ふたりの旅路の映画専門家レビュー一覧
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映像演出、映画評論
荻野洋一
ソクーロフ「太陽」で昭和天皇と香淳皇后を演じた二人が再び共演し、ラトビアの首都リガの街頭を着物姿で彷徨したりする。それだけ聞くとひどく面白そうなのだが、言語の問題があったためか、名優たちにとりあえず演ってもらっただけのような演出の緩さ、集中の欠如が目につく。震災犠牲者への鎮魂と国際交流への熱意は一応伝わってきたものの、どうも映画としての体をなしていない。一つ星評価としたが、妙な味わいがあるのも確か。珍作好きの通人は拾っておいて損はない一篇である。
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脚本家
北里宇一郎
ラトビアの監督が日本食や着物に目を細めている。それ以上に、桃井かおり、イッセー尾形、この二人の演技、奔放なやりとりに感心し、うっとり見つめているのが分かって。古都リガ、その石畳の黒光り、石造りの建物の佇まい、それを背景にして孤独な女と幽霊の男が、まるで家庭にいるように日常の言葉で語り合う。するとこれがイッセーのコントにかおりが呼ばれての二人芝居に見える。面白い。けど、日本と役者たちに見とれ見惚れて、ギュッと手綱を引き忘れた演出のユルミも感じて。
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映画ライター
中西愛子
3度目のタッグになる、桃井かおりとラトビア出身監督による合作映画。20年前に娘を亡くし、夫が消え、孤独に暮らしてきた女性が、着物ショーに参加するためラトビアへ。夫の幻影を道連れに、異国で自分の人生を振り返る。主人公の名はケイコ。そんなタイトルの映画がかつてあったが、外国人からすると、日本女性は自分がなく、ふわふわして見えるのか。その迷宮的な内面が夢うつつに探られる。桃井がそこに揺らぎない芯を存在させ好演。終盤の、彼女の独白シーンがすごくよくて泣けた。
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