言えない秘密(2024)の映画専門家レビュー一覧
言えない秘密(2024)
SixTONESの京本大我が初の映画単独主演を務めたラブストーリー。ピアノ留学から帰国し、音大に編入した湊人は、神秘的なピアノを奏でる雪乃と出会う。彼女に会うたびに心惹かれていく湊人は、トラウマだった音楽に向き合えるようになっていくが……。出演は、「みなに幸あれ」の古川琴音、「鯨の骨」の横田真悠。監督は、「かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦」の河合勇人。
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文筆家
和泉萌香 |言えない秘密
映画は時を超えるボーイ・ミーツ・ガール。「歩く二宮金次郎像」をはじめ昔から学校には不思議話が多々あるが、この現代にあって学校はそんな不思議や秘密ごとを忍ばすことができる最後の砦であり、ただ恋の舞台となりえる最後の場所のようにも思えてくる。彼らの<旅>が直線の時間軸からきっちりと足を踏み外しはしないのと、涙、涙のクライマックスは残念だが、ラストカットはロマンティックで、潔い。ピアノの猛練習を重ねたという主演の京本と古川もきらめくように魅力満点だ。
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フランス文学者
谷昌親 |言えない秘密
ファンタジー色の強い台湾の恋愛映画のリメイクだが、いくらファンタジーと言っても、この物語の設定を受け入れさせるにはそれ相応の表現力が必要なはずで、たしかに、謎の少女が初めて画面に登場する際に鏡に映った身体の一部のイメージを示すなど、それなりの工夫は見られるものの、作品全体としては残念ながら説得力を持つまでに至っていない。劇中で重要な役割を演じるピアノ曲も、映画音楽風のものでなく、オリジナル版のようなクラシカルな曲のほうがよかったのではないか。
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映画評論家
吉田広明 |言えない秘密
ピアノが嫌いになっていた音大生が、妖精的な存在により音楽への愛を取り戻す。定型的な物語であるが、定型は内容の理解が早い利点もある一方、個々の作品を呑み込んでしまう怖いものでもある。個性は伝統のもとに発揮され、伝統は個性によって賦活する。何も新しい作品が新奇でなければならないこともないが、定型への意識(それが批評意識であり、個性)は必要に違いない。それが無ければ単なる「使用価値」(この場合「泣ける」等)しか残らないが、そんなものは早晩摩耗するだろう。
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