アメリカでも絶賛された韓国系移民の物語「ミナリ」 何気ない出来事が人の心を揺らす

アメリカでも絶賛された韓国系移民の物語「ミナリ」 何気ない出来事が人の心を揺らす

アメリカでも絶賛された韓国系移民の物語「ミナリ」 何気ない出来事が人の心を揺らす

明るいニュースがなかなかない。殺伐とした日々が続く。そんななかでこの映画を思い返すと、スッと心に爽やかな風が吹き抜けていく。ああ、いいなあと思う。

映画「ミナリ」(9/3にBlu-ray&DVDリリース)は、1980年代、アメリカ南部アーカンソー州で農業をはじめた韓国系移民の物語。しかも監督のリー・アイザック・チョン自身の半自伝的なストーリーだ、と聞いて「移民への酷い差別や家族を襲う試練がドラマチックに起こるのだろうか―?」と想像した。が、これが全然違っていた。この映画にそんな描写はまったくない。正直、拍子抜けするほどだ。

おばあちゃん役のユン・ヨジョンがアカデミー賞助演女優賞受賞

がらんとした土地は、どこまでも広く悠然としている。地元の人々はゆるーく彼らを受け入れ、排除することなどない。第一、地元民のほうがちょっと変わりものだったりする。そんな場所で農業に夢をかけるお父さんと現実的なお母さん、わんぱく少年デビッドと、がさつでかなり〝キテる〟おばあちゃんとのイタズラ合戦などがシンプルに活写される。

もちろん苦労もある。少年デビッドは心臓に病いを抱え、お母さんにとって不便な田舎暮らしは気が気でない。お父さんは畑の作物を枯らしてしまい、呆然とする。そんななかマイペースなおばあちゃんは近くに小川をみつけ、水辺に韓国から持参したセリを何気なく植えるのだ。タイトルの「ミナリ」は韓国語でセリを意味する。おばあちゃんが遠いアメリカと韓国をつなげたこの場所が、最終的に一家に恵みをもたらすという展開もうまい。俳優たちもみな魅力的で、おばあちゃん役のユン・ヨジョンはアカデミー賞助演女優賞に輝いた。

今こそ求めていた希望の物語

これは小さくとも普遍的で、豊かな物語。大事件は起こらないけれど、ひとつひとつの出来事が、どこか懐かしく愛おしく、ゆえに誰もの心の琴線に触れる。

移民の試練や苦悩のドラマにしなかった理由を、リー監督はインタビューでこう語っていた。「あのころ自分の世界は、99パーセント自分の家族のことだけ。白人に自分たちがどう見られているかなんて、考えたこともなかった」

子どもだって、いじめられたりすれば、そのことを忘れない。実際に監督が暮らした1980年代のアーカンソーには、アメリカらしい開拓精神に溢れる鷹揚さと、多様性を受け入れる懐深さがあったのだろう。本作がアメリカでも絶賛された理由は、そんな人間の当たり前のやさしさが、意外なほど多くの人の心を揺らしたからだと思う。

コロナ禍以降、アメリカではアジア系への暴力事件が相次いでいるという。アメリカだけじゃなく、世界が分断と閉塞に包まれている。ぜひ多くの人々に、いま一度この風を共有し、おおらかな気持ちを思い出してもらいたい。

文=中村千晶 制作=キネマ旬報社(キネマ旬報9月上旬号より転載)

『ミナリ』

●9月3日(金)Blu-ray&DVDリリース(DVDレンタル同日リリース)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray:5,280円(税込)  DVD:4,180円(税込)
●Blu-ray・DVD共通特典
【映像特典】
・ユン・ヨジョン&監督によるオーディオ・コメンタリー
・メイキング
・未公開シーン集
●Blu-ray特典
・キャスト・スタッフ プロフィール(静止画)
・プロダクションノート(静止画)
●オンラインストア限定商品
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●2020年/アメリカ/カラー/本編116分
●監督・脚本/リー・アイザック・チョン 製作/デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナ―、クリスティーナ・オー 製作総指揮/ブラッド・ピット、スティーヴン・ユァン 撮影監督/ラクラン・ミルン 編集/ハリー・ユ―ン プロダクションデザイン/ヨン・オク・リー 音楽/エミール・モッセリ
●出演/スティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、アラン・キム、ネイル・ケイト・チョー、ユン・ヨジョン、ウィル・パットン
●発売・販売元/ギャガ
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