サマーフィーリングの映画専門家レビュー一覧

サマーフィーリング

「アマンダと僕」で東京国際映画祭東京グランプリと最優秀脚本賞をW受賞したミカエル・アース監督の長編2作目。30歳のサシャが突然この世を去る。サシャの恋人ローレンスとサシャの妹ゾエは、三度の夏、三つの都市で、少しずつ人生の光を取り戻していく。出演は、「パーソナル・ショッパー」のアンデルシュ・ダニエルセン・リー、「女の一生」のジュディット・シュムラ、「恋の秋」のマリー・リヴィエール、「海辺のポーリーヌ」のフェオドール・アトキン。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    現代文学の短篇を読んだあとのようなふしぎな余韻が残る作品。ベルリン、パリ、NYを舞台に、恋人を失った青年と恋人の面影をもつ妹とのあいだの、互いに惹かれながらも恋愛未満にとどまる関係をナイーブに描く。ふたりが一線を越えられないのは、亡くなった人についての記憶が、彼らの感情や行動を規定しているから。夏の光に満たされた都会の開放感のなかで、死者の存在が目には見えない潜勢力として登場人物を駆動する、そんな映像演出に今までにないフィーリングをおぼえた。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    「アマンダと僕」の監督の前作だが、両作品にはいくつかの共通点がある。最大のそれは、愛する人を突然亡くした人が主人公であり、起きてしまったことを受容せざるを得ない状況。この映画の構成はベルリン、パリ、ニューヨークの三都物語で、生命力が最も輝く季節の夏に、三つのドラマをつづるセンスが好ましい。同じ夏でも三都市の微妙に違う光景や空気感と、察するに余りある主人公の喪失感を絶妙に絡める作風は、優れてユニーク。悲しみを重すぎずに描いて人を再生させる。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    同じ痛みを共有する者たちの関係は実に切ない。お互いが次のページへ進むために、ある時期には絶対に必要なものではあるが、結局はそれぞれ一人で乗り越えなければならない。一度踏み出したらむしろ二度と戻るべきではない間柄であるがゆえに、そこに恋愛めいたものが絡んでくると、事態はさらに厄介だ。パートナーを失った青年を演じるアンデルシュ・ダニエルセン・リーが、ロメール的な男のナイーブさやズルさを絶妙ににじませていて、ハッピーエンドなのにほろ苦い後味が効く。

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