苦悩のリストの映画専門家レビュー一覧
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文筆業
奈々村久生
米軍完全撤退の期限が迫る中でカブール空港に押し寄せた人々。中には飛行機に乗り切れず機体から振り落とされる者もいた。当時数えきれないほど目にした動画。彼らの救出に遠隔で尽力したマフマルバフ監督らの心痛が、瞬時に的確な人選を決めなければならない冷静さの中で浮き彫りになる。ただし、救出リストの候補に入れる人はやはりある種の特権階級といえる。タリバン復権下で生命や人権を脅かされているのは芸術家だけではないし、芸術家至上主義のような結びにはやや疑問が残る。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
こうしている今も、どんどん人が無惨に殺されている現実。苦悩してるだけで何もできてないわけではない。人の命を助けることの役にたててはいる。かろうじて「絶望の」リストではない。だが助けることが間に合わなくて拷問をうけて生きたまま目をえぐられた人もいた。現地まで行くことはできない。家にいて、自分の平和な日常のなかでパソコンとスマホで助けるしかない。映画が終わっても「信仰」も虐殺も戦争も終わってない。分断の末、明日には我々が殺して殺されることになるだろう。
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映画評論家
真魚八重子
人命を一人でも多く救うための活動が、どれだけ素晴らしく必死なものかはわかる。だからといって、室内でひたすら電話をかける様子だけを捉えた映像を、救済のためだからといって高く評価するわけにはいかない。映画的にはなんの面白みもないからだ。「人を救う作品に低評価を与えるのか」と言われたら困る。明らかにそこには線引きが必要であり、これは映画と分類するかすら難しい。助かる人選がたまたま電話のそばにいることで決定する、残酷な運命の記録映像とは呼べるだろう。
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