ベテラン 凶悪犯罪捜査班の映画専門家レビュー一覧
ベテラン 凶悪犯罪捜査班
正義感溢れる熱血刑事の活躍を描いた「ベテラン」の第二弾となるアクション。法で裁けなかった悪人たちが連続して殺害される事件が発生。世論が犯人を正義のヒーローと称賛する中、ベテラン刑事ソ・ドチョルと新人刑事パク・ソヌたちは、凶悪犯に立ち向かう。出演は「ソウルの春」のファン・ジョンミン、「スタートアップ!」のチョン・ヘイン。「密輸 1970」のリュ・スンワンが前作に引き続き監督した。
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映画評論家
川口敦子
まず「ベテラン」を見たらブロンディ〈ハート・オブ・グラス〉にのって愛人づれのチンピラがちゃらっと飛び出してきてR・スンワンこういう作風だった!?と目が点に。が、笑わせながら小気味よく大企業とそのバカ息子という巨悪に挑む手練れの刑事と捜査班の人となりを語り切る娯楽活劇の手際にリュ自身もベテランになったのねとしみじみ、しつつ「クライング・フィスト」の頃の尖りを想ったら「2」には往時の劇画調を射抜く鬱蒼があり、ネット映像の横溢も意図よねと許せる気になった。
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批評家
佐々木敦
大ヒット作の9年ぶりの続篇。監督のリュ・スンワン、主演のファン・ジョンミンを始めとする座組みはほぼ変わっていないのに、この約10年の韓国社会と韓国映画の変化を反映して、印象が大きく異なる作品になっている。前作は「大企業=悪」一点張りだったが、今回は法に護られ罪に見合わぬ軽罰で済んだ悪人を次々と手に掛ける連続殺人犯とドチョル刑事の対決をユーチューバーが世論を扇動する現象を背景に描く。「いい殺人と悪い殺人があるのか?」というドチョルの問いがテーマだろう。
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ノンフィクション作家
谷岡雅樹
無茶な主人公でも先が見たくなるのは、愛されるキャラクターであるからだ。自由な人間か好き勝手放題なのかの鍵は、感情移入できるかだ。植木等の「無責任男」は、出鱈目の陰で努力家だ。寅さんも、ズボラの裏に配慮がある。本作の刑事たちにあるのは、僅かの人情程度だ。主人公以上に酷い悪人を対置させても割引きされない。喜劇でもあるから笑わせるが、手法が暴力的だ。毒で毒を制するという理屈の作品か。悪に同調し許す者の問題をこそ掘り下げて描くべきだ。主人公の妻が救いである。
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