初代・斉藤由貴、二代目・南野陽子、三代目・浅香唯、映画&総集編に見る「スケバン刑事」麻宮サキの系譜

初代・斉藤由貴、二代目・南野陽子、三代目・浅香唯、映画&総集編に見る「スケバン刑事」麻宮サキの系譜
映画『スケバン刑事』より。二代目・麻宮サキを演じた南野陽子の凛々しい姿に、当時の少年たちは大いに魅了された

マーベル・ヒーロー映画から邦画大作まで、今やアクションに挑む女優は珍しくない。だが、少し前まで「アクション映画は男のもの」が常識だった。そんな1980年代、女性アイドル主演で青少年を熱狂させたシリーズがあった。それが「スケバン刑事」だ。東映チャンネルでは9月に、その劇場版第1弾『スケバン刑事』(1987年)、第2弾『スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲』(1988年)、さらにシリーズの総集編「スケバン刑事 SAGA」(1988年)の3作が特集放送される。

【映画サイト「スカパー!映画の空」とのコラボ記事】

初代・斉藤由貴――人気アイドルがまさかのスケバン役

「スケバン刑事」シリーズは和田慎二の漫画を原作に、特命刑事として犯罪に立ち向かう女子高生・麻宮サキの活躍を描いた物語だ。サキの武器は、敵を倒し、縛り上げ、時には飛行機まで撃墜するなど、万能な働きを見せる重合金製ヨーヨーただひとつ。毎回、クライマックスではヨーヨーの片面をパカッと開き、「水戸黄門」の印籠のように警察官の証「桜の代紋」を犯罪者に見せ、名乗りを上げるのがお約束だ。

元スケバンのサキ(斉藤)は、殺人罪で死刑宣告を受けた母を救うため特命刑事に。
暗闇司令(長門裕之)の指揮の下、ヨーヨーで悪を討つ(「スケバン刑事SAGA」)

その記念すべき歴史の第一歩を記したのが、1985年に放送された斉藤由貴主演のテレビドラマ「スケバン刑事」だ。当時、アイドルとして人気急上昇中だった斉藤が、セーラー服で犯罪者相手に「スケバンまで張ったこの麻宮サキが、何の因果か落ちぶれて、今じゃマッポの手先。笑いたければ笑うがいいさ」と啖呵を切るギャップが受けてお茶の間で好評を博す。愁いを帯びた表情で孤独な戦いを繰り広げ、わずか半年の放送で高い人気を獲得し、シリーズの基礎を築いた。

二代目・南野陽子――運動が苦手なアイドルが大奮闘、映画化へ躍進

五代陽子(南野)は、幼い頃より鉄仮面を被せられ育った設定。
その鉄仮面がヨーヨーで割られ、黒髪を靡かせ素顔をさらすシーンが有名(「スケバン刑事SAGA」)

その人気を受けて1985~86年に放送された第2弾「スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説」に主演したのが「ナンノ」こと南野陽子。二代目・麻宮サキを襲名し、初代からヨーヨーを受け継いだ五代陽子は、出生の秘密を背負いながら戦い続ける健気な生き様に、南野の持ち味である朗らかな明るさが加わり、キャラクターの魅力がさらに高まる。出身を高知に設定し、「鉄仮面に顔を奪われ、十と七とせ、生まれの証しさえ立たんこのあてぇ(私)が何の因果かマッポの手先」と初代の口上を土佐弁にアレンジしたことでインパクトがアップ。さらに「おまんら、許さんぜよ!」の決め台詞も注目を集め、ものまねが大流行した。

映画『スケバン刑事』より。
学生たちを洗脳し殺人兵器化する三晃学園=地獄城の陰謀を、陽子たち5人のスケバン戦士が打ち砕く

また、二代目サキにはビー玉を武器にする「ビー玉のお京」こと中村京子(相楽ハル子)、袱紗(ふくさ:茶道の道具)と琴の爪が武器のお嬢様、矢島雪乃(演じるのは、当時人気だったおニャン子クラブのメンバー、吉沢秋絵)という仲間も誕生。3人で戦うようになったことも人気に拍車をかけた。

タイトルが斉藤版と同じで混乱するかもしれないが、今回放送される『スケバン刑事』は、この南野版を元にした劇場版だ。メインキャストが総登場し、スケールアップしたストーリーとアクションが繰り広げられる。

実は南野自身、当時から「運動は苦手」と公言し、最初は前転すらできなかったという。そのため、テレビシリーズでは派手なアクションをスタントマンが演じることが多かった。しかし、この劇場版では、多くのアクションを自ら演じる成長ぶりを披露(それを効果的に見せるカメラワークが素晴らしい)。伊武雅刀扮するラスボスとの燃え盛る炎(本物)の中でのバトル、大爆発する敵アジトから脱出するクライマックス(途中で後ろを振り向くのは、南野のアドリブ)は必見だ。また、本作でサキが使用する「新超密度合金製ヨーヨー」は今回限りの秘密兵器で、南野自身が考案したその投擲フォームにも注目。

そんなハードアクションに挑む一方、サキが仲間たちと手作りのカレーライスを食べながら、和気あいあいと作戦会議をする微笑ましい姿も、女子高生という設定を生かした本作ならではの見どころ。この二代目サキ・陽子については、原作者の和田も「原作のニュアンスに最も近い」と太鼓判を押しており、映画序盤、サキがヨーヨーを買う露店の店主としてカメオ出演している。

三代目・浅香唯――三姉妹の絆と連携アクションで魅了、映画で一大バトル

初代、二代目とは異なり天真爛漫さが際立つ風間唯(浅香)。風魔忍者の末裔だが、当初はヨーヨーが上手に使えず特訓する姿が描かれるなど、3人のなかでもより努力して成長を遂げた(写真は『風間三姉妹の逆襲』)

そして斉藤、南野の後を継ぎ、1986~87年に放送された「スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇」で三代目・麻宮サキこと風間唯を演じたのが浅香唯。浅香は身体能力の高さを生かし、木に登ったり、ロープにぶら下がったりと、生き生きとしたサキを演じた。仲間が増えた前作を発展させ「風間三姉妹」としたことも特徴。唯の2人の姉、金属製の折り鶴が武器の長女・結花(大西結花)、リリアンの編み棒を自在に操る次女・由真(中村由真)と共に戦う。

『風間三姉妹の逆襲』はテレビシリーズ終了の翌年2月に公開。
新たに学生刑事との対立と、その背後でうごめく陰謀をめぐるドラマが展開する

劇場版第2作『スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲』は、そのタイトルの通り、三姉妹が活躍する。活発な浅香に相応しく、権力の手先となった唯が、自由を求める若者たちを弾圧する衝撃的な幕開けから、二転三転するストーリーが見どころだ。乗馬シーンをはじめ、水中に飛び込んだり、装甲車相手に大バトルを繰り広げたりとアクションもふんだんに盛り込まれ、「冒険活劇」と呼ぶに相応しい仕上がりとなっている。

なお、浅香は南野主演の映画『スケバン刑事』にも唯役で出演し、シリーズ史上唯一、2人のスケバン刑事が共闘した作品となっている。テレビシリーズ序盤で出演した『スケバン刑事』と完結後の『風間三姉妹の逆襲』で、浅香の成長ぶりを確認する楽しみ方もある。

映画『スケバン刑事』より。二代目サキ・陽子(南野)の背後に三代目サキ・唯(浅香)の立ち姿が確認できる

テレビシリーズの後日談である劇場版2作は、それぞれ単独で楽しむことが可能。主題歌も本人たちが歌っており、南野、浅香それぞれの魅力が詰まった決定版とも言える。また、劇場版に登場しない初代サキの斉藤については、総集編「スケバン刑事 SAGA」でその魅力を確かめてほしい。いずれも、リアルタイム世代が当時を振り返る絶好の機会なのはもちろん、当時を知らない世代にも入門編としておすすめだ。

斉藤、南野、浅香の3人はその後、いずれもトップアイドルへと駆け上がり、今も現役で活躍中。浮き沈みの激しい芸能界で、他のアイドルたちと同じように時代と共に消えていかなかったのは、彼女たちを起用した「スケバン刑事」に先見の明があった証と言えるのではないだろうか。役者の身体能力が向上し、アクションも格段の進化を遂げた現代とは比較にならないかもしれない。だが、女性アイドルの主演映画といえばラブストーリーが定番だった時代、先駆者として果敢にアクションに挑んだ彼女たちの奮闘は、長く語り継がれるべきだろう。ぜひこの機会に、一人でも多く「スケバン刑事」の魅力に触れていただければ幸いだ。

文=井上健一(映画サイト「スカパー!映画の空」より転載)

井上健一:埼玉県出身、会社員を経て、映画を中心に執筆・取材を行うライターに。主な執筆媒体は「月刊SCREEN」、「キネマ旬報」、「FLIX」など。書籍に「現代映画用語事典」(共著・キネマ旬報社)がある。

©和田慎二・東映

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<放送情報>

東映チャンネル

●スケバン刑事(映画版)
放送日時:2022年9月6日(火)11:00~、19日(月)20:00~

●スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲
放送日時:2022年9月7日(水)11:00~、20日(火)20:00~

●スケバン刑事 SAGA
放送日時:2022年9月8日(木)11:00~、21日(水)20:00~

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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