コンパートメントNo.6の映画専門家レビュー一覧
コンパートメントNo.6
カンヌ国際映画祭グランプリを受賞したロードムービー。1990年代のモスクワ。フィンランド人留学生ラウラは恋人と行く予定だった旅行をドタキャンされ、一人で寝台列車の6号コンパートメントに乗り込む。そこでロシア人労働者リョーハと乗り合わせ……。ロサ・リクソムの同名小説を原案に映画化したのは、「オリ・マキの人生で最も幸せな日」のユホ・クオスマネン。出演は、本作でフィンランド・アカデミー賞主演女優賞を受賞したセイディ・ハーラ、「AK 47 最強の銃 誕生の秘密」のユーリー・ボリソフ、「動くな、死ね、甦れ!」のディナーラ・ドルカーロワ。
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映画監督/脚本家
いまおかしんじ
主人公の女の人が全然楽しそうじゃないのがいい。寝台列車の同室になったスキンヘッドの若い男。挙動不審で酔っ払って卑猥な言葉を投げかける。最悪だ。男は物陰から飛び出して女の人をびっくりさせたりと、全然空気が読めないやつ。女の人が少しずつ男に心を開いていくのが可愛い。騙されたりうまくいかなかったりで最低の旅が、男の不器用な努力によって徐々に変わっていく。女の人がこっそり男の寝顔をノートに描いていて、それを渡すくだりが本当に可愛くて好き。
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文筆家/俳優
睡蓮みどり
完全に心を?まれた。気が付いたら目が熱くなり涙がボロボロ溢れ出ていた。ラウラが続ける、不快で不穏で孤独な旅が、まさかこんな結末を迎えるとは。この旅にはまるで終わりがないかのようで、始終死の匂いが漂っているように感じられた。ふたりが死に場所を探して彷徨っているようにさえ感じられた。感情のちょっとした動きが表情や会話の中から色濃く鮮やかに伝わってくる。二人の間に芽生えたかすかな感情はとても温かく、冷たい氷を溶かしてゆく。いい意味で裏切られた。
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映画批評家、都立大助教
須藤健太郎
受け入れられることが前提になっているから、知識人層のひとりよがりなファンタジーの域を出ないように思う。フィンランドからモスクワに留学しているラウラは大学教授のイリーナと付き合っている。だが、インテリに対して憧れる彼女が長距離列車のコンパートメントで同室になったのは炭鉱夫リョーハ。ウォッカに煙草、そしてセクハラ。はじめは粗野な彼に嫌悪感を覚えるも……、という物語。あとは予想通りの展開である。映画はストーリーではないというけれど、それはまた別の話。
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