マクベス(2015)の映画専門家レビュー一覧
マクベス(2015)
没後400年のシェイクスピアによる四大悲劇の一つを「スティーブ・ジョブズ」のマイケル・ファスベンダー主演で映画化。戦乱に揺れる中世スコットランドを舞台に、欲望と野心にとらわれた勇将マクベスが、最愛の妻と共に歩んだ激動の生涯を映し出す。共演は「エディット・ピアフ 愛の賛歌」のマリオン・コティヤール、「コードネーム U.N.C.L.E.」のエリザベス・デビッキ、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のショーン・ハリス。監督は、長編デビュー作『スノータウン』で注目を集めたオーストラリア出身の新鋭ジャスティン・カーゼル。吉本興業初の洋画配給作品。
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翻訳家
篠儀直子
マクベス夫妻に子どもがいないことが、この物語にとっては結構重要なのではと前から思っていたのだが、本作は冒頭でそれを前面に出し、以後、全篇にわたって「死」のイメージ、「死産」のイメージをたちこめさせる。一方、運命の奔流に押し流される超高速栄枯盛衰物語として知られる『マクベス』を、この映画はひたすら引き伸ばしているかのようだ。荘厳な台詞の合間に「イメージ映像」めいたものがたくさん突っこまれ、様式美でも写実でも活劇でもなく、いわば夢幻性が目指される。
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映画監督
内藤誠
裏切りと復讐の血にまみれた物語をCGを駆使したスペクタクル絵巻にすることもできたはずだけれど、ジャスティン・カーゼル監督はロケーション撮影を多用し、シルエットの多い映像に仕上げている。その分、シェイクスピアの有名なセリフが耳に響き、観客のイメージはかえって膨らむ。王殺しの場面も、イングランド軍が攻めてくるラストシークエンスも、シンプルな映像が音響効果とあいまって、古典の味わいを出していた。過去の名作芝居や映画との比較のせいで星の数はきびしいが。
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ライター
平田裕介
なにやらヴィジュアルはダーク、そこはかとなくムードは荘厳で重厚である。製作陣いわく強欲なマクベス夫婦の行く末を昨今の経済情勢と重ねてもいるらしいのだが、雰囲気重視でシェイクスピアをやってみましたという印象しか受けず。実際、映像やノリに関しては紀里谷和明の「ラスト・ナイツ」が観ているそばから脳内リバイバルしてくる感じ。とはいえ、M・ファスべンダーやP・コンシダインら英国のグッとくる俳優たちはさすがに魅せるし、コテやんも相変わらずの美しさである。
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