渋くなりたいならこの男を見習え! 身に纏う空気感で語るチャールズ・ブロンソンの魅力

渋くなりたいならこの男を見習え! 身に纏う空気感で語るチャールズ・ブロンソンの魅力
野性的な渋さを放つチャールズ・ブロンソンの魅力に迫る(『雨の訪問者』)

渋い男になりたい…と思い続けてはや40余年。あるいはそれ以上かもしれないが、渋さの片鱗さえ身に付けられないまま、ひたすら時間を浪費してきた。そもそも渋さとは何か。渋いと言われるための条件は何なのか。それがわからない。どうすれば渋くなれるのか、そのことを真面目に考えなかったせいでこの体たらくなのだろう。「渋さ」の定義はいまでも曖昧なままだが、例えばチャールズ・ブロンソンには、その答えの、少なくとも一部があるのではなかろうか。

【映画サイト「スカパー!映画の空」とのコラボ記事】

笑顔を見せない無骨な男だが、なぜか目が離せなくなるチャールズ・ブロンソン

ブロンソンに初めて出会ったのは、おそらく80年代初頭に日曜洋画劇場で観た『狼よさらば』(1974年)だったと思う。暴漢どもに妻を殺され、娘を廃人にされた建築家ポール・カージー(ブロンソン)が、自警団になって夜のニューヨークを跋扈する。年季の入ったグローブのような顔をして復讐の道をひた走るブロンソンが、作品の陰鬱なムードとも相まってどうにも恐ろしかった。

その後もこの男にはテレビでよく会った。ロバート・デュヴァルと共演の脱獄アクション『ブレイクアウト』(1975年)、ウォルター・ヒルの監督デビュー作『ストリートファイター』(1975年)。あるいは昼間のTBSで何度か観たはずの『ホワイト・バッファロー』(1977年)。同作はブロンソンが馬鹿でかいバッファローと死闘を繰り広げる西部劇で、毎度ついつい観てしまうのだが、いつでも黒くて太そうな髪を生やし、だいたい仏頂面をした主演俳優の魅力が子どもにはよくわからなかった。

無実の罪で投獄された男を救おうとする一匹狼の何でも屋の活躍を描く『ブレイクアウト(1975)』

ブロンソンはそれから独立系アクション映画の雄、キャノン・フィルムズとがっぷり四つに組んで、主に「狼よさらば」シリーズでもって気を吐くことになる。ポール・カージーが行く先々で町のゴミどもを血祭りにあげる連作は『ロサンゼルス』(1982年)に『スーパー・マグナム』(1985年)、『バトルガンM-16』(1987年)、『DEATH WISH/キング・オブ・リベンジ(別題:狼よさらば/地獄のリベンジャー)』(1994年)と続いた。少なくとも邦題はそれぞれ最高で、特に『バトルガンM-16』あたりはこのタイトルだけを眺めて一晩飲めるぐらいだ。とはいえこの親父はいつでも奥目の細目で何を考えているのか知れず、だいたい不愛想にガンをブッ放しており、やはりその有難味はどうにも実感しかねた。70年代生まれの自分にとって、それがリアルタイムのチャールズ・ブロンソン像だった。

アラン・ドロンや三船敏郎とも一線を画す唯一無二の「渋さ」

ところがある時、自分が生まれる以前のブロンソン作品に触れて衝撃を受けた。1968年の『さらば友よ』である。マルセイユで出会ったアラン・ドロン演じるフランス軍人と事あるごとにいがみ合い、成り行きで結託して金庫破りの大仕事に打って出ることになる米軍人役のブロンソン。ドロンは役柄上、なんだか苦悩や屈託を山ほど抱えている。この人はいま見ても腰が抜けるほどの色男なのだが、その異常なカリスマ的存在を超えてこちらを魅了してくるのが誰であろうブロンソンなのである。

ブロンソンが名優アラン・ドロンと共演した『さらば友よ [英語版]』

故郷を遠く離れたマルセイユでブラブラしつつ、そろそろ一山当てようと仕事師を集めている悪党ブロンソン。フランス軍人の軍医としてのキャリアに目を付けてしつこく仲間に引き入れようとするのだが毎度つれなくされ、思わず殴り合ったり、しまいには2人して半裸で金庫に閉じ込められたりする。

そこに至るまでのブロンソンはだいたい人を食った様子で、常に憂いを帯びたドロンを尻目に何とも他愛のない遊びに興じている。おそらく人並みに悩み苦しみもしただろうが、そうしたあれこれは心の襞に隠して、飄々とした態度を取り続ける。ブロンソンはこの時からもうガンモドキのような顔をして何を考えているのかわからない。だがそうした立ち居振る舞いこそが、もしかすると「渋さ」ということなのかもしれない。

あれやこれやの果てにとうとう逮捕されたブロンソンが、こちらは放免となったドロンとすれ違い、しかしまるで他人のような顔をして連行されていく『さらば友よ』のラストシーン。もう少しばかりドヤ顔をしてもよさそうなものだが、ブロンソンは誰とも目を合わせず、やはり他人のふりをしたドロンの差し出したマッチの火でたばこを一服しながら黙って別れていく。

このさりげなさはどうだろう。この過剰にドラマティックな場面において、ブロンソンは表情を一つも変えない。し…、渋い!と言わざるを得ない。若い時分には理解できなかった「渋さ」という概念。見た目上の格好良さなどはこの際問題ではない。そう悟り、かつてブロンソンの良さがもう一つわからないなどと言っていた己の不明を恥じるのである。

ブロンソンが名優アラン・ドロンと共演した『さらば友よ [英語版]』

ブロンソンとドロンはその後、1971年の西部劇『レッド・サン』で再度顔を合わせた。まさかの三船敏郎まで加わった本作でも、ブロンソンは日仏のメガスターを向こうに回して一人存分に「渋さ」担当を務めている。いついかなる時でも強面を崩さないこと。つらさや悲しささえ、心の奥底にしまい込むこと。何でも黙ってやってのけること。それが渋い奴の条件なのではないか。

ブロンソンにドロン、三船敏郎までが共演した娯楽西部劇『レッド・サン』

『雨の訪問者』(1970年)や『バラキ』(1972年)に『マジェスティック』(1974年)。70年代のブロンソン作品はいつでもそんなことを教えてくれる。1972年の『メカニック』は、2011年にジェイソン・ステイサム主演でリメイクされた。現代風に随分派手な味付けがなされてはいたものの、概ね飄々としているステイサムには確かにブロンソン主義というべき渋さが受け継がれていた。

アメリカ南西部に暮らす農場経営の男が、無法者たちへ正義の鉄拳を叩き込む『マジェスティック』

ショーン・ペンは監督デビュー作『インディアン・ランナー』(1991年)にブロンソンを起用している。ここで扮したのはヴィゴ・モーテンセンとデヴィッド・モースという、世にも悪い顔をした兄弟の父親だ。人には言えない哀しみを胸に秘め、最後には黙って死んでいく。当時のブロンソンは前述の通り、キャノン・フィルムズで街のダニを皆殺しにする映画を乱発していた。これではいけない、とペンも思ったのではないか。全盛期のブロンソンはそんな書き割りのようなキャラクターを演じてはいなかった。だからこそ強面の、それこそ「渋い男」が抱えた苦しみをこそ、ペンは再び世に問おうとしたのではなかったのだろうか?

チャールズ・ブロンソンが没してからもうすぐ20年。我々の一人一人が、その魅力と価値を再確認すべき時が来ている。

文=てらさわホーク(映画サイト「スカパー!映画の空」より転載)

てらさわホーク:ライター。著書に「シュワルツェネッガー主義」(洋泉社)、「マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?」(イースト・プレス)、共著に「ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!」(イースト・プレス)など。ライブラリーをふと見れば、なんだかんだアクション映画が8割を占める。

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<放送情報>

WOWOWプラス

●さらば友よ [英語版]
放送日時:2022年11月3日(木・祝)6:00~、14日(月)9:00~

●雨の訪問者
放送日時:2022年11月3日(木・祝)8:00~、15日(火)9:00~

●レッド・サン
放送日時:2022年11月3日(木・祝)10:15~、16日(水)8:00~

●バラキ
放送日時:2022年11月3日(木・祝)12:15~、17日(木)8:05~

●ブレイクアウト(1975)
放送日時:2022年11月3日(木・祝)14:30~、28日(月)23:15~

ザ・シネマ

●荒野の七人
放送日時:2022年11月5日(土)10:00~、13日(日)10:00~

●(吹)荒野の七人
放送日時:2022年11月17日(木)12:30~

●マジェスティック(1974)
放送日時:2022年11月28日(月)23:30~

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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