聖なる街の闇に溶けゆく殺人鬼──「聖地には蜘蛛が巣を張る」冒頭シーン解禁

聖なる街の闇に溶けゆく殺人鬼──「聖地には蜘蛛が巣を張る」冒頭シーン解禁
Advertisement

 

「ボーダー 二つの世界」のアリ・アッバシ監督が、イランで起きた娼婦連続殺人事件に着想を得て女性ジャーナリストの追跡を描き、第75回カンヌ国際映画祭で女優賞(ザーラ・アミール・エブラヒミ)、ロバート賞(デンマーク・アカデミー賞)で作品賞はじめ11部門を受賞した「聖地には蜘蛛が巣を張る」が、4月14日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズ シャンテほかで全国順次公開。聖地マシュハドの闇に殺人鬼“スパイダー・キラー”が消えゆく冒頭シーンが解禁された。

 

 

娼婦の死体をヒジャブで包み、バイクの後部に乗せて夜道を走り、荒野に遺棄するスパイダー・キラー。その指には、敬虔な信者の証である赤い瑪瑙(めのう)の指輪が光る。そしてバイクで向かう先に、蜘蛛の巣のような聖地マシュハドが現れる──。

そこに重なってくる音楽を手掛けたのは、「マザーズ」「ボーダー 二つの世界」に続くアリ・アッバシ作品への参加となったデンマーク出身の作曲家マーティン・ディルコフ。「マシュハドの暗黒部が持つ無骨で、工業的な要素にものにしたいと思っていた」という監督の要望に、イラン的なグランジの感性を表現しつつ応えたそのサウンドデザインは、まさしく不穏さを煽り、ロバート賞の作曲賞に輝いた。

「『聖地には蜘蛛が巣を張る』は、イランで最も悪名高き連続殺人犯、サイード・ハナイの壮絶な一生を描いた作品だ」と言うアリ・アッバシ。「犯人が敬虔な信者で模範的な人物であることを踏まえると、イラン社会に対する風刺作品であるともいえる」とも述べ、「ハナイが聖なる街マシュハドで娼婦を襲っていた2000年代初頭は、私もまだイランに住んでいた頃だった。ハナイは、逮捕され、裁判にかけられるまでに、16人もの女性を殺害した。私がこの事件に関心を持ったのは、その裁判が行われている時だった。普通の世界なら、16人も殺した男は犯罪者として見られるはずだ。しかし、ここでは違った。一部の市民や保守派メディアは、ハナイを英雄として称え始め、ハナイは“汚れた”女たちを街から始末するという宗教的な務めを果たしただけだと擁護したのだ。私はそれを知った時に、この出来事を基に映画を作ろうと思った」と振り返っている。複雑な社会の事情がもたらす衝撃の物語に注目だ。

 

 

 

Story
聖地マシュハドで娼婦連続殺人事件が発生。「街を浄化する」という声明のもとに凶行を重ねる“スパイダー・キラー”に街は震撼するも、一部の市民は犯人を英雄視していた。事件を覆い隠そうとする圧力のもと、女性ジャーナリストのラヒミは危険を顧みずに犯人を追う。そしてある夜、家族と暮らす平凡な男に潜んだ狂気を目撃し……。

 

©Profile Pictures / One Two Films
配給:ギャガ

▶︎ カンヌ映画祭女優賞。イランの売春婦連続殺人を女性ジャーナリストが追う「Holy Spider」(原題)

最新映画記事カテゴリの最新記事