ニコラス・ウィントンと669人の子どもたちの映画専門家レビュー一覧

ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち

第二次大戦前、旧チェコスロヴァキアでナチスによる迫害に瀕した669人ものユダヤ人の子どもたちを救出したニコラス・ウィントンの、知られざる偉業を追跡するドキュメンタリー。再現ドラマを交え、約50年後の子どもたちとの再会や彼の善意の影響を追う。監督は、2002年国際エミー賞に輝き日本でもテレビ番組で『愛の力:ニコラス・ウィントン』と題し一部が紹介された『THE POWER OF GOOD』をはじめ、イギリスのシンドラーと呼ばれるニコラスをテーマにした作品に長年取り組むマテイ・ミナーチュ。ニコラスに助けられたカナダのテレビジャーナリスト、ジョー・シュレシンジャーがナレーションを担当。2011年モントリオール世界映画祭最優秀ドキュメンタリー映画賞に輝いた。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    収容所送りとなる前にユダヤの子どもたちを大勢逃がした“英国のシンドラー”N・ウィントンという人は賞讃してもしきれない。素晴らしい題材である。ただし肝心の映画の作り方に問題あり。茶番レベルの再現ドラマで過剰な補強をしてしまったり、救助されたかつての子ども(現在は老人)と当時の資料映像をまことしやかな類似点を糊しろとして繋いでしまったり。冒頭のタイトルインでキラリとしたエフェクトをかけた時点でおかしいなと。フッテージによっては心動かされる箇所あり。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    シンドラー氏とか杉原千畝さんだけじゃなく、ナチスからユダヤの民を救った人がいたとは。ウィンストン氏の懸命の救出の?末を映画は丁寧に紹介。生き延びた当時の子どもたちと老ウィントン氏が再会する場面は胸が熱くなる。この題材には感銘。が、映画にはどこか教科書的なスクェアな収まりを感じる。母と子の別離、それを役者を起用して分かりやすい再現劇にした味気なさ。確かにこれは美談の記録。だけど、それでもはみ出る人間の執念というか血の熱さみたいなものがほしくて。

  • 映画ライター

    中西愛子

    “イギリスのシンドラー”とも呼ばれたニコラス・ウィントン。第二次世界大戦前夜、チェコスロヴァキアのユダヤ人の子どもたちを、ナチスの迫害から救うため、母国イギリスに里親を探し出国させた。子の将来を思い手放す親、受け入れる里親、もちろん当の子どもたち、さまざまなドラマがある。考えさせる実話だし、ウィントンという人は凄いと思うのだが、中途半端な再現映像と最後の善意の伝播エピソードはなくてもよかったような。当人たちの証言や考察で十分に感動的だった気も。

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