第3回「人生、その無謀な挑戦」~大好評エッセイ『あたしだけ何も起こらない』エピソード紹介

第3回「人生、その無謀な挑戦」~大好評エッセイ『あたしだけ何も起こらない』エピソード紹介

アラサー女性の心をわしづかみにする韓国エッセイ『あたしだけ何も起こらない』

第3回「人生、その無謀な挑戦」エピソードまるごと紹介

 

「結婚もせず子供もいない、遅れたからって何よ。これはこれで悪くない」と思いながらも、人より遅いペースで人生を歩んでいく女性の焦燥や不安を、笑って泣けるポジティブな自虐エピソードと共に紡ぐ話題の韓国エッセイ『あたしだけ何も起こらない “その年”になったあなたに捧げる日常共感書』(ハン・ソルヒ=著、オ・ジヘ=イラスト、藤田麗子=訳/キネマ旬報社刊)。共感必至の全24話の中から、特に心に刺さる3つのエピソードを全3回でご紹介します。【第3回「人生、その無謀な挑戦」】

第1回「最近よく聞く言葉、“その年”で」 

第2回「遅れるということの美学」

第3回「人生、その無謀な挑戦」

 

第3回「人生、その無謀な挑戦」

 私はただ40歳の皮をかぶっているだけの20歳に過ぎなかった。

 20代の頃を振り返ってみると、今と大して違わない。

もう少し活気があって、もう少し勝ち気で、もう少し無謀で、もう少し“クレイジーな人”っぽかったこと以外は。噓で中途半端に取り繕うより、正直であることが美徳だと思っていた時期だ。だから、相手が誰であろうと、抱いた感情をありのままに話そうと努めた。相手が自分より立派で強い人であればあるほど、媚びることなく荒っぽい口調でしゃべった。それが正しくてカッコいいと信じていた頃の話だ。

 年を取り、思っていたほど自分が強くないことは分かったが、性格はなかなか変わらなかった。私の性向は習慣や意識のように脳裏に刻み込まれ、20代とさほど変わらない姿で生きた。変わらない姿、それもまたカッコいいものだと信じていた30代の頃の話だ。

 荒っぽくて我が強い性格だったが、正直であろうと努力した。私を理解してくれる人々がそばにいたので、無理なく過ごすことができた。そんな中、状況が一変した。これまでは経験豊富な先輩の下でサブ作家を務めていたが、突然メイン作家になったのだ。

 よく言えば欲張ることなく現状に順応して生き、悪く言えば熾烈に生きていなかった私は、多くの人がチャンスだと考えるこの状況が死ぬほど恐ろしかった。責任を負うべきことが増えるという重圧に耐えられそうになかった。私はただ40歳の皮をかぶっているだけの20歳みたいだった。

 

 1 歳ずつ着実に年は取ってきたものの、結婚や出産といった人生の転換点になるような経験もなく、家族の暮らしを支えなければならないほど苦労したわけでもない私は、相変わらず幼くて未熟な感情の持ち主だった。

 

 「私にできるかな?」「引き受けておいてちゃんとできなかったらどうしよう?」「みんなはどう思うかな?」「あぁ、ちっとも自信が持てない……」。あらゆるネガティブな思考で頭の中がいっぱいになった。悩みすぎてナーバスになっていた頃、ケーブルテレビの再放送でバラエティ番組『無限に挑戦』を観た。正確な放送回は覚えていないが、1 年前の自分と体力テストで対決するという内容だ。1年前の自分に負けた人もいたが、努力の果てに去年の自分に勝った人もいた。

 恥ずかしながら、やけに感動してしまい、テレビの前でボロボロ泣いた。孤軍奮闘の末に昨年の自分を跳び越える様子にも感激したし、昨年の自分に負けるしかないという状況も分かりすぎて、何とも言えない感情に襲われた。単なるバラエティ番組なのに、その瞬間は人生の森羅万象をすべて目にしたような気分だった。

 

 20歳の頃の私を思い出してみる。何一つ優れたところもないくせに、先輩の番組をえらそうに批評していた時期だ。至らない点だらけの自分のシノプシスがいちばんおもしろいと、根拠のない自信に満ちていた頃だ。

 

 その後、本当に何度もつまずいて失敗したが、何とかここまで持ちこたえてきた。誰もがそうだろうと思う。求職中の人は就職の心配、就職した人は出世の心配、未婚の人は結婚の心配、結婚した人はローンの心配……。それぞれ置かれている状況が違うだけで、人生に対する根本的な悩みは同じだろうと思う。「少しずつ、今より前に進むしかない」境遇だということも……。

 背中を押されて、望んでいない場に出て行かざるを得なくなった。派手に転んで恥をかき、回復不能なほどの痛手を負うかもしれない。

 しかし、だ。転んでもどうってことない。誰かが手をつかんでくれるだろうし、手を取ってもらえなかったとしても、ちょっと恥ずかしい思いをして、パンパン服をはたきながら起き上がればいいだけだから……。

 

人生を歩むうえで、無謀な挑戦は“無限”に繰り返されるものだ。バテずに進んでいこう。

 

『あたしだけ何も起こらない “その年”になったあなたに捧げる日常共感書』より、#20「人生、その無謀な挑戦」を転載

※無断転載禁止

 

 

■『あたしだけ何も起こらない “その年”になったあなたに捧げる日常共感書

女性共感度100%の年齢考察イラストエッセイ。あたしだけ人生何もない? いいえ、スタートが遅いだけです! アラサー女子の飽くなき疑問と焦りにそっと寄り添う、笑って泣ける日常共感書。

ハン・ソルヒ=著、オ・ジヘ=イラスト、藤田麗子=訳

仕様:四六判カラー/232頁/価格:1,595円(税込)/発行:キネマ旬報社

※電子版書籍も発売中

いつからか結婚の話題を出さなくなった両親、いざ結婚へのプレッシャーが消えると沸いてくる焦りと挫折感、ムカつくほど広がっていく毛穴、日に日に低下する記憶力、人生で最も輝いていた瞬間へのノスタルジーetc……。自分だけ置いてきぼりのような人生の中、年齢をまたひとつ重ねていく女性の共感を呼ぶエピソード満載で贈る、笑いと涙の年齢考察イラストエッセイ。

最近よく聞く言葉、“その年”で。“その年”でそれはちょっと……。年を取るって制限がつきもの?
年を取るって失っていくことなの? ミドル世代女子の飽くなき疑問と焦りにそっと寄り添い、
“自分らしく生きる”人生の選択を応援する、日常共感書。

大人気コラムニスト、ジェーン・スー氏がコメントを寄稿!
「あまりにも正直すぎて、気が滅入ったあと声をあげて笑ってしまった。
大丈夫、なんとかなるよ。」―ジェーン・スー氏

 

 

 

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