ドライブ・イン・マンハッタンの映画専門家レビュー一覧
ドライブ・イン・マンハッタン
ダコタ・ジョンソン製作&主演兼任で贈る真夜中のタクシーを舞台にしたワンシチュエーションのヒューマンドラマ。夜のニューヨーク。空港からタクシーに乗り込んだ女性客と運転手の他愛もない会話は、やがて予想もしなかった方向へと発展していき……。ダブル主演を務めるのは「リコリス・ピザ」のショーン・ペン。「ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US」の製作と脚本を務めたクリスティ・ホールが自ら脚本も執筆し、本作で長編初監督を飾った。
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映画監督
清原惟
上から目線の中年男性タクシー運転手に絡まれて、だるい話をえんえん聞かされる上に、プライベートな話も根掘り葉掘り聞いてきて、主人公の女性のしんどさも伝わってくるのに、最後なんだかいい話っぽくまとめてるのが納得できない。映像的にもワンシチュエーションであるが故の単調さを乗り越える工夫もなく退屈さを感じてしまった。女性を妙に魅力的に(特にその視線のありかたなど)描く演出にも、いやらしさを感じてしまい、徹底した男性目線の映画だと思ってただただ疲れてしまった。
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編集者、映画批評家
高崎俊夫
マンハッタンの自宅に向うタクシー内での美女と初老のしがない運転手の会話だけでこれほど濃密なドラマが構築できることに感嘆する。老害スレスレのおせっかいな助言を買って出る皺が目立つショーン・ペンの果てのない饒舌。スモールタウン出身のダコタ・ジョンソンも時折、届く既婚者の恋人からの卑猥なメールに動揺を隠せず、そのダイアローグは次第に熱を帯びる。都市生活者の断片を切り取り、ささやかな真実をそっと差し出す。リング・ラードナーの上質な短篇にも似た味わいがある。
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ
「汚れた現世に天から舞い降りた聖人のような“マジカルおぢ”を描く物語だろうか?」という先入観で鑑賞したが、確かにその一面も若干あれど本作のショーン・ペンの言動はウザ絡み一歩手前、過去の奔放なイメージもこだますスケベオヤジ。そんな中高年男性のダメさ加減も高解像度で表現しているように人物描写は遠慮なく率直だが、露骨な露悪性はない……人の優しさを信じる善性がすっと心に染みわたる。心の傷から膿を吐き出していく主人公2人の旅路から、確かなカタルシスをもらえた。
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