SKINAMARINK/スキナマリンクの映画専門家レビュー一覧
SKINAMARINK/スキナマリンク
制作費1万5千ドルながら692館という異例の規模で北米公開、興収200万ドルのサプライズヒットとなった注目のイマジネーション・ホラー。真夜中に目覚めた幼いケヴィンとケイリーは、家族の姿が消えていることに気づく。残された二人は、暗闇で蠢く影と悪夢のような恐ろしい光景に飲み込まれていく……。監督は、これが長編デビュー作となり、気鋭のスタジオ“A24”とのタッグで次回作が予定されているカナダの新鋭カイル・エドワード・ボール。現実と悪夢の境界を彷徨うような実験的な映像と解釈を委ねるミニマリスティックな演出が、魅惑的でおぞましい映像体験へと見る者を誘う。
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文筆業
奈々村久生
一言で言うなら究極の「匂わせ」映画。何らかの現象の一部だけが断片的に、それも焦らすように小分けに公開され、疑惑と憶測を延々と想起させる。発信する側だけが全貌を把握していて受け取る側を弄ぶような、意味があるようなないような仄めかしの連続が悪趣味。実験映画として観るにしても、そもそも写っているものがつまらないから、怖くないし面白くない。映画の中でまで匂わせとマウントに煩わされたくない。自分が鑑賞に費やした時間をどうにか肯定する理由を探そうとしたが無理だった。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
日本で流行ってる短篇ホラー動画と同じく、恐怖の中心の「びっくりする死」と「痛みの地獄」を直接は見せないよう迂回して、不安の象徴だけをひたすらつきつけてくる。ちがうのはテーマが日常やテレビ番組や狂人やインターネットではなく「幼児の寂しさと悲しさ」であること。だから因果や因習や怨念の恐ろしさはいっさい描かれない。「人間がいちばん怖い」とはよく言われるが、その人間すらほぼ出てこない。怖かったけど、アート作品として美術館で鑑賞してたらもっと怖かったかもしれない。
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映画評論家
真魚八重子
死の恐怖の雰囲気をたたえた100分。子どもたちが夜更けに目覚めると父親の姿はなく、家は窓やドアが消えていく。気がつくと子どもは天井を歩き、家の上下が入れ替わっている様子が、闇深い静謐な映像で綴られる。冥界に入るような不安が漂うものの、映画となるとそれは非常に退屈で、予告篇程度で十分事足りる。監督はもともとYouTuberで、この作品と同系統の5分の作品をネットに上げており、本作はそれを引き延ばしただけの印象。物語に起承転結もなく、長尺化は蛮勇だ。
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