風に濡れた女の映画専門家レビュー一覧

風に濡れた女

ロマンポルノ生誕45周年を記念したロマンポルノ・リブート・プロジェクトの一作。都会の喧噪を避け、過去から逃げるように山小屋で暮す高介。だが、生命力と性欲を持て余し、野性味溢れる魅力を放つ汐里との出会いを契機に、高介は欲望の渦へと巻き込まれてゆく。出演は「甘い鞭」の間宮夕貴、「誘惑は嵐の夜に」の永岡佑。監督・脚本は「黄泉がえり」「どろろ」の塩田明彦。撮影を「貞子vs伽椰子」の四宮秀俊、音楽を「セーラー服と機関銃 卒業」のきだしゅんすけが担当。
  • 映画評論家

    北川れい子

    神代辰巳監督の傑作「恋人たちは濡れた」(73年)の一部引用はご愛嬌として、人物、台詞と会話、そして濡れ場も、70年台前後のヒッピー族やアングラ芝居連中の生き残り的なのには苦笑い。ケイタイも使われているから現代なのに。思うにリアルなセックスなどにさして関心がない塩田監督が、アタマの中でデッチ上げたセックス・ゲームのような作品で、だからか、脱ぎっぷりのいい女優たちが次々と男に絡んでも、裸の機械体操並で画面も“風”も濡れもしない。草食系向きのポルノ。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    ロマポルリブート五作を見渡してほとんど一番好き(「ホワイトリリー」と同着)。九十年代Vシネ風土的なものと塩田明彦監督の本来的資質の、ポップさ&何でもありの楽しさが横溢し、キャメラと人の動きと空間が観ていて快感。それを満たす間宮夕貴の野性味にも惚れる。だがロマンポルノという語の呪縛よ、本作が参照する「恋人たちは濡れた」やその他の傑作を思えばこの喜びも萎縮する。しかしロマンポルノ規定から本作も生まれた。その不自由との巧みな戯れをやはり称えたい。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    このプロジェクトは即ち、各々の監督による〈ロマンポルノ大喜利〉なので、「作品個々の評価よりもプロジェクト5作品内で相対的に評価すべき」というのが個人的見解。官能的というよりも野性味を感じさせる間宮夕貴の役作り。濡れ場は格闘技のようで、その肉欲がヒロインをより輝かせている。塩田明彦監督は、〈大喜利〉でロマンポルノの名作にオマージュを捧げながらも、終盤で「ゴッドファーザー」(72)のごときカットバックにより3つの濡れ場を同時に演出しているのも一興。

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