見えるのがとても生々しいんですが、実際の戦闘で味方の流れ弾で結構な人が死ぬことを考えると、妙な説得力がある。何よりドイツ軍からの視点で描かれているというのが面白い。フィクションとはいえ、憎きドイツ軍の中にも、クソな上官に盾突く気概ある人間がいたという物語を描くことこそ、一番の反戦メッセージになるんじゃないかと。エンタメ性も高い面白い戦争映画でしたけど、戦争は絶対に肯定すべきものじゃないということが詰め込められている作品でもありました。

松崎 もともとこれらの作品は、結構な価格だったんですよ。それが今なら2750円で買える。映画館で映画観て、帰りにパンフレットも買うのと同じくらいの値段ですから。しかも映像がリストアされているので非常にきれいです。

こがけん 僕も「戦争のはらわた」のソフトは以前、結構な値段で買っています。滅茶苦茶面白い映画も、6000円くらいもすると人に薦めにくいところがありますよね。

(両者のセレクトが一致した「恐怖の報酬」など後編に続く・・・)

文=岡﨑優子/制作:キネマ旬報社(キネマ旬報8月下旬号より転載)

こがけん/1979年生まれ、福岡県出身。2001年からコンビで芸人活動を始め、12年から1人で活動。代表的な持ちネタに「ハリウッド映画ものまね」がある。19年、R-1ぐらんぷり決勝進出、20年、ユニット・おいでやすこがでM-1グランプリ準優勝に。映画好きな芸人等を集めたトークライブ『こがけんシネマクラブ』を開催するほか、『金曜ロードショー』の前説番組『まもなく金曜ロードショー』でナビゲーターを務めるなど、映画関係の活動も多数。映画「イソップの思うツボ」(19)「劇場版 ほんとうにあった怖い話〜事故物件芸人2〜」(21)にも出演

松崎健夫(まつざき・たけお)/1970年生まれ、兵庫県出身。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻終了。テレビ、映画の制作現場を経て映画評論家に。雑誌や映画パンフレットへの寄稿、テレビ、ラジオ、ネット配信の情報番組等に多数出演。デジタルハリウッド大学で講師を務めるほか、キネマ旬報ベスト・テン選考委員や、田辺・弁慶映画祭審査員、京都国際映画祭クリエイターズファクトリー部門審査員を務めている。映画評論家・添野知生氏とYouTube動画『そえまつ映画館』を毎週金曜配信、芸人コンビ・米粒写経との生配信番組『映画談話室』に出演中。

 

「死ぬまでにこれは観ろ!2021」キング洋画250連発!
<シリーズ史上 最大・最強ラインナップ!!(当社比>
8月4日発売
ブルーレイ:各2,750円(税込) DVD:各2,090円(税込)

3枚買ったら、全250タイトルの中からもれなく1枚もらえる!キャンペーン実施中
<応募期間>2021年8月4日(水)~2021年12月31日(金)

発売・販売元/キングレコード
© 2021 KING RECORD CO., LTD.ALL RIGHTS RESERVED.
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