ブラックバード、ブラックベリー、私は私。の映画専門家レビュー一覧
ブラックバード、ブラックベリー、私は私。
ジョージアの新進女性作家タムタ・メラシュヴィリの大ヒット小説を原作にした異色の青春物語。村人たちの蔑視を感じながらも、自由を愛しストイックに生きてきた48歳の独身女性に突然訪れた転機と新しい人生を踏み出す葛藤をポップかつオフビートに描き出す。監督はジョージア出身の俊英エレネ・ナヴェリアニ。第73回カンヌ国際映画祭正式出品。大阪アジアン映画祭2024上映作品。
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文筆業
奈々村久生
天涯孤独のシングル女性エテロを演じたエカ・チャヴレイシュヴィリの存在感が見事。物理的・視覚的にも確かな質量を持つその身体性が、安易な同情や誹謗中傷を撥ねつけ、彼女が生きているという現実を何よりも証明する。他人に媚びることも愛想を振り撒くこともなく、自分の小さな居場所を守りながら生きてきたエテロのインディペンデンスと、悪口を言い合いながらも世代や立場を超えて緩やかに連帯する女性同士の関係の妙。村の閉鎖性が持つネガティブな側面が思いもよらぬ可能性を生んでいる。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
クソババアたちのコミュニティの近くにはいるけれど同調圧には屈せず、クソ男のルッキズムにも屈せず、一人で野生のベリーを摘み、一人で喫茶店で高カロリーのでかいスイーツをむしゃむしゃ平らげ、時に自らの近未来の死や家族から受けたトラウマを幻視する、鳥のような顔の高年齢処女。初めてのセックスも恋愛も彼女を楽しませはするが、快適な孤独を揺るがすことはない、ていうか孤独に自適してる者にしか本当の意味でのセックスや恋愛を楽しむことはできない、はずだったのだが……。
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映画評論家
真魚八重子
即物的なたるんだ腹の肉、リアリスティックな陰毛、まごうことなき50絡みの女の全裸が写し出される。同じ年頃の男も尻の肉が落ちてすぼみ、お互いに性欲をかきたてる裸ではないから、逆に相性の良い肉体の出会いなのだと思う。物語は独りで楽しみ、孤独もいとわない女にとっての、女友だちとの関係の難しさがメインだが、正直重要でもないだろう。それよりいまだに女が男に詩心を求めていたりする甘さが、正直で微笑ましかった。思いがけない初恋の形が夢見がちな可愛いドラマだ。
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