映画のタイトルからサスペンス物かと思っていた。観たら、警察が殺人犯を追い詰めていくというサスペンスでは無く、不条理な室内劇でした。
警察幹部が愛人を殺し、その殺人事件を陣頭指揮を執って捜査する。しかも自分が犯人と判る様な証拠もわざと残す。さて、ラストは?
こういう映画が評価されたのは、やっぱり時代だよなあ。フランスではヌーヴェル・バーグが始まっていたし、アメリカではアメリカン・ニューシネマが作られていたし、ポランスキーなんかも亡命してきた頃じゃないかな。だとしても無理筋だよなあ。こういう映画が作られるのは、やっぱり当時の東西冷戦の閉塞的な空気感が西側ヨーロッパにあったからだろうか。当時、中国は国を閉ざしていて、国交を持っていた国はフランスくらいしか無かったのではないか。それで毛沢東思想がもてはやされた時代だ。先の見えない空気感の中で、外に希望を見いだしたかったのだろう。西側ヨーロッパにいる限りは不条理からは抜け出せない。
でも、今観ると正義は成し遂げられないといけない、と思う。まあ、それとは別にそんなに面白い映画では無かった。
主演がジャン・マリア・ヴォロンテなのね。マカロニウエスタンの悪役のイメージだ。それより殺される愛人役がフロリンダ・ボルカンでした。久しぶりに彼女の名前を見た。当時、彼女の出ていた「ベニスの愛」という映画の音楽がフランシス・レイの「ある愛の詩」の曲と似ている、とフランシス・レイが訴えられた。フランシス・レイは特に争わなかったと記憶している。この騒動のおかげか、当時、フロリンダ・ボルカンが出ていた映画が日本で何本か公開されていた。脱ぎっぷりの良い女優という記憶だ。懐かしいですね。
音楽をエンニオ・モリコーネが担当している。今でこそエンニオ・モリコーネは映画音楽の巨匠みたいにいわれているけど、ハッキリ言って何でも書いていた。ニーノ・ロータの方が格上だと思うけど。