若き日の織田裕二が原田知世の相手役。海底の財宝をめぐる真夏の冒険ラブストーリー「彼女が水着にきがえたら」が初BD化

若き日の織田裕二が原田知世の相手役。海底の財宝をめぐる真夏の冒険ラブストーリー「彼女が水着にきがえたら」が初BD化

時はバブル前夜、若者たちから「暗い、ダサい、つまらない」と敬遠されがちだった当時の日本映画界に彗星のように現れ、多くの観客を映画館に呼び寄せるスマッシュヒットとなった「私をスキーに連れてって」(1987年)。その2年後、同じ馬場康夫監督×一色伸幸脚本×原田知世主演により製作された“ホイチョイ・ムービー”第2弾が、本作「彼女が水着にきがえたら」である。

「私をスキーに連れてって」から一転、夏の海で出会った男女の恋模様

馬場が代表をつとめる創作集団“ホイチョイ・プロダクション”は、80年代初頭から『見栄講座』『気まぐれコンセプト』などの著作やテレビバラエティーの企画・制作などを通じて、最新のトレンドや広告業界の流行り廃りを誇張して取り上げ人気を集めてきた。もともと学生時代からの遊び仲間の延長であり、自主映画制作も経験していた彼らにとって、「私をスキーに連れてって」はまさに長年の夢を実現させた企画だったのだ。

「スキー」の成功により第2作のチャンスを得た彼らは、真冬のゲレンデを舞台にした前作を180度反転させ、今度は真夏の海を舞台に、スキューバダイビングを中心とするマリンレジャーを題材に選んだ。『恋人はサンタクロース』など松任谷由実のヒットソングが全編を彩った「スキー」に対し、この「彼女が水着にきがえたら」では、桑田佳祐が本作のために書き下ろした主題歌『さよならベイビー』をはじめ、『思い過ごしも恋のうち』『みんなのうた』などサザンオールスターズのヒット曲が次々と流れる。

マリンレジャーのさまざまなシーンで活躍する最新アイテムがふんだんに登場するのも、「スキー」と同様のアプローチ。中でも印象的に使われているのは個人で操縦する小型の水中スクーターで、プロペラの回転を推進力に海中を自在に動き回るダイバーたちの姿を捉えた一連の水中撮影によるシークエンスは、BGMの『ミス・ブランニュー・デイ』とも相まって、実に爽快な映像に仕上がっている。

ブレイク前夜、若き日の織田裕二が原田知世の相手役

原田知世の本作での役柄は、アパレルメーカーに勤めるOLの田中真理子。ダイビング初心者の彼女は同僚の恭世(伊藤かずえ)に誘われ相模湾を航行するクルーザーパーティーに参加するが、ダイビングの途中で同行者たちとはぐれてしまい、危うく遭難しかける。真理子は近くを通りかかった別のヨットに救助され、そこで出会ったのが織田裕二演じる青年・吉岡文男だった。

偶然出会った男女が不器用なアプローチを繰り返しながらやがて惹かれ合っていく姿を描く“ボーイ・ミーツ・ガール”の主題は、これも「スキー」と同じ構造。前作で相手役をつとめた三上博史はヒットをきっかけに人気スターへの道を歩んだが、本作出演時点での織田裕二も俳優デビューからわずか2年、ドラマ『東京ラブストーリー』で一躍人気者となるのは「水着」公開の1年半後で、まさにブレイク前夜だった。ナイーブで、素直に自分の気持ちを表現できない不器用な若者像は、この時期の織田のタイプキャスト的なキャラクターではあるものの、どことなくやんちゃな佇まいとまだ粗削りな芝居は、今見直すととても新鮮だ。

主人公男女の造形、出会いから結ばれるまでの物語、さらに冬と夏、山と海、スキーとスキューバダイビングを反転させたシチュエーション、最新のトレンドやアイテムの紹介と、徹底して「スキー」の再現を試みた「彼女が水着にきがえたら」は、興行的には実は「スキー」以上の成績を収めているのだが、その数字とは裏腹に、「スキー」ほどのインパクトは獲得できなかった。その要因のひとつに、「水着」の物語が若い男女ふたりの出会いの直後から微妙にシフトチェンジしていく点が挙げられる。

真理子は吉岡に救助される前、海底に沈んだ飛行機の残骸を発見していたのだが、その話を聞いてヨットの所有者である大塚(谷啓)は色めき立つ。実は彼女が見つけた機体は、朝鮮戦争の時代に巨額の財宝を積んだまま相模湾に墜落したと言われている軍用機の特徴と一致しており、大塚は長年その財宝を探し続けていたのだ。吉岡もその捜索をずっと手伝っていて、さらに真理子たちが参加したクルーザーパーティーの主催者・山口(伊武雅刀)もまた財宝を探している大塚たちのライバルだった。ここから映画は、財宝をめぐる吉岡・大塚と山口たちとの競争、さらに密かに財宝の横取りを狙う謎の中国人一味も絡んだ大争奪戦へと発展していく。

ホイチョイ・プロダクションが本当に作りたかった映画を目指した

実を言うとこの「彼女が水着にきがえたら」は、かつて馬場監督らホイチョイのメンバーがアマチュア時代に撮った「イパネマの娘」という自主映画をベースにしていて、馬場によれば「相模湾にお宝が沈んでいてそれを探すというプロット」はまったく同じものだという。メインの宝探しがまずあり、それに「スキー」で成功した方法論を当てはめて肉付けしていくという順番で、物語が作られたのだろう。結果、馬場ら製作陣が「スキー」と同様にいたずらにトレンドを追い求めることよりも、財宝探しに熱中する中年オヤジたちの遅れてきた青春に主眼を置いているかに見える映画ができ上がった。そのため原田知世と織田裕二のふたりが、ややもすると傍観者的なポジションに追いやられてしまったような印象もあったのだが、今回改めて本作を見直してみると、妨害工作に遭って大怪我を負った大塚に代わり財宝を探すのはあくまで吉岡であり、彼をサポートする真理子との二人行、さらに中国人一味に追われた彼らが繰り広げるボート&水上バイクチェイスのクライマックスに至るまで、若いふたりが物語の主体であることには間違いなかった。

「彼女が水着にきがえたら」は、馬場監督らホイチョイ・プロダクションが本当に作りたかった映画に正直に向かおうとして生まれた作品であり、そこに本作の長所も短所も凝縮されていると言っていい。このあと、再び2年後の1991年に製作されたホイチョイ・ムービー第3弾の「波の数だけ抱きしめて」は、1982年夏の湘南という近過去を舞台にミニFM局開設に打ち込む若者たちの姿を描き、かつて若者だった男女の“青春の終わり”を主題に据えている。主演は原田知世に代わり中山美穂、相手役には「水着」に続き織田裕二をキャスティング。80年代初頭の洋楽ヒット曲+松任谷由実のナンバーが画面を彩ることで「スキー」への回帰も匂わせつつ、馬場監督自身が青春期を過ごした当時のノスタルジックな空気感が全編に漂う“痛み”の物語は、「スキー」の成功要因と「水着」に込めた作り手たちの思いを、どうにかひとつにまとめようと試行錯誤した結果のようにも思われる。

「スキー」のファーストインパクトに比べるとあまり語られる機会が少ない「彼女が水着にきがえたら」だが、日本映画界の変革期を象徴する新しい力に満ちた“ホイチョイ三部作”は、今も一見の価値がある作品群だ。

文=進藤良彦/制作=キネマ旬報社

ホイチョイ・ムービー3部作

「彼女が水着にきがえたら」(ホイチョイ・ムービー第2弾)

●9月7日初Blu-rayリリース(DVDリリース中)
Blu-rayの詳細情報はこちら

●Blu-ray:¥4,180(税込)DVD:¥3,300(税込)
●日本/カラー/本編103分
●監督:馬場康夫 脚本:一色伸幸
●出演:原田知世、織田裕二、伊藤かずえ、竹内 力、田中美佐子、谷 啓、伊武雅刀
●発売元::フジテレビジョン・小学館・ポニーキャニオン 販売元:ポニーキャニオン
©1989 フジテレビ・小学館

「私をスキーに連れてって」(ホイチョイ・ムービー第1弾)

●Blu-ray&DVDリリース中
Blu-rayの詳細情報はこちら

●Blu-ray:¥4,180(税込)DVD:¥3,300(税込)
●日本/カラー/本編98分
●監督:馬場康夫 脚本:一色伸幸
●出演:原田知世、三上博史、原田貴和子、沖田浩之、高橋ひとみ、布施博、鳥越マリ、飛田ゆき乃、竹中直人、田中邦衛
●発売元::フジテレビジョン・小学館・ポニーキャニオン 販売元:ポニーキャニオン
©1987 フジテレビ・小学館

「波の数だけ抱きしめて」(ホイチョイ・ムービー第3弾)

●Blu-ray&DVDリリース中
Blu-rayの詳細情報はこちら

●Blu-ray:¥5,170(税込)DVD:¥4,180(税込)
●日本/カラー/本編104分
●監督:馬場康夫 脚本:一色伸幸
●出演:中山美穂、織田裕二、松下由樹、別所哲也、阪田マサノブ、勝村政信
●発売元::フジテレビジョン・小学館・ポニーキャニオン 販売元:ポニーキャニオン
©1991フジテレビ/小学館

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