日本映画専門チャンネル(BS255) 4K版「仁義なき戦い」シリーズ一挙放送

日本映画専門チャンネル(BS255) 4K版「仁義なき戦い」シリーズ一挙放送

 

菅原文太が主人公・広能昌三を演じた「仁義なき戦い」シリーズ全5作品が、日本映画専門チャンネルで、2月26日(土)、27(日)に4Kニューマスター版で一挙放送される。そこで当時の製作背景に迫ってみたい。

一癖も二癖もある連中が蠢く群像劇

 

今では老若男女が知る実録やくざもののビッグネームとなっている。第1作「仁義なき戦い」が封切られ大ヒットした73年は、再生日活のロマンポルノも活況を呈しており、まさにやくざとポルノの時代であった。

重要なのはこのシリーズが全て東映の京都撮影所で撮られていることだ。ご存知のように東映は京都太秦の京都撮影所と東京大泉の東京撮影所と東西二つの撮影所がある。撮影所システムがほぼ崩壊してしまった現在はともかく、51年の東映創立よりしばらくは〝時代劇の東映〞がキャッチ・フレーズで京撮こそが東映の本流であった。任俠ものの嚆矢と言われる鶴田浩二主演「人生劇場 飛車角」(63・沢島忠監督)は東撮であった。だが企画者で撮影所長であった岡田茂が京撮へ移動したことから、同じ鶴田主演の「博徒」(64・小沢茂弘監督)が本格的任俠路線第1作として京撮で撮影された。かくして任俠路線も京撮が中心となって製作されることになった。

その任俠路線の主導的プロデューサーが俊藤浩滋で、鶴田浩二、高倉健、藤純子、若山富三郎、菅原文太といった任俠スターのマネージメントも手掛ける絶対的存在であった。だが10年近く続いた任俠路線も徐々に翳りが見え始め、俊藤も岡田も新規路線を模索していた。特に岡田は社長に就任したばかりで、新たな鉱脈探しは急務であった。そんな様々な思惑の中で俊藤が広島やくざ、美能幸三の手記を基に飯干晃一が書いたノンフィクション『仁義なき戦い』を読み映画化を主導した。京撮を選んだのは、時代劇・任俠路線と続く東映京撮こそ本流という意識があってのことだろう。

深作欣二を監督に起用したのは、任俠路線の監督では適応し切れない原作のピカレスクな味わいを出せる監督という見識故か。深作は「現代やくざ 人斬り与太」「人斬り与太 狂犬三兄弟」(以上72)で、義理人情クソ食らえのアウトローを主人公に従来の任俠路線とは一線を画した作風で頭角を現しており俊藤も目をつけていた。俊藤は日活「㊙色情めす市場」(74)を観て感心し、監督の田中登を何と高倉健主演「神戸国際ギャング」(75)に起用した剛のものである。脚本の笠原和夫は、原作の味を消さぬため従来のスター主義ではなく一癖も二癖もある連中が蠢く群像劇として、戦後史を背景に投影しつつ描きあげた。急速ズーム、ハンディカメラによる手振れを物ともしないカメラワークの多用など、従来の京撮では考えられない深作の過酷な要求を、撮影の吉田貞次と照明の中山治雄のコンビが見事にクリアしてシリーズすべてを走り抜けた。

主人公だが時には狂言回しとなる広能昌三役の菅原文太は、新東宝・松竹を経て外様である東映において、ようやく決定的な当たり役にめぐり合った。今や菅原文太=「仁義なき戦い」と言っても過言ではない。狡猾・吝嗇だが、どことなく憎めない広能の親分、山守義雄に扮した金子信雄にとっても彼の集大成とも言える当たり役で、菅原文太と共に表裏の顔となった。殺されてもゾンビのように違う役で復活する松方弘樹、梅宮辰夫、渡瀬恒彦らも楽しい。そして京撮の大部屋俳優たちで結成された〝ピラニア軍団〞が大挙出演した。本作を群像劇と称する深作は彼らにもスポットを当てて、それが作品の活性化にも繋がっていた。川谷拓三、室田日出男は一躍売れっ子俳優となった。

シリーズ最高傑作と謳われる「仁義なき戦い 代理戦争」

 

シリーズの脚本構成がまだ固まっていないため、スピンアウト的に製作された「仁義なき戦い 広島死闘篇」(73)は、俊藤がプロデューサーを外れて以降、東映本社の主導となった。文太は狂言回し的役割となり、山中正治役の北大路欣也と大友勝利役の千葉真一が主人公で、壮絶な対立を展開した。大友勝利は「仁義なき戦い 完結篇」(74)でも登場するが、この頃の千葉は空手映画で忙しく宍戸錠が代演した。

シリーズ最高傑作と謳われるのは第3作「仁義なき戦い 代理戦争」(73)で、ここから広島やくざ戦争が本格的に描かれていく。明石組(山口組)VS神和会(本多会)の二大勢力の対立なのだが、実際に対立するのは、それぞれの下部組織による代理戦争。ドンパチはシリーズの中でも少なめなのだが、登場する連中の権謀術策をめぐらす魑魅魍魎ぶりが無類の面白さで、随所に漂うブラック・ユーモアも味わいがある。本作より武田明役の小林旭と打本昇役の加藤武が登場して作品に厚みを加えている。

第4作「仁義なき戦い 頂上作戦」(74)は、笠原和夫が広島やくざの終焉まで描いたので「もうおしまい」と言うように、事実上の完結篇。菅原文太と小林旭が、粉雪が舞い込む寒々とした裁判所の廊下で「間尺に合わん仕事したのう」「辛抱せいや」と言って別れるラストは、シリーズの完結に相応しかった。だがヒット中のシリーズを東映が手放すわけもなく「仁義なき戦い 完結篇」が作られた。脚本は笠原が降りて高田宏治が書いたが、似て否なる感はぬぐえなかった。シリーズはまだ終わらずこの後も「新 仁義なき戦い」(74)「新 仁義なき戦い 組長の首」(75)「新 仁義なき戦い 組長最後の日」(76)が作られた。

 

※本文は「キネマ旬報3月上旬号」から転載したものです。

文=ダーティ工藤 制作=キネマ旬報社

◆2月26日(土)よる10時〜

「仁義なき戦い〈4Kニューマスター版〉」<R-15>

監督:深作欣二 原作:飯干晃一

脚本:笠原和夫

出演:菅原文太、松方弘樹、渡瀬恒彦、伊吹吾郎、中村英子、川地民夫、名和広、内田朝雄、内田朝雄、田中邦衛、梅宮辰夫

 

◆2月26日(土)よる11時50分〜

「仁義なき戦い 広島死闘篇〈4Kニューマスター版〉」

監督:深作欣二 原作:飯干晃一

脚本:笠原和夫

出演:菅原文太、千葉真一、梶芽衣子、山城新伍、名和広、成田三樹夫、松平純子、前田吟、金子信雄、遠藤辰雄、小池朝雄、北大路欣也

 

◆2月26日(土)深夜1時40分〜

「仁義なき戦い 代理戦争〈4Kニューマスター版〉」

監督:深作欣二 原作:飯干晃一

脚本:笠原和夫

出演:菅原文太、小林旭、池玲子、堀越光恵、中村英子、渡瀬恒彦、山城新伍、金子信雄、木村俊恵、成田三樹夫、加藤武、田中邦衛、丹波哲郎、梅宮辰夫

 

◆2月27日(日)よる10時〜

「仁義なき戦い 頂上作戦〈4Kニューマスター版〉」

監督:深作欣二 原作:飯干晃一

脚本:笠原和夫

出演:菅原文太、梅宮辰夫、黒沢年男、田中邦衛、金子信雄、小池朝雄、内田朝雄、遠藤太津朗、加藤武、松方弘樹、小林旭

 

◆2月27日(日)よる11時50分〜ほか

「仁義なき戦い 完結篇〈4Kニューマスター版〉」TV初

監督:深作欣二 原作:飯干晃一

脚本:高田宏治

出演:菅原文太、北大路欣也、松方弘樹、野川由美子、桜木健一、山城新伍、伊吹吾郎、田中邦衛、宍戸錠、金子信雄、小林旭

 

特設サイト:日本映画専門チャンネル

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