アーサーズ・ウイスキーの映画専門家レビュー一覧

アーサーズ・ウイスキー

「アニー・ホール」のダイアン・キートン主演のヒューマン・コメディ。発明家の夫を亡くしたジョーンは親友のリンダ、スーザンと、夫の作業場で秘密裏に蒸留されたウイスキーを発見。3人はウイスキーを飲んで寝てしまい、目覚めると身体が若返っていることに気づく。出演は「妻の恋人、夫の愛人」のパトリシア・ホッジ、「いつも心に太陽を」のルル。さらに、歌手のボーイ・ジョージが本人役で特別出演している。監督はプロデューサー・共同脚本も務めるスティーヴン・クックソン。
  • 映画監督

    清原惟

    仲良しな70代女性3人が、若返ってしまうウイスキーを飲んで、若い女子の姿になって冒険をする。コメディとしては面白くできそうなアイデアだが、恋愛が軸で語られていくのにがっかりした。彼女たちのキャラクターが魅力的なだけに、ルッキズムを助長させるような語り方がもったいない。本来の自分自身を愛することや、同性愛などのテーマも後半入ってくるが、目配せと感じてしまう。このテーマでやるのなら、彼女たちが生きてきた人生をもっと力強く肯定するものになってほしかった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    世代は違ってもデビュー当時から見続けているせいかダイアン・キートンは同時代人だと思っている。近年は加齢に合わせ役柄も完璧な老境に入ったが、こんなジェリー・ルイスの「底抜け大学教授」(63)をヒントにしたような無理スジのユルユルなコメディにもきわめて寛容な気持ちで向き合える。というのも「アニー・ホール」(77)以来のあの得も言われぬ彼女の微苦笑が健在だからだ。しかし邦・洋画を問わず、なぜある宣告をきっかけに皆がスカイダイビングに挑戦するのかは大いなる謎である。

  • リモートワーカー型物書き

    キシオカタカシ

    開幕から高らかに鳴り響くデイヴィッド・ニューマンの音楽とクレジットのフォントから脳裏に浮かぶのは、(英国映画ながら)子どものころ観た80年代半ば~90年代前半のハリウッド製ファンタジーコメディ。SNSやスマホが登場するたびに現代劇であることを思い出すが、良くも悪くも微妙に懐かしい味わい。ベビーブーマーを親に持ち70年代映画文化に憧憬を抱いて研究してきた世代としては、本作のダイアン・キートンたちの姿は同じ時間を共有した家族のように映り、ストレートなベタさも沁みた。

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