ハライチ岩井勇気が語る!『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』に見るシリーズの進化と系譜

ハライチ岩井勇気が語る!『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』に見るシリーズの進化と系譜
アニメ放送30周年記念プロジェクトとして制作された『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』

様々なアニメに精通しているハライチの岩井勇気さんが、「大人にこそ観てほしいアニメ作品」を紹介するこの企画。第6回は2019年に公開された『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』。原作は1985年から「週刊少年ジャンプ」にて連載が開始された北条司の「シティーハンター」。1987年にはTVアニメがスタートし、1999年のTVスペシャルまで至る大ヒットシリーズとなった伝説的な作品だ。アニメ放送30周年記念プロジェクトとして制作された本作の見どころや、主人公・冴羽獠の魅力について語ってもらった。

【映画サイト「スカパー!映画の空」とのコラボ記事】

大人になって観るとわかる、獠と香の一言では言い表せない関係性

「シティーハンター」のアニメを最初に見たのは小学生の頃。夕方にTVで再放送をやっていたんです。裏社会で最強と言われる始末屋(スイーパー)、シティーハンターこと冴羽獠が、相棒の槇村香や仲間と共に様々な事件を解決していく物語。まず、初期のエピソードで、獠が敵を倒す時に、周囲の人への被害を避けるため、自分の左の手のひらを貫通させながら銃を撃つことで、弾の威力を弱めるというシーンがあって。こんなハードな話を、子どもが見る時間帯にやるんだ!と思って、すごく衝撃的でしたね。コミカルなシーンが多いんですけど、要所要所のキメのシーンはとてもシリアスだったので、大人のアニメだなぁという印象がありました。

『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』が公開された際は、せっかくだからとTOHOシネマズ新宿に観に行ったんです。舞台が新宿ですし、劇中で描かれている新宿の街並みが、現代のリアルな新宿そのものなんですよ。冒頭のシーンから、TOHOシネマズの辺りでカーチェイスをやっていたので、いま、実際に外で起こっているんじゃないか!?っていう感覚になりました(笑)。ゴールデン街の描写や、オネエの人たちがちゃんと登場するところも懐かしかったですね。みんなが獠に協力してくれる感じがすごくよかった。獠がいまも変わらず「新宿の顔」だということが垣間見えて、心が沸き立ちました。

そうやって昔からのファンを喜ばせてくれる一方で、物語の設定などは、ちゃんと現代を取り入れています。獠と香が仕事の依頼を受けるために利用していた新宿東口伝言板はなくなっていて、代わりにスマホのARでの伝言板になっているのもおもしろかったです。

 
リアルな新宿の街並みも描かれている

大人になって本作を観ると、やっぱり子どもの頃とは見え方が違っていて。獠の表面上ではない真のかっこよさも、獠と香の熟年の恋愛みたいな感じもよくわかるようになりました。例えば、獠って、緊迫感のあるシリアスなシーンになった時に、わざとふざけて緊張を緩めるような明るさを出すんですよね。それが、ただ思うがままに明るく振舞っているというよりは、ちゃんと周りを見て、仲間の緊張を和らげるためにやっているんだと感じる時があって。基本的にはスケベだし、おちゃらけた部分もあるけど、実はすごく包容力があるところが獠の魅力だなぁと思いました。

しっかり者の香は一見、獠の保護者的な立ち位置に見えますけど、本作では幼なじみの御国真司と2人で食事に行くことを獠に言ってみたりして。獠の嫉妬心をちょっと煽ろうとする感じがかわいらしかったですね。強気ながらも、獠に甘えるような乙女なところが、香にはあるので。

獠と香の関係が明確な恋愛描写として描かれないところも「シティーハンター」の特徴かもしれないですね。最近の恋愛アニメだと、視聴者がキャラクター同士の想いをすべて把握したうえで物語が進むことが多いので、「くっついちゃえばいいのに」と思うくらい、わかりやすく描いているケースが多いんですよ。だけど、獠と香の関係はわかりにくい。この2人だけがわかっている関係性があって、そこには視聴者も触れられないんです。わからないところがあるからこそ、かっこいいなって思える。獠はやっぱり大人なんですよね。言葉足らずなところもあるけど、全部言うのは野暮だ、っていうかっこよさもあって。まだ香は、そのへんに気づいていないんですけど(笑)。

香が100tハンマーで獠を叩くおなじみのシーンも

ファン歓喜のおなじみのシーンやまさかのコラボも実現!

獠が香にハンマーで叩かれたり、布団に簀巻きにされたりするお約束のシーンもたっぷりあって、「シティーハンター」を見ているなぁ~という感じがすごくしました。本作は90分強の上映時間の中に、そういうザ・シティーハンターな要素をあれこれ盛り込んでくれていたので、観ていてグッときましたね。

同じ原作者の「キャッツ・アイ」の三姉妹が出てくるシーンも、おぉ!って、湧きました。「キャッツ・アイ」のアニメも再放送で見ていたので。印象的だったのは、ヘリで上空にいる時に、香が「裏の稼業なのに、いつもそんな格好なんですか?」って、レオタード姿の三姉妹に聞くシーン(笑)。その一言で、獠と香の世界観とキャッツ・アイの世界観がすっと混ざったような感じがして。そこも昔のファンを楽しませてくれるなぁと思いました。

 
「キャッツ・アイ」の三姉妹とも共闘!

TVアニメ終了から20年経っていますが、冴羽獠を演じた神谷明さんの声は昔のイメージのままという感じでした。コミカルなお芝居は、神谷さんのほかのキャラクターでもけっこうありますけど、あの明るいスケベな感じが出ているのは、獠のキャラが一番いいですね。

香の幼なじみである御国役は山寺宏一さん。山寺さんが新人声優だった頃に、「シティーハンター」のTVシリーズに「男A」などのモブキャラでずっと出演していたことを知ると、やっぱり歴史を感じますね。武器商人のヴィンス・イングラード役も大御所の大塚芳忠さんですし、オリジナルキャストの続投も含め、声優さんがすごく強い作品なので、大人のアニメファンも納得するのではないでしょうか。

本作のエンディング曲はTVシリーズの第1期と同じTM NETWORKの「Get Wild」です。名曲ぞろいの「シティーハンター」はアニメとJ-POPのコラボレーションの先駆けでもあったと思うのですが、このところ、80~90年代のJ-POPが最先端になっているので、古いというより、むしろ1周回って、おしゃれな印象を受けました。音楽の面でも、いいタイミングで公開された劇場版だったんじゃないかなと。

普段はおちゃらけているけど、決める時は決めるのが、獠のカッコよさ

「シティーハンター」がこれほど長く愛されている理由は、一番の魅力の部分がブレないところだと思います。冴羽獠のキャラクターもブレないし、時代に合わせつつも、アニメの世界観をガラッと変えることもない。制作陣が「シティーハンター」というジャンルを大切に守り続けているからこそ、ファンも離れていかないんだと思います。今後も新作の劇場版が製作されるというニュースが発表されているので、ふざけているけど、かっこいい、人間味のある冴羽獠にまた会えることを期待しています。

(映画サイト「スカパー!映画の空」より転載)

岩井勇気:1986年生まれ。幼稚園からの幼なじみである澤部佑とのお笑いコンビ「ハライチ」として活躍。初のエッセイ集「僕の人生には事件が起きない」が17刷り重版中。放送されるアニメ作品はすべてチェックし、テレビ朝日で放送中の「まんが未知」など、漫画やアニメに関する番組でもMCを務める。

©北条司/コアミックス・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会

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<放送情報>

WOWOWプラス

●劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>
放送日時:2022年9月17日(土)22:45~、25日(日)11:15~

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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