壮絶なアクションと鮮烈なエロティシズム!没後30年に改めて五社英雄作品を堪能して欲しい

壮絶なアクションと鮮烈なエロティシズム!没後30年に改めて五社英雄作品を堪能して欲しい

「極道の妻たち」「鬼龍院花子の生涯」などを手掛け、今年で没後30年となる日本映画界の鬼才・五社英雄監督。本日8月30日が命日となり、「没後30年 五社英雄 情念の軌跡」プロジェクトが進行している。

五社監督の娘で、五社プロダクション代表取締役の五社巴氏が「父が亡くなってから30年はあっという間でした。その後実母や継母も亡くなり遺品整理を始めたら、未だに見ることが出来ない父の作品があることに気が付き、驚きました。そこから、父の作品を次の世代につなぎたいと強く思うようになったのです」と語っているように、今回のプロジェクトの一つとして、未だパッケージ化されていない9作品が、遂にDVDもしくはブルーレイ化されることになった。

まず命日の8月30日にリリースされる「牙狼之介」「牙狼之介 地獄斬り」(東映ビデオ)、「御用金」「人斬り」「女殺油地獄」(ポニーキャニオン)の5作品を通して、五社監督の軌跡をたどる。

テレビディレクターから映画監督へ

「牙狼之介」(東映 1966年11月公開)、「牙狼之介 地獄斬り」(東映 1967年5月公開)

55年、テレビ出身のデルバート・マンが映画初監督した「マーティ」がアカデミー賞で監督賞など主要部門を受賞した。これを契機にしてテレビ界から「十二人の怒れる男」(57年)のシドニー・ルメット、「孤独の青春」(57年)のジョン・フランケンハイマーらが映画界へ進出した。一方日本では、テレビで評判を取った『私は貝になりたい』『いろはにほへと』などが映画化されるも、テレビディレクターが起用されることはなかった。

当時の日本映画界の閉鎖性は、テレビディレクターは勿論、他業種より映画監督するのも珍しくなくなった現在に比べると隔世の感がある。その壁を最初にぶち破ったのは五社英雄であった。五社は当時、開局間もないフジテレビのドラマ班で『トップ屋』(60年)『宮本武蔵』(61年)など次々とヒットを飛ばしていた新進気鋭のテレビディレクターであった。さらに63年から放映開始された『三匹の侍』では、剣と剣が交わる音や斬殺音といった効果音を本格的に導入して臨場感を出した。五社の一連のテレビドラマで主演した丹波哲郎が映画スターとして一本立ちし、さむらいプロなる自らのプロダクションを立ち上げて、松竹京都で64年「三匹の侍」を映画化し五社を監督として起用した。当然、既成の助監督やスタッフなどから猛反発があったが、丹波の製作ということもあり強引に押し通した。五社は丹波の熱い友情の後押しで、念願の映画監督デビューを飾ることが出来た。五社と丹波の絆は、終生続くこととなった。

安定感の上での変革を常に見据えていた東映の岡田茂は、64年に東京撮影所(東撮)から京都撮影所(京撮)の撮影所長に就任した。任侠路線は好調ながら低迷する時代劇のテコ入れとして、新しい感性の持ち主として目をつけていた五社を起用。まず東映で行き場所がなくなっていた中村錦之助(萬屋錦之介)主演の「丹下左膳 飛燕居合斬り」(66年)で五社の手腕を確認。続いて俳優座の新人、夏八木勲を主役に抜擢した「牙狼之介」(66年)「牙狼之介 地獄斬り」(67年)の低予算時代劇二作を監督させた。とにかくテレビ時代劇時代よりの盟友である殺陣師、湯浅謙太郎の、刃を交えるとともに肉体をもぶつけ合う凄まじい殺陣に圧倒される。荒野におっ建てたオープンセット以外はロケを主体とし、随所に入るエロと残酷描写など、当時大流行していたマカロニウェスタンの影響もうかがえる。

フジテレビの映画界参入

「御用金」(フジテレビ/東京映画 1969年5月公開)

69年、フジテレビがいよいよ映画製作に乗り出すこととなり、多額の製作費をかけた大作「御用金」の監督に社員である五社が起用される。越前鯖江藩の御用金強奪を巡る陰謀を描くことから、五社は日本海の荒々しさを表現すべく真冬の下北半島に大ロケーションを慣行した。仲代達矢、丹波哲郎、三船敏郎、司葉子、浅丘ルリ子の五大スター競演が話題だったが、仲代との酒の上での諍いから三船が降板し、中村錦之助が急遽代役参加するというハプニングも逆に話題となった。本作は日本映画初のパナビジョン方式による撮影であり、名手、岡崎宏三が画面のスケール感を強調させることに成功している。フジによるメディア戦略も功を奏して年間ベスト10に入る大ヒットを記録した。本作は海外でも公開され、75年にはアメリカで「マスター・ガンファイター」(フランク・ローリン監督)として正式にリメイクされている。

「人斬り」(フジテレビ/勝プロダクション/大映 1969年8月公開)

ヒットに気をよくしたフジは映画製作第二弾「人斬り」(69年)で、再び五社を起用した。これは勝新太郎率いる勝プロダクションとの合作で、勝が幕末のテロリスト、岡田以蔵を熱演した。五社は初めて大映京都撮影所に乗り込み反発も多かったが、日本映画界随一と謳われた京撮の職人技に感銘を受けたという。「御用金」に続いてスターを揃え、勝を始め仲代達矢、石原裕次郎そして三島由紀夫というインパクトのあるキャスティングとなった。中でも、この1年後に割腹自殺を遂げる三島の演技と殺陣は既存の俳優にはない鬼気迫るものがあった。本作は再びヒットし、五社はフジテレビ編成局映画部長に昇進して野心的なテレビドラマを次々と企画する。だが盟友、丹波哲郎の発案による『ジキルとハイド』(69年)の内容があまりに過激すぎてオクラになり(73年ひっそりと深夜に放映)、さらに身内の借金とそれに関わる拳銃不法所持容疑による逮捕により、フジを依願退職することとなる。

復活と女の情念

「女殺油地獄」(フジテレビ/京都映画 1992年5月公開)

しばらく低迷していた五社だが、俳優座の佐藤正之の奔走により、82年、仲代達矢主演の「鬼龍院花子の生涯」で久々に監督復帰。夏目雅子の「なめたら、なめたらいかんぜよ!」というキメゼリフが話題となり大ヒットし、五社は見事に復活を遂げた。その後は女の情念の世界を描いた「陽暉楼」(83年)「櫂」(85年)「極道の妻たち」(86年)「吉原炎上」(87年)「肉体の門」(88年)などをコンスタントに監督。だが86年に食道ガンを告知され手術するが、体調が思わしくないまま撮った92年の「女殺油地獄」が最後の作品となった。

近松門左衛門の原作は、人形浄瑠璃から始まり、歌舞伎、文楽と上演され続けた古典中の古典で、松竹キネマによる24年の野村芳亭監督作を最初に何度も映画化されている。最も有名なのが中村扇雀(後の四代目坂田藤十郎)と新珠三千代が主演した堀川弘道監督による57年の東宝作品だろう。本作はそれに続く通算6度目の映画化である。井手雅人の脚本は、お吉がかつて河内屋の奉公人で与兵衛の乳母代わりをしていたこと、与兵衛の愛人小菊への嫉妬から与兵衛と肉体関係を持つという設定を新たに追加して、女の情念の深さをより際立たせている。従来はどうしてもむき出しのアクションに重心がかかってしまいがちな五社にしては、じっくりと樋口可南子扮するお吉の心情描写に腐心しており、五社の新たな見解を示しているようにも思われただけに、遺作となってしまったのは返す返すも残念である。

文=ダーティ工藤 制作=キネマ旬報社

「没後30年 五社英雄 情念の軌跡」プロジェクト  公式HPはこちら

【パッケージ情報】
8月30日(火)発売

「御用金」(69年)
Blu-ray:5,170円(税込) DVD:4,180円(税込)/発売元:フジテレビジョン 販売元:ポニーキャニオン

「人斬り」(69年)
Blu-ray:5,170円(税込) DVD:4,180円(税込)/発売元:フジテレビジョン 販売元:ポニーキャニオン

「女殺油地獄」(92年)
Blu-ray:5,170円(税込) DVD:4,180円(税込)/発売元:フジテレビジョン・松竹撮影所 販売元:ポニーキャニオン

「牙狼之介」(66年)
DVD:4,180円(税込)/発売元:東映ビデオ 販売元:東映

「牙狼之介 地獄斬り」(67年)
DVD:4,180円(税込)/発売元:東映ビデオ 販売元:東映

12月21日(水)発売
「獣の剣」(65年)発売・販売元:松竹
「五匹の紳士」(66年)発売・販売元:松竹
「十手舞」(86年)発売・販売元:松竹
「出所祝い」(71年)発売・販売元:東宝

【CS・BS特集放送情報】
「東映チャンネル×日本映画専門チャンネル共同企画 没後30年 五社英雄 情念の軌跡」
東映チャンネル
8月「極道の妻たち」(86年)「肉体の門」(88年)「牙狼之介」(66年)「牙狼之介 地獄斬り」(67年)
9月「北の螢」(84年)「丹下左膳 飛燕居合斬り」(66年)「暴力街」(74年)
日本映画専門チャンネル
8月「鬼龍院花子の生涯」(82年)「陽暉楼」(83年)
9月「櫂」(85年)「吉原炎上」(87年)

時代劇専門チャンネル
8月「三匹の侍」(64年)

WOWOW「没後30年 五社英雄の時代劇」
9月「獣の剣」(65年)「五匹の紳士」(66年)「御用金」(69年)「人斬り」(69年)ほか2本

衛星劇場「没後30年 五社英雄 情念の軌跡」
10月「 226」(89年)「陽炎」(91年)「雲霧仁左衛門」(78年)「闇の狩人」(79年)ほか1本
11月「 薄化粧」(85年)「十手舞」(86年)「女殺油地獄」(92年)ほか2本

【上映情報】
「“没後30年 五社英雄 情念の軌跡” in 新文芸坐」
9/6(火)まで五社英雄監督の名作を2本立連続上映中
※上映時間など詳細は新文芸坐HPにてご確認ください。
8/30(火)「極道の妻たち」(86年)「陽暉楼」(83年)
8/31(水)「丹下左膳 飛燕居合斬り」(66年)「三匹の侍」(64年)
9/1(木)  「226」(89年)「女殺油地獄」(92年)
9/2(金)  「吉原炎上」(87年)「鬼龍院花子の生涯」(82年)
9/3(土)  「丹下左膳 飛燕居合斬り」(66年)「三匹の侍」(64年)
9/4(日) 「極道の妻たち」(86年)「陽暉楼」(83年)
9/5(月)  「人斬り」(69年)「御用金」(69年)
9/6(火)  「226」(89年)「女殺油地獄」(92年)

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