鉄の子の映画専門家レビュー一覧

鉄の子

埼玉県川口市を舞台にある家族の日々を映し出すヒューマンドラマ。親の再婚により同い年のきょうだいとなった小学生・陸太郎と真理子は、協力して両親を離婚させようとするが、両親の仲は悪くなるどころかますます良くなってしまい……。監督は「夜だから」の福山功起。出演は「ふがいない僕は空を見た」の田畑智子、「毎日かあさん」の舞優、「旅立ち 足寄より」のぺ・ジョンミョン、「劇場版カードファイト!! ヴァンガード 3つのゲーム」のスギちゃん。
  • 評論家

    上野昻志

    大人の身勝手に振り回される子ども。片や母と息子、片や父と娘、双方の親が結婚したために、二人は、今日から「きょうだい」と言われ、学校では同じクラスになる。それだけでもイヤなのに、少年は義父に、少女は義母に馴染めない。そこで「離婚同盟」を結成、父母を別れさせようとするが成功しない。そうこうするうちに、二人は仲良くなるが、あることをきっかけに、少女が義母を「おかあさん」と呼ぶようになり、万事丸く収まると思いきや、またしても大人の身勝手が……この結末は渋い。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    少年が赤く融けた熱い鉄にアイデンティファイしている。本作題名は子どもが自己の鉱物質の部分を鍛えあげることを示すがファーストシーンが全く同じなので筆者は思わずシュワちゃん映画「コナン・ザ・グレート」を連想。有史以前の英雄コナンは鉄を崇拝する民族出身の孤児だ。「鉄の子」主人公少年が精神的な父と慕うスギちゃんがやたら、男は筋肉! と唱えてマッチョポーズをとるのも何か通底する。子ども映画ではなく、子ども時代を終わらせてゆく映画。悲しいことだが嘆かずに。

  • 文筆業

    八幡橙

    今なお“キューポラのある街”として知られる川口を舞台にした、とある再婚家庭の物語。まだ打たれる前の、熱く柔らかい鉄のような子どもたちの多感かつ繊細なひとときが、温かいまなざしをもって綴られる。デビュー作「お引越し」を思い出させる母親役の田畑智子がいい。父親に扮する裵ジョンミョンのキャラも憎めないのだが、ふとこの父にとって、家庭とは何だろう? と考えてしまった。とはいえ、大人の意味不明な行動に子どもが振り回されるのは確かに世の常でもあり。子役も光る。

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