日本公演も間近!絢爛豪華な世界『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』韓国公演の様子をレポート

日本公演も間近!絢爛豪華な世界『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』韓国公演の様子をレポート
Moulin Rouge! The Musical Boston Set Photo by Matthew Murphy.

ニコール・キッドマン、ユアン・マクレガー主演で、当時日本でも話題となったバズ・ラーマン監督の映画「ムーラン・ルージュ!」(2001)。17年の時を経て、2018年に『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』としてボストンで初舞台化、2021年にトニー賞最優秀作品賞(ミュージカル部門)をはじめとする10部門を受賞した。その話題の舞台が、いよいよ日本でも今夏上演される。

望海風斗、平原綾香、井上芳雄、甲斐翔真など、全員がオーディションを経て決まったというキャストも発表となり期待が高まるが、その試金石ともなり得る、アジア初として昨年末からスタートした韓国公演の様子をレポートしたい。(本記事の写真はブロードウェイ公演時のもの)

ワクワクが積み重なって胸の高鳴りが止まらない!

『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』は、もう劇場に入った瞬間からワクワクが止まらなくなる作品だ。きらびやかでまばゆいばかりの赤、赤、赤っという感じの劇場内装飾。大きな象のオブジェや電飾のついた風車が舞台両横にど~んと構えていて、思わず「うわぁ~」と声が出てしまうほど圧倒される。そこからもう非日常の世界へ。開演10分前からプレショーが始まり、舞台には、ロートレックのムーラン・ルージュのポスターから抜け出してきたようなセクシーな踊り子や紳士に扮した俳優たちが登場して、退廃的な雰囲気を表すように、まったりとしたスローな動きでムーランルージュの世界観を作り出す。この段階で本編への期待値がグングン上がる。舞台上でのマジカルなパフォーマンスに魅い入られていると、主人公クリスチャンが現れて、彼の、幕を持ち上げていく仕草で本格的な舞台の幕が上がるのだ。そして「チャッ、チャッ、チャッ、チャッ」とリズムが刻まれる音が鳴ると、うわぁ、いよいよ始まる~と胸の高鳴りはMAXに。もう本編が始まる前までに何度ワクワクしたことか。

Original Broadway cast of Moulin Rouge! The Musical. Photo by Matthew Murphy.

つかみもパンチ力がハンパなく、踊り子たちやムーラン・ルージュの興行主ハロルド・ジドラーが現れて、フレンチカンカンが華やかに賑やかに繰り広げられ、ムーラン・ルージュの世界に一気に引き込まれていく。

マッシュ・アップ・ミュージカルの面白さ

Karen Olivo as Satine , Aaron Tveit as Christian and the company of Moulin Rouge! The Musical

2001年の原作映画は1970~90年代のメガヒットポップスで作られているが、ミュージカルでは、2001年以降新たにヒットした曲がたくさん追加されている。登場人物の想いやセリフに合わせて複数の曲を繋ぎ合わせるというマッシュ・アップ方式の曲使いで、エルトン・ジョン、シア(SIA)、ビヨンセ、レディー・ガガ、アデルなどなど70曲以上のポップソングが出てくるが、特に1幕ラスト、クリスチャンがサティーンに熱い思いを伝えるときのラブメドレーには20曲余りの曲がマッシュ・アップされている。あ、このメロディーはこれ、あのメロディーはあの曲だという具合に、おなじみの曲がちょっとづつパッチワークのように見事につなぎ合わされて出てくるのが面白くて楽しい。

個性豊かなキャラクターたちの魅力

Sahr Ngaujah as Toulouse Lautrec, Aaron Tveit as Christian and Ricky Rojas as Santiago

すでに映画を見ているという方には、登場人物たちのキャラクター設定がミュージカルではより厚みを持たせたものになっているのも嬉しく感じるところだろう。

サティーンにとってはムーラン・ルージュが自分の家だし、仲間は家族。踊り子たちみんなから慕われている姉御的存在で、経営不振のムーランルージュを救うため、また全盛期を過ぎた自分としても早くパトロンを見つけて安定したいという気持ちも相まって、公爵をパトロンにすべく奮い立つという設定だ。また映画ではそこまで描かれていなかったトゥールーズ=ロートレックも、サティーンへの恋心を秘めながら見守ってきた良き理解者として、また芸術家としての気骨を見せる場面もあって、印象に残る役どころになっている。タンゴダンサーで振付師のサンティアゴも、踊り子のニニに恋をしていて、その 2人のバックステージロマンスも展開される。ニニとサティーンとの間の情も描かれるし、ムーラン・ルージュの人々の絆にもすごくじんわりときて、という具合に、要所要所で主人公以外の見せ場もちゃんとあるのが幅広い魅力に繋がっている。

笑いと涙と胸キュンと切なさと……気持ちよく感情が動く作品

Karen Olivo as Satine and Aaron Tveit as Christian

個人的に、1幕で、クリスチャンがサティーンに自前の歌を披露する<Your Song>を歌う場面がすごく好きだ。厳しい現実に生きていて愛なんて夢物語だとある意味あきらめているのに、クリスチャンの純粋な思いに思わず心を持っていかれる場面。歌うクリスチャン役の俳優の甘くロマンチックな歌い方はもちろん、それを聞いているサティーンの表情が、それまでは営業モードでいたのに、武装していた心がほどけていくのがすごくよく分かって、切なくキューンとくるところだ。

このほか、2 幕冒頭の<バックステージ・ロマンス>のダンスシーンが圧巻の見せ場。サンティアゴとニニの 2人の情熱的な秘密の恋のパフォーマンスは、クリスチャン達の純粋なロマンチックとはまた全然違う、セクシーで大人のただれた愛のような世界が繰り広げられる。そこから踊り子たちが加わってショーのリハーサルが行われるという展開になり、アクロバット的なダンスもあって、わぁお~っと興奮してしまうダンスシーンになっている。

そして2 幕の歌の聴きどころは、クリスチャン役の俳優が革のロングコートを着たところから始まる!サティーンを忘れるためにアブサンという強いお酒を飲んですごく酔っ払うなかで、クリスチャンがこれまでとはトーンが変わって、ダークサイドに転じていくところがいい。。サティーンが公爵と一夜を共にするのを堪えなければならないという、嫉妬で悶え苦しむ感情を爆発させて<El Tango de Roxanne>という激情的な歌とパフォーマンスを展開するので、観ごたえも聴きごたえも抜群だ。

ラストは毎回、演じる方も涙々、観る方も涙々になるのだが、最後のスペシャルカーテンコールがそれはそれは楽しくて、悲しい話だったことを忘れてしまうくらいだ。大いに笑って大いに切なくなって、そして泣いて、最後はわーっと盛り上がって帰れるという、本当に気持ちよく感情が大きく動いて楽しい時間が過ごせる作品になっている。

韓国ではこれまでのミュージカル公演の中で一番高額なチケットということが話題になったが、なにかと辛口な韓国ファンも「お金も時間も惜しくない舞台だった」と総じて高評価!私自身もこの作品の魅力にハマってしまい、何度も観たい病にかかってしまった。この夏には日本語で観られるなんて、もう楽しみすぎる!

リピート鑑賞がおすすめ

Original Broadway cast of Moulin Rouge! The Musical . Photo by Matthew

最後に、今でこそリピーターになってしまった私だが、実は洋楽に疎かったこともあり、最初に観たときには、ショーっ気が強くて自分好みの作品ではないかもと感じたのが正直なところ。でも、2回そして3回観ると感動度が倍に膨らんだ。私は何を観ていたのか、と反省するほど感じ方が違うのだ。普通すごいミュージカルファンでもない限り1回の鑑賞で終わることがほとんどだと思うが、それではなんだかもったいない。1回観た上で、そして曲を聴いて耳になじませてから2回目鑑賞に臨むとまた全然違うはず。なので、ぜひ少なくとも2回は観てほしい。そうすれば、さらに大きな満足感と感動を得られるはずだ。

文=田代親世(韓流ナビゲーター) 制作=キネマ旬報社

 

『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』

2023年夏 帝国劇場公演
全キャスト、オールオーディションを経て決定!!
▶『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』公式 HP

●キャスト(各役50音順)
サティーン役:望海風斗、平原綾香
クリスチャン役:井上芳雄、甲斐翔真
ハロルド・ ジドラー役:橋本さとし、松村雄基
トゥールーズ ロートレック役:上野哲也、上川一哉
デューク(モンロス公爵)役:伊礼彼方、K
サンティアゴ役:中井智彦、中河内雅貴
ニニ役:加賀 楓、藤森蓮華
ラ・ショコラ役:菅谷真理恵、鈴木瑛美子
アラビア役:磯部杏莉、MARIA-E
ベイビードール役:大音智海、シュート・チェン

●あらすじ
舞台は1899年、パリ。退廃の美と、たぐいまれなる絢爛豪華なショー、ボヘミアンや貴族、遊び人やごろつき達の世界。
『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』 は激しい恋に落ちたアメリカ人作家クリスチャンと、ナイトクラブ ムーラン・ルージュの花形スター、サティーンの物語。ムーラン・ルージュで二人は出会い、激しい恋に落ちるが、クラブのオーナー兼興行主のハロルド・ジドラーの手引きで、彼女のパトロンとなった裕福な貴族 デューク(モンロス公爵)が二人を引き裂く。公爵は望むものすべて、サティーンさえも金で買えると考える男だった。クリスチャンはボヘミアンの友人たち才能にあふれた、その日暮らしの画家トゥールーズ=ロートレックやパリ随一のタンゴダンサー、サンティアゴとともに、華やかなミュージカルショーを舞台にかけ、ムーラン・ルージュを窮地から救い、サティーンの心をつかもうとする。

●映画「ムーラン・ルージュ!」
バズ・ラーマン監督による、20世紀フォックス配給の映画「ムーラン・ルージュ!」は 2001年カンヌ映画祭にて初公開。
ゴールデングローブ賞最優秀映画作品賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞。作品賞を含むアカデミー賞8部門にノミネートされ、2 部門にて受賞を果たした。

●ムーランルージュ・オブ・パリについて
ジャン=ジャック・クレリコ(CEO)が采配を振るうムーランルージュ・オブ・パリは、きらびやかで絢爛豪華な世界。
1889年以来、パリジャン達の祝祭のシンボルとなっている。開業当初よりキャバレー、ダンスホールとして人気を博し、狂騒の20年代には時代を象徴するミュージックホール、そしてのちに劇場となり、フランス内外の数多くの名だたるアーティストがその舞台でスポットライトを浴びてきた。現在、ムーランルージュでは60名のアーティストによるレビューショー『Féerie フェリ』を上演中 ダンスシーンの数々に、あっと驚くアトラクションを交え、ムーランルージュの代名詞ともいえるフレンチ・カンカンはもちろん、キャバレーとミュージックホール、どちらのスタイルも楽しめる圧巻の 2 時間! 開業以来、ムーランルージュではパーティーのように華やかで、ユニークなパフォーマンスが繰り広げられ、感動と興奮を体感し、分かち合えるよう、今も変わりなく人々をいざなっている。

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