光をくれた人の映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
マイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルの「顔」だけでも見る価値がある。物語としては観客を泣かせることに特化したメロドラマだし、映像の美しさは時としてトゥーマッチな気もするが、二人の抑制の効いた、だが複雑なニュアンスに富んだ演技=表情によって、通俗の極みに達する一歩手前に踏み止まっている。特にヴィキャンデルはショットによっては彼女に見えないほどの魅力的な“歪み”を表現してみせる。ずーっと背後に聞こえている波の音と海鳥の鳴き声が印象的。
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映画系文筆業
奈々村久生
アリシア・ヴィキャンデルの演じたイザベルは、女優だったら絶対に惹かれる役柄だろうし、やり甲斐を感じることができ、演技力も効果的に見せられる美味しい役どころだ。だからこそ演者の自己アピールが過ぎると台無しになってしまう可能性もあるが、ヴィキャンデルは上手くやった。ファスベンダーの功績も大きい。デレク・シアンフランス監督は男女のペアを作るのに長けている。灯台守という馴染みの薄い職業から、人里離れた生活の異様な状況がじわじわと姿を現してきて怖い。
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TVプロデューサー
山口剛
流産したばかりで子どもが欲しい若い妻の一寸した愚かな過ちが夫婦の人生を多く変えていく。オーストラリアの孤島の灯台を舞台にした夫婦の日常は美しく仔細に描かれているが、子どもをネタに泣かせようという原作の作為的な意図が最初から透けて見える。生みの親と育ての親の昔ながらのメロドラマの感は否めない。監督の第二作「ブルーバレンタイン」の夫婦のリアリティがここには全くない。人間関係の悲劇ではないのでM・ファスベンダーも芝居のやり場がないようだ。
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