キノ・ライカ 小さな町の映画館の映画専門家レビュー一覧

キノ・ライカ 小さな町の映画館

    フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキが、仲間と共に作った映画館“キノ・ライカ”をめぐるドキュメンタリー。北欧フィンランドの鉄鋼の町・カルッキラ。アキ・カウリスマキと仲間たちが自ら椅子を取りつけ、スクリーンを張り、この町初の映画館開業に向け、準備を進めていく。アキ・カウリスマキのほか、ジム・ジャームッシュも出演。
    • 俳優

      小川あん

      フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキが自ら地元のカルッキラの工場の跡地を改装し、夢のような映画館を設立するまでの記録。次第に形になるにつれて、地域の文化・芸術に対する意識も同時に再構築されていく様子が描かれる。まるで映画制作そのもののように、プロジェクト自体が地元の人にとっての大きな物語になる。まるで、映画の登場人物のようにユニークな人々は自分たちがただの観客でなく、新たな文化の誕生に関わる当事者であると気づく。本作を観て、改めて映画館を失ってはいけないと強く思い直した。

    • 翻訳者、映画批評

      篠儀直子

      地方に移り住んだ映画監督が住民と活動を始めることで、その地の映画文化が豊かになる例は各国にあるけれど、本作で描かれているのもそのひとつだろうか。とはいえここには、カウリスマキを受け入れる文化的土壌があらかじめあったようにも見える。さびれて停滞した田舎町を想像してはいけない。若い女性や子どもの姿も多く見られ、新しいものが生まれそうな空気が充満している。それにしても、誰も彼もが「アキ」の名を、なんと楽しそうに口にすることか。カウリスマキ自身の変わらぬ仏頂面も最高。

    • 編集者/東北芸術工科大学教授

      菅付雅信

      カウリスマキがフィンランドの地元に作った映画館を巡るドキュメンタリー。彼自身も工事に取り組む様子やカウリスマキ組の俳優たち、ジム・ジャームッシュなども登場し、各々がカウリスマキさらには映画への思いを語る。本作はカウリスマキ監督作ではないが、独特のオフビートなムードは共通。さまざまな言語が飛び交い、日本語による古びたムード歌謡な曲が流れ、地球の辺境で資本主義から降りた人々の映画を巡る交流を慈しむように描く。スペクタクルとは対極の、オフであることの豊かさに魅了される。

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