コンカッションの映画専門家レビュー一覧

コンカッション

人種差別や偏見と闘いながら、巨大組織NFLに立ち向かった医師の実話をウィル・スミス主演で映画化。2005年、変死したアメフトの元プロ選手の解剖に携わった移民の医師オマルは、頭部へのタックルが原因となる脳の病気を発見、論文を発表するが……。メガホンを取ったのは「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」でデビューした社会派ピーター・ランデズマン。「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のアレック・ボールドウィン、「ドライヴ」のアルバート・ブルックスらが脇を固める。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    リドリー・スコットの製作、ウィル・スミス主演による、実話を基にした、最近よくある告発的内容の作品。だが申し訳ないのだけど、自分はアメフトにもNFLにも全く関心がない。なので評者としては不適格なのだが、非常にシリアスで地に足の着いた良質な作りの映画だと思う。現在も継続中の問題を扱っていることもあってか、娯楽性は皆無であり、地味と言えば限りなく地味なのだが、社会派ドラマとして正攻法の作りの中でスミスの抑えた演技が光る。しかしこれ、解決出来るのだろうか?

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    米大統領選の演説合戦を見ていると、正義とはどれだけ多くの人を説得できたかどうかで決まるのだと肌身で感じる。何かを訴えたければ真実を検証するよりもスピーチの見せ方や論法を磨いたほうが現実的なのだ。もし本作が娯楽作品ならば、ウィル・スミス演じる医師も奇抜な説法でNFLに対抗しただろう。逆に正攻法で描こうとすれば、シリアス=退屈のリスクをとるしかないのだ。アメフト信仰を脅かしかねないナイジェリア人医師への攻撃は容赦ない。大人のいじめはこわい。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    アメリカの国技アメフトの最高峰NFLは膨大な資本を動かす巨大産業だ。その選手の多くが試合中の脳震盪で痴呆化、若死にしているという告発を若い黒人医師が行なう。象に挑む蟻の闘いだ。NFL側の圧力、抵抗がいかに大きいかは想像がつく。しかし映画では彼を排除抹殺しようとするNFL側の悪辣な工作は描かれず、告発は予定調和的な解決で収まる。観客の見たいのは圧力に抗し隠蔽を暴露する緊迫した告発劇で、彼が祖国と家族を愛する信仰心の厚い有能な医師だというお話ではない。

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