“戦争の本当の始まりを撮影したもの”。「ウクライナから平和を叫ぶ」のムラヴェツJr.監督が語る

“戦争の本当の始まりを撮影したもの”。「ウクライナから平和を叫ぶ」のムラヴェツJr.監督が語る

2015年にドネツクをはじめ、紛争地域の対立する両派の声を拾い上げ、現在のウクライナ情勢の背景を浮き彫りにするドキュメンタリー「ウクライナから平和を叫ぶ~Peace to You All~」が、8月6日(土)より渋谷ユーロスペースほかで全国順次公開。ユライ・ムラヴェツJr.監督のインタビューが到着し、ユーロスペース公開初日に監督がZOOMで舞台挨拶することが決定した。

 

▲ユライ・ムラヴェツJr.監督

 

監督インタビューは以下。

──制作のきっかけをお教えください。

僕の両親は実は二人とも新聞記者で、二人ともメディアで働いているんですけれども、幼少時代から父に出張に連れられていましたので、僕にとっては何かを記録する、あるいは記事にする活動はごく自然なことだったんです。この戦争が起きたときに、ウクライナはスロバキアの隣だということもありますし(※監督はスロバキア人)、ユーロマイダンのときからスロバキアでもその影響を多少感じました。なので、経済的に行ける距離であったということも大きく、何か起きている所に行きたいという自分の欲求を叶えるために、撮影に行きました。

──監督は大学で映画撮影と写真の両方を学んだとのことですが、本作では監督のモノクロ写真も多用されています。モノクロ写真は特に言葉がなくても人々の苦労が映し出されるように思いますが、本作で写真と映像両方を使っている理由をお教えください。

僕にとって写真というのは、情熱的に感じるもので、その一瞬を撮るということにやはりとても興味があります。例えば、最初に写真の撮影をして、そのあとその人と映像のインタビューなどを撮っていきます。「時が止まる」という言い方もありますけれども、まさにそういうことが表現できると思いますし、自分にとって現場で写真を撮れるのはもっとも理想的な環境ですので、このような手法を選びました。

──ウクライナ側と親ロシア派と、老若男女色んな方をインタビューしていて、人選が素晴らしいと思ったのですが、人選で工夫したことはありますか?

実は2015年の時は、分離派独立という言葉にひかれてドネツクのほうに向かいました。映画でご覧いただいたように、普通に入ることができて車で各地を旅して泊まっては、インタビューするというような形でした。通りがかった人は皆さんかなり気軽にインタビューに答えてくれるというような状態でしたし、そのあとウクライナに行って同様に撮影をしましたけれども、皆さん話をしてくれました。
3年間の制作期間のうちに、2年間は撮影に費やしましたが、登場人物たちの中には、綿密なリサーチに基づいて探したり選んだりした人もいます。冒頭の死者の携帯電話で電話を受けた女性の方がいましたが、彼女は探すのに半年もかかりました。

──同じ鉱夫でも戦争に参加した人、参加しなかった人、スパイに間違えられた人と3人のインタビューがあり、多様性を感じました。他にもインタビューして泣く泣くカットした人などはいますか?

映画を自分が望まない方向に引っ張ってしまうような気がしたので、過激派の意見は含めなかったです。普通の人たちが戦争をどのように認識しているのかというのがこの映画のテーマでした。

──「スクーターに乗ればすべて忘れられる」と救われている女性や、ロシアン・スパニエルについてジョークを言う人など、暗いシーンだけでなかったのが救いでしたが、工夫はありましたか?

スクーターの彼女は映画に大きく貢献してくれたと思います。重いテーマであっても、やはりユーモアが必要ですよね。重いテーマの映画を見ている観客の方でも、少しこういったユーモアのあるシーンが入ることによってそのあとが見やすくなる。そのため悲劇的な話でもユーモアを含んだものを探すようにしています。

──本作の見どころはどこだと思いますか?

この映画は、この戦争の本当の始まりを撮影したもので、関係者がそれに対して意見を言っているものです。今回の戦争というのは新しく始まった戦争ではなくて、8年間続いていた戦争が第2フェーズに移ったものです。戦争の始まりとなったユーロマイダンと、そのあとの8年間の硬直状態の始まりを知るのに最適な映画だと思います。

──読者にメッセージをお願いします。

まず僕の映画に興味を持っていただき、本当にありがとうございます。この映画はウクライナの戦争の始まりを映したものです。今の戦争は8年間続いていたフェーズが第2フェーズに移ったもので、その始まりを知るということは、大変大事なことだと思います。ぜひ自由な思考を持って見ていただいて判断していただければと思います。身の回りのことに、世界のことに関心を持ってもらえるとうれしいです。

 

 

© All4films, s.r.o, Punkchart films, s.r.o., RTVS Rozhlas a televízia Slovenska
配給:NEGA 配給協力:ポニーキャニオン

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