ノーヴィスの映画専門家レビュー一覧
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映画監督
清原惟
大学でボート部に入部し、異様なまでに勝ちに執着する主人公の心理を描く作品。はっきりとは明かされないが過去のトラウマによる傷を抱えている彼女の心のうちを、スポーツという行為を通して紐解いていくアプローチに惹かれる。部活内での人間関係の話と思いながら見ていると、急に彼女には見えていない物事の側面が現れて、自分自身が彼女の世界に閉じ込められている閉塞感と、妙な高揚感を感じていた。彼女の感知する世界を、音を使って表すのは古典的ではありながらも没入感がある。
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編集者、映画批評家
高崎俊夫
ふと虫明亜呂無の『ペケレットの夏』が脳裏を掠める。競漕に魅せられ、自ら得体の知れぬオブセッションに取り憑かれたヒロインからいつしか目が離せなくなる。仲間との軋轢、嫉妬、統御しがたい内攻する感情の奔出。反復される、朝まだき河川のトレーニングの光景がすばらしい。素肌にまといつくような豪雨、水と大気の匂い、筋肉の弛緩、水面を滑走するオールの官能的な肌触りが生き生きと伝わってくる。異化効果のようなB・リー、C・フランシスの甘い60年代ポップソングも特筆ものである。
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映画批評・編集
渡部幻
一般的なスポーツ映画ではないことは、「エスター」のイザベル・ファーマン主演から想像していた。大学のボート競技ローイングの訓練に取りつかれた女性の強迫観念を観る者に追体験させる視聴覚的な緊張感が、同時に新鋭監督ハダウェイ自身の衝動を感じさせて特異である。アロノフスキーの「ブラックスワン」の影響は明らかだが、しかし、この主人公の狂的な完全主義は、特訓映画にありがちな外的な圧力に起因するものではなく、完全に内的な強迫観念に起因している。この点にこの力作の現代性があった。
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