その「遭遇」は神の啓示か、未知の侵略者か?先の読めないSFスリラー『デウス/侵略』

その「遭遇」は神の啓示か、未知の侵略者か?先の読めないSFスリラー『デウス/侵略』

人口増加と自然破壊によって壊滅寸前となった近未来の地球を離れ、火星の軌道に突如出現した巨大な黒い球体の解明に向かう調査チームの運命を描いたSFサスペンス『デウス/侵略』が、11月9日にDVDでリリースされた。

謎の黒い球体が人類に向けて放つ「DEUS=神」のメッセージの真意とは

「地球が死にかけている。しかし私たちはその現実から目を伏せていた」という、遠い未来ではない「今」に向けられたかのような、一人の女性の独白から始まる本作。母親と愛娘を自動車事故で亡くし、同乗していた自分だけが生き延びたことに罪悪感を抱えながら、遠く離れた火星への探査に志願する天体物理学者・カーラが呟いた言葉だ。

彼女をはじめとする6名の観測隊員が、宇宙船に乗り込み地球を離れて8か月。ようやく目的の地まで到達した彼らの元に、謎の球体から発信された一つのメッセージが届く。AIの解析によると、それは「DEUS=神」という文字列と判明。球体の中に存在しているだろう未知の生命体は、人類の脅威となる「侵略者」なのか、それとも崩壊寸前の地球を救う「救世主」なのか…?

冒頭から黙示録的に浮かび上がる荒廃した街の光景と、地球を遠くから見つめるような球体の遠景、そして球体に向かう宇宙船を捉えた映像を重ね、観る者を「別の世界」へと引き寄せる磁力を放つ本作の脚本・監督を手掛けたのは、イギリスを拠点にデジタルアーティストとして活動するスティーブ・ストーン。低予算での製作とは思えないハイエンドな視覚効果と、緊張感に満ちた心理描写を融合して壮大な宇宙の謎へと導いていく演出は、SF映画を深く愛する人ならではの細やかな目配せが、随所で光っている。

主人公のカーラを演じるのは、TVシリーズ『スターゲイト SG-1』などに出演した個性派女優、クラウディア・ブラック。彼女の中で渦巻く宇宙の謎を解き明かしたいと願う科学者としての使命感と、事故で亡くした家族に「再会」したいという心の痛み、その相反する感情が物語の「要」となって牽引していくのも、本作の大きな見どころだ。

SF映画好きのマニア心をくすぐる「元ネタ」探しの楽しさも

宇宙船内の閉ざされた空間で展開される緊迫した乗組員同士のやり取りと、緻密なビジュアルの数々を見ているうちに、この手の映画が好きな人なら「この場面、あれが元ネタ…?」と随所に仕掛けられたオマージュ元を探りたくなるのも、本作の楽しみの一つだ。

地球を遠く離れた末に、長い冷凍睡眠から目覚めた乗組員たちの疲れ果てた姿は明らかに『エイリアン』での一場面を想起させるし、宇宙船に向けて謎のメッセージを放つ黒い球体は、もちろん『2001年宇宙の旅』で人類を導いた黒い石碑「モノリス」が発想の源だろう。更に宇宙船内で乗組員が幻影に悩まされ正気を失っていく展開は、ファンの間でカルト的な人気を誇るポール・W・S・アンダーソン監督のSFホラー『イベント・ホライゾン』を思い出さずにはいられないし、未来の人類が迎えるディストピア的な終末は、これも長く人気を誇る名作『ソイレント・グリーン』辺りを連想するなど、過去の名作やマニア好みなSF映画の要素が90分という尺の中にギッシリと詰められている。「次はいったい何が来る…?」と後の展開を予想しながら「闇鍋」的な魅力を楽しむのも、ファンとしては十分に「有り」な鑑賞法だ。

人間は「神」として君臨することが出来るのか?そして未来への希望は?

しかし本作が単にSFファンのオタク心をくすぐるビジュアルや、各場面の元ネタ探しを誘発することだけが目的の作品かと言えば、それは大きな間違いだ。むしろ本作はこの手の映画に長く見慣れ「多分…こういう展開でしょ?」と先読みをしがちな人ほど、後半の意外な展開に少なからず驚きを覚えるだろう。

冒頭の場面で主人公のカーラは亡き母が生前に遺した、こんな言葉を回想する。「海に漂流した5人の漁師が、小さな船の中で3人分しか残っていない食料を分けることになった。彼らは、誰を犠牲にすると思う?」…この一見、本編とは無関係と思われた例え話が、クライマックスで迎える「ある決断」と繋がったときに、観ている我々もカーラと同様この宇宙船が向かう「真の目的」に気付き、強烈なジレンマに襲われずにはいられなくなる。

その真相はもちろん本編を見てのお楽しみだが、最終的に見えてくる「人類は、神として君臨する資格があるのか?」という問い掛けは、この現実を生きる我々にとっても実にタイムリーな問題として映るはずだ。そして様々な議論に対して「白」か「黒」かの選択を強いられることが多い昨今、もう一つの「可能性」を考えることの大切さを提示してくる本作の眼差しは、仄かな未来への「希望」を感じさせるメッセージとしても、さり気なく深い。

もちろんメジャー資本の大作では決して味わえない「インディーズ系」SF映画ならではの小粋な目配せを感じさせるエンディングも含め、肩の凝らないスリルや興奮も保証済みの本作。本編終了後のエンドロールも最後まで止めずに鑑賞すると、更にニヤッと楽しめる仕掛けも用意されている。作り手たちの「遊び心」と「誠実さ」が込められた満腹度の高い1本として、ぜひ良質の「掘り出し物」を求める映画ファンにもお勧めしたい。

文=Takeman 制作=キネマ旬報社

 

 

『デウス/侵略』

●11月9日(水)DVDリリース(同日レンタル開始)
▶DVDの詳細情報はこちら

●DVD:4,378円(税込)
【映像特典】
・日本版予告編

●2022年/イギリス/本編90分
●監督・脚本:スティーブ・ストーン
●出演:クラウディア・ブラック、デヴィッド・オハラ、フィル・デイヴィス
●発売・販売元:ツイン
©DEUSPRODUCTIONS Limited 2022. ALL RIGHTS RESERVED

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