悪い夏の映画専門家レビュー一覧

悪い夏

第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した染井為人による同名小説を「ビリーバーズ」の城定秀夫監督が映画化。市役所に務める佐々木は、同僚が生活保護受給者の女性に肉体関係を迫っていると知り、その女性を訪ねるが、それをきっかけに犯罪に巻き込まれてゆく。脚本は「ある男」で2022年・第46回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した向井康介。主人公・佐々木を「東京リベンジャーズ」シリーズの北村匠海が演じる。
  • 映画評論家

    上島春彦

    原作の毒を映画に期待した人には物足りない脚色かもしれないが、私はこれが功を奏したと思う。河合優実を刑務所に送らないですむように処理したわけだ。また原作で唯一の被害者である母子も映画では死んでいない。ここも重要。やみくもに倫理観を振りかざす伊藤万理華の口元が徐々にひん曲がっていく印象で実に可笑しい。嵐の晩に関係者が一堂に会するクライマックスがスラップスティック喜劇感覚で最高だ。それにしても北村匠海がこんなにいい役者だとはこれまで知らなかった。

  • ライター、編集

    川口ミリ

    生活保護制度を巡って渦巻く人々の欲望。そんなただでさえドロドロとした物語が、クローズアップを多用してグロテスクに描かれており息が詰まる。アプローチが安直すぎるのでは。演技にも同じことが言える。城定監督はきっと俳優を乗せるのがうまいのだろう。それは諸刃の剣で、今回はクレイジーに振り切った芝居ばかり見せられ残念に思った。その中でシングルマザー役の河合優実、木南晴夏は光って見える。彼女たちの、役の尊厳を損なわないレイヤーのある人物解釈が本作の救いだ。

  • 映画評論家

    北川れい子

    さして珍しくもない貧困ビジネス。描き方次第ではいくらでも社会派映画になる。がこいつら全員ロクでなしと、冷酷な遊びを盛り込んで容赦なく追い詰めていく向井康介の脚本と城定秀夫監督にシビレた。どいつもこいつもザマアミロ! スケールは異なるが、ちょっと韓国の露悪的犯罪サスペンスに似てるかも。同情と善意と弱気の三つ巴で貧困ビジネスに加担せざるを得なくなる職員役の北村匠海も、無気力にふてくされた河合優実も、笑えるほど実感があり、いや笑った。

  • 映画評論家

    上島春彦

    原作の毒を映画に期待した人には物足りない脚色かもしれないが、私はこれが功を奏したと思う。河合優実を刑務所に送らないですむように処理したわけだ。また原作で唯一の被害者である母子も映画では死んでいない。ここも重要。やみくもに倫理観を振りかざす伊藤万理華の口元が徐々にひん曲がっていく印象で実に可笑しい。嵐の晩に関係者が一堂に会するクライマックスがスラップスティック喜劇感覚で最高だ。それにしても北村匠海がこんなにいい役者だとはこれまで知らなかった。

  • ライター、編集

    川口ミリ

    生活保護制度を巡って渦巻く人々の欲望。そんなただでさえドロドロとした物語が、クローズアップを多用してグロテスクに描かれており息が詰まる。アプローチが安直すぎるのでは。演技にも同じことが言える。城定監督はきっと俳優を乗せるのがうまいのだろう。それは諸刃の剣で、今回はクレイジーに振り切った芝居ばかり見せられ残念に思った。その中でシングルマザー役の河合優実、木南晴夏は光って見える。彼女たちの、役の尊厳を損なわないレイヤーのある人物解釈が本作の救いだ。

  • 映画評論家

    北川れい子

    さして珍しくもない貧困ビジネス。描き方次第ではいくらでも社会派映画になる。がこいつら全員ロクでなしと、冷酷な遊びを盛り込んで容赦なく追い詰めていく向井康介の脚本と城定秀夫監督にシビレた。どいつもこいつもザマアミロ! スケールは異なるが、ちょっと韓国の露悪的犯罪サスペンスに似てるかも。同情と善意と弱気の三つ巴で貧困ビジネスに加担せざるを得なくなる職員役の北村匠海も、無気力にふてくされた河合優実も、笑えるほど実感があり、いや笑った。

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