ソウル・オブ・ア・ビーストの映画専門家レビュー一覧
ソウル・オブ・ア・ビースト
ロカルノ国際映画祭で審査員特別賞を受賞したスイス発の大人の青春映画。ガブリエルは、単身育児に励む17歳の父親。ある日彼は、ネットを通じて知り合った青年ジョエルの恋人コリーと、子どもがいることを隠したまま、互いに強く惹かれ合うようになり……。出演は本作でスイス映画賞主演男優賞を受賞した新星パブロ・カプレツ、「TOKYO VICE」のエラ・ルンプフ。
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俳優
小川あん
エキセントリックすぎて、頭と心が追いつかなかった。幻想的なムードが高まって、少しやりすぎ感が出てしまってたころに (1時間過ぎたくらい) 、恋に落ちた二人がそのエモーショナルを自覚し始めてからは、急に面白くなってきた。日本語のナレーションとあらゆる類の音楽が相まってドラマチックさを主人公に突きつける。「お前はバカだ。」この映画は近づき過ぎず、俯瞰してみるのが自分にとって正解のようだ。動物の描写を解明はできなかったが、確かに心に獣の爪痕を残した作品だった。
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
動物園から動物が放たれると同時に、登場人物のなかの野生が目覚め、獰猛さは街全体へと感染していく。そのさまを描く本作は、こんな放埓な映画を撮ってみたいと多くの者が夢見てきたに違いない作品だが、それを成就できる人間はほとんどいないし、ましてや、こんなにやりたい放題やっておきながら作品として成立させられるのは、かなりの才能のなせる業だろう。作品評価とは関係ないが、ドイツ語とフランス語、英語(そして日本語)のあいだを自在に行き来する言語空間も、分析したくなる興味深さ。
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編集者/東北芸術工科大学教授
菅付雅信
スイスのチューリッヒを舞台にした三角関係を描いた青春映画。17歳の子持ちの少年が破天荒な男とその魅力的な恋人と知り合い、彼女に情熱的に恋をする。刹那な三人と暴動状態の街、動物園から逃げ出す野生動物たちと映画は常に一触即発なスリルを持って、若者たちの「俺たちに明日はない」状態を躍動的に描く。三人の男女がとにかく魅力的でゴダール初期作のよう。カメラと編集は極めてモダンで美学的。ただし日本文化を愛する監督が意図的に付けた日本語の格言めいたナレーションはいらないかと。
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